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いまや家事は、生産性の低い「衰退産業」!? 家庭内労働の相対的生産性の低下とサービス産業の発展
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/555.html
投稿者 rei 日時 2015 年 4 月 21 日 20:53:53: tW6yLih8JvEfw
 

いまや家事は、生産性の低い「衰退産業」!?

家庭内労働の相対的生産性の低下とサービス産業の発展

2015年4月21日(火)  田中 聡史
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20150409/279778
 小さな女の子に「将来どんな仕事に就きたいの?」と尋ねた時に、「お嫁さん」という答えが返ってくるのは、決して珍しくないだろう。ここでは、「お嫁さんは仕事じゃないよ」と指摘するのがパターンだろうが、「お嫁さん」を、家事などの「家庭内労働」を主に行う「職業人」として捉えると、多少見方が変わるかもしれない。米国のデータを見る限り、家庭内労働(以降、単純化のために家事と呼ぶ)は対GDP(国内総生産)36%(2010年)という付加価値を生む、巨大産業だ。

衰退している「家事」という産業

 そして、この家事という巨大産業が、衰退の傾向を示している。図1は、米国のデータを使って、家事と、サービス業の「拡大」総消費における付加価値の割合をプロットしたものだ。ここでいう「拡大」総消費とは、国民所得勘定のデータに表れる総消費に、データに表れない家事の付加価値分を足したものである。赤い実線が家事、青い実線がサービスを示している。

図1:米国で家事とサービス産業が生み出す付加価値が消費に占める割合(1947年〜2010年)

 図1から明らかなように、家事の生み出す付加価値の消費における割合は、減少の一途をたどっている。そしてそれと相反するように、サービス産業の生み出す付加価値の割合は上昇している。

 これらの変化には、どういったメカニズムが働いているのだろうか? 家事の衰退とサービス産業の発展には何か関係性があるのだろうか? 時代背景に詳しい読者であれば、1980年代以降米国では女性の社会進出が進んだから、それが原因だと答えるかもしれない。では、そもそもなぜ女性の社会進出が進んだのだろうか?

 著者が、イタリアのカリアリ大学のアレッシオ・モロ助教授、オーストラリアのモナシュ大学のソルマズ・モスレヒ助教授と行った最近の研究では、既存の経済学のツールと、「労働生産性」という概念を使って、家事とサービス産業の関係とその消費における割合の変化について説明を試みた。

 そもそも、家事の付加価値とは、どうやって測られるのだろうか。お店でモノを買ったり、レストランでサービスを受けたりすれば、それに対して対価を支払う。そしてその対価が、ものやサービスの付加価値を決めている。お店やレストランは、対価による収入を所得として申告し、それがGDPの一部として記録される。

 しかし、自分もしくはパートナーが、夕食を準備してくれたことに対して、通常は対価は支払われない(支払う家庭もあるかもしれないが!?)。対価が支払われない以上、所得として申告されないので、記録にも残らない。つまり、家事というものの付加価値は決してGDPには反映されないのである。

 この問題に対処するために、この分野の既存研究では、「家事の付加価値をそのコストから測る」という方法を採用してきた。簡単に言ってしまうと、夕食を準備する付加価値は、その労働コスト(夕食を準備する時間を他の仕事に充てることによって得られる収入)とその資本コスト(夕食を準備することで摩耗してしまうお皿やお鍋の価値)に等しいという考え方である。

例えば「1時間でパスタを何人前作れるか」?

 いくつかの仮定が必要であるが、このアプローチを使えば、人々がどれだけの時間を家事に費やしているかというデータと、どれだけの資本(簡単に言うとお皿やお鍋)が家事に使われているかというデータを使って家事の付加価値を測ることができる。それによって、「家事」という産業の全体像が多少なりとも理解することが可能なのである。

 さて、家事が社会に生み出す付加価値が計算できたことによって、何が分かるのだろうか? その一つの例が、「家事の労働生産性」だ。

 労働生産性とは、1単位あたりの労働に対して、どれだけの付加価値が生み出されるかを測る指標で、つまるところ、1時間でパスタを何人前作れるかというような概念である。

 労働生産性という概念は、特に、社会がどれだけの人数をどの産業に割り当てるべきかということを考える上でとても重要だ。もし、社会全体が生み出す付加価値の全体を最大化しようとすれば、自然と、労働生産性が高い産業に人数を割くということになる。そして、労働市場が機能しているのであれば、労働生産性の減少傾向にある産業から労働生産性の高い産業へ、市場のメカニズムを通じて、時間とともに人が流れていくことになる。

