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建設・自動車業界に漂う先行き不透明感 地方経済を再チェック、 北陸の「宿泊・飲食」が急上昇
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投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 21 日 21:17:24: tW6yLih8JvEfw
 

建設・自動車業界に漂う先行き不透明感

地方経済を再チェック、 北陸の「宿泊・飲食」が急上昇

2015年4月21日(火)  上野 泰也

 日銀が4月13日に公表した地域経済報告(さくらレポート)では、北陸、東海、近畿の3地域で景気情勢の判断が引き上げられた。筆者はこれとは別に、各地域を代表すると言えそうな業種を選んだ上で、日銀の主要支店から公表されている地域別短観の業況判断DI(回答比率「良い」−「悪い」)の動きをチェックしている。

 2014年7月15日に「自動車、建設など各地区の『看板業種』、景況感はどちら向き?」を当コラムに掲載してから時間がかなり経ったので、ここで足元の状況を見ておきたい。

 国・地方の公共事業と関係が深い「建設」の業況判断DIは、北海道、東北、四国のいずれにおいても、明確に下向きとなっている<図1>。

■図1:日銀短観 各地区で特徴的な業種の業況判断DI(1)

注:15年6月は同年3月調査における先行き(6月予測)
(出所)日銀札幌支店、仙台支店、高松支店
 財政健全化目標との兼ね合いもあり、公共事業の積み増しが、国の2014年度補正予算や2015年度当初予算では消極的にしか行われなかった。このため建設業者の側では「事業量が先細りになる」という危機意識が前面に出やすい。しかも、建設関連業者の数が多く同業者との競争も激しい中で、人手不足からコストが高くなると、受注に成功した場合でも公共工事の採算はどうしても悪くなる。

 東日本大震災からの復興事業があるがゆえに、事業量が今後も相対的に多いとみられる東北でも、2015年3月調査における先行き(6月予測)は足元から大幅に低下した。公共投資の減少は今後、景気回復の足を引っ張ることになりそうである。

熱気が冷めつつある北海道

 日銀支店長会議終了後の記者会見で、札幌支店の曽我野秀彦支店長は北海道経済について、これまで改善を続けてきた企業マインドが公共投資の減少とともに、建設関連業種を中心として「熱気が冷めてきている」としたが、それでも高水準にあると説明した。

 製造業の関連では、近畿の「電気機械」が先行き(6月予測)を含め、しっかり推移している<図2>。スマートフォン向けを中心とする電子部品の受注が高水準を維持しているためと考えられる。部分的には円安を背景とする一部家電の「国内回帰」も影響しているだろう。

■図2:日銀短観 各地域で特徴的な業種の業況判断DI(1)

注:15年6月は同年3月調査における先行き(6月予測)
(出所)日銀名古屋支店、大阪支店、広島支店
 だが、同じ図を見ると分かる通り、「自動車」の方は、トヨタ自動車の本拠地がある東海、マツダの本拠地がある中国のいずれにおいても、先行き(6月予測)が大幅に低下する姿になっている。

 この業種では円安ドル高による為替差益が業績の改善要因とみられるが、輸出と国内販売の行方について、企業の側は先行きを慎重にみているようである。また、軽自動車メーカーとその関連企業には、4月からの軽自動車税の増税が悪影響を及ぼしていると考えられる。

 九州・沖縄は、中国などアジア諸国からの地理的な近さもあって、訪日外国人客(いわゆるインバウンド観光)の増加によって大きな恩恵を受ける地域である。

 この地域の「宿泊・飲食サービス」の業況判断DIは、前回に取り上げた際には下向きになっていた。しかしその後、さらなる円安の進行や、ビザ発給条件緩和など、政府による観光客誘致策の強化を追い風にして外国人観光客が急増する中で、状況はかなり改善した。

 このDIは14年12月調査で+22に急上昇(調査対象企業見直し後の新ベースでは+18)。15年3月調査では+18(新ベースの比較で前期比横ばい)となり、先行き(6月予測)は+17である<図3>。

■図3:日銀短観 各地域で特徴的な業種の業況判断DI(3)

注1:15年6月は同年3月調査における先行き(6月予測)
2:北陸の「宿泊・飲食サービス」のデータは、業種分類が細分化された14年3月調査以降のみ
(出所)日銀福岡支店、金沢支店
北陸圏は観光客が激増、東海は不透明感漂う

 また、3月の北陸新幹線開業によって東京圏に一気に近くなった北陸地域では、観光客が目立って増加しているようである。日銀金沢支店は北陸地域の短観(「北陸短観」と呼称)について、2014年3月調査から業種分類を細分化し、それまでの「サービス」を「対事業所サービス」「対個人サービス」「宿泊・飲食サービス」の3つに分けた。

 これらのうち「宿泊・飲食サービス」を2015年3月調査で見ると、北陸新幹線効果が非常に大きいことに実に驚かされる。足元の業況判断DIは+46に急上昇し、先行き(6月予測)はさらに高い+69である。

 以上で見てきた地域ごとの特徴的な業種の業況判断DIの動きは、今回のさくらレポートで北陸と近畿の景気判断が引き上げられたことと整合している。

 東海についてはどうやら、主力業種である「自動車」の景況感が足元では改善しているものの、先行きには不透明感が漂うと言えそうである。

 もっとも、日銀名古屋支店の梅森徹支店長は支店長会議終了後の記者会見で、「回復の足取りは確かさを増している」「(先行きも)収益から支出への好循環が続く。海外経済に大きな変調がない限り、着実な回復が続く、あるいは拡大に向かう」という、かなり強気の見通しを示していたのが印象的であった。

このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー

景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150417/280068   

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