 これらを踏まえ、図2における米国における家事とサービス産業の労働生産性の推移を見てほしい(赤い実線が家事の労働生産性。青い点線がサービス。いずれのデータも1948年の値を1としている)。

図2:米国における家事とサービス産業の労働生産性(1947年〜2010年)

 図2が示すように、家事の労働生産性は、50年代、60年代、70年代の前半を通じて飛躍的に向上している。これらの時期は、米国においてはちょうど洗濯機や衣類乾燥機といった家電製品の価格が安くなり、それらの普及率が上昇した時期とも重なる。

 そして逆に1979年以降は、その労働生産性の伸びはぴたりと止まっている。これらの家事の労働生産性の動きは、期間を通じて常に一定の上昇を見せているサービス産業の労働生産性の動きとは、非常に対称的だ。

「家事産業」の衰退で発展した「サービス産業」

 まとめると、家事を一つの産業として捉えた時、50年代、60年代、70年代においては、技術革新があり、それに伴い資本の集積(つまり洗濯機を購入するなど)が活発に行われた。しかし80年代、90年代においては、技術革新もそれに伴う資本の集積も下火になってしまい、結果として労働生産性が停滞したことが見てとれる。そしてそれとは反対に、サービス産業では、80年代、90年代以降も、一定の技術革新と資本の集積が起こり、その結果として労働生産性が伸びていると、このデータから解釈することができる。

 さて、家事の労働生産性の伸びが79年以降は停滞していたという事実は、社会経済に対してどういうインパクトがあったのだろうか。それを簡単に知るには、「もし家事の労働生産性が79年以降も、それ以前と同じペースで伸びていたなら」というシナリオをシミュレートしてみることである。

図3:シミュレーション結果 (1947年〜2010年)

 図3はそのシミュレーションの結果を示している。結果を見ると、既存の研究ではなかなかはっきりと明らかにされてこなかった、家事の労働生産性のサービス産業への影響が見てとれる。もし家事の労働生産性が1979年以降もそれ以前と同じように伸びていたならば(多少の間違いと誤解を覚悟で言うと、「洗濯機」のようなドラマチックな技術革新が家庭内労働の現場に起こり続けていたならば)、1980年代以降、「家事産業」が衰退していなかっただろうし、サービス産業は発展していなかったということを、赤と青の実線は示している。

 さて図3の結果でカギとなっているのは、家事とサービスとのあいだにある「代替性」という概念である。これは、直感的に言ってしまうと、自分で作って家で食べる夕食と、飲食店で食べる夕食とがどれだけ本質的に似通っているかということを測る尺度である。

 筆者の論文では、この代替性を、家事の労働生産性(もしくはサービス財の価格)が変化したとき、どれだけ家事とサービスのあいだで消費の代替が行われるかというマクロデータの変化を使って推定している。そしてその推定結果は、マイクロデータを使った既存研究と同程度、もしくはそれよりも少し高い程度で、家事とサービスは代替財であるというものであった。

何がサービス産業の発展度合いを決めるのか?

 家事とサービスの間に代替性があるということが分かると、図3の結果の解釈は容易である。シミュレーションでの中で起こっているのは、家事の労働生産性が実際のデータよりも高いならば、人々はサービスの消費のいくらかをあきらめて、その代わりに家で家事を行うということである。卑近な例を使って言うと、家で簡単にカリアリ風のイタリア料理が作れるのであれば、外食をやめて家で作って食べるということだ。

 1950年以降、米国社会は多くの変化を経験してきた、そしてそのうちのいくつか(学歴間での賃金格差の拡大や、女性の社会進出、製造業の雇用の縮小)には、産業構造が製造業からサービス産業へシフトしてきたことが原因であることが近年の研究で分かっている。では、一体何がサービス産業の発展の度合いを決める要因なのだろうか?という問いが、筆者とそのチームが行った研究の根底にある。

 この問いの答については、いくつかの仮説がある。例えばその一つは、技術革新が農業や製造業で速い速度で進み、それらの財の価格が安くなったため、人々はより価格の高いサービス財に多くの出費を割けるようになったというようなものである。

 そしてそのようないくつかの仮説の中の一つ「家事とサービス業の発展の関連性の仮説」について、実際のデータと産業構造変化の経済モデルを使って実証的に分析し、関連性があるという結果を示したのが、筆者のチームによる研究である。

生産性が高ければ、仕事より家事をする?

 近年いくつかの論文でも指摘されてきたが、サービス業の発展は、単純に製造業からのシフトとしてだけでは捉え切れない部分がある。サービス業の発展とともに、家庭からオフィスへという働き場所の移動が、女性を中心として活発に起こってきた。そして、そのメカニズムの背景には、「サービス業の方が家庭よりもより効率的に社会において付加価値を提供できるようになってきた」ということを、筆者の研究は示唆している。

 この研究はあくまでも、米国のデータを使ったものであり、それを受けて、そのまま日本の産業構造の変化についても解釈を与えるものではない。しかし、日本の家事労働の生産性はどのようにシフトしてきたか、そしてそれにともないサービス産業の規模がどのように変わってきたかについては、研究者として非常に関心のあるところである。

 以上、筆者が、カリアリ大学のアレッシオ・モロ助教授、モナシュ大学のソルマズ・モスレヒ助教授を行った以下の研究を紹介した。さらなる詳細については、論文を直接参照して欲しい。

Moro, Alessio, Solmaz Moslehi, and Satoshi Tanaka. "Does Home Production Drive Structural Transformation?" Working Paper, Monash University (2015).

本文中の家事(home production)のデータは下の論文から引用している。
Bridgman, Benjamin. "Home Productivity." Working Paper, Buerau of Economic Analysis (2013).

米国のサービス業の消費における割合については下の論文から引用している。
Herrendorf, Berthold, Richard Rogerson, and Ákos Valentinyi. "Two Perspectives on Preferences and Structural Transformation." American Economic Review 103.7 (2013): 2752-2789.

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このコラムについて
「気鋭の論点」

経済学の最新知識を分かりやすく解説するコラムです。執筆者は、研究の一線で活躍する気鋭の若手経済学者たち。それぞれのテーマの中には一見難しい理論に見えるものもありますが、私たちの仕事や暮らしを考える上で役立つ身近なテーマもたくさんあります。意外なところに経済学が生かされていることも分かるはずです。  

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コメント
 
01. 2015年4月21日 21:12:07 : xPxTPEij1M
そのうち子作りの付加価値と生産性についてなんて研究が出てくるんすかね。
なんていうバカな考えが頭に浮かんだんだが。

02. 2015年4月21日 21:23:40 : nJF6kGWndY

>「家事産業」の衰退で発展した「サービス産業」
>家事の労働生産性が実際のデータよりも高いならば、人々はサービスの消費のいくらかをあきらめて、その代わりに家で家事を行う

誤解を招きそうな表現だな

別に、家事労働の生産性が高いからといって

必ずしも、専業主婦が増えるわけではない


単に、家事と代替するようなサービス産業が発展せず

その分が、家電などの装置産業の発展で代替されるし

家事をやるとしても、生産性が上昇して暇になった分、

共働きもできるし、夫婦ともに労働時間を減らすことで

生活レベルを上昇させることも可能ということだ



03. 2015年4月22日 19:14:49 : KJYtzEkwxw
家事を産業としてとらえるその頭の構造。何でもかんでも金、カネ、かね。

何という貧しい下劣な価値観だろう。


04. 2015年4月22日 22:01:45 : fDG1cWsHyw
>>03

それは女が金に執着している割合が増えたことにあると思います。

その対価となるのが女性ならではのモノであるのにソレを自らの意思で捨て

価値を下げて後悔したために巻き返しとなって社会へ無理に入ってきた弊害が

投稿のひとつの状況となっているわけです。

ま平たく言えば

今の女は頭も下半身も緩くなった動物ってことで、これを法規制してでも止めない限り

悪化する一方ですよ?



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