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消費増税の一方で所定内給与は前年よりも減っていた(写真:kou/PIXTA)
2014年度の賃金は前年割れだった!「官製」春闘の効果は薄く、2015年度にも不安
http://toyokeizai.net/articles/-/67144
2015年04月21日 大崎 明子 :ニュース編集部長
4月3日、厚生労働省が公表した「毎月勤労統計調査」の結果がエコノミストたちに、少なからぬ衝撃をもたらした。
同調査では事業所の新設・廃止や産業構造の変化に対応するため3年に一度、規模30人以上の事業所について調査対象の入れ替えを行う。これに伴い、過去3年間の数値が修正されるのだが、今回、賃金にかかわる数値が大きく下方修正されたのだ。
過去2回の調査対象の入れ替えの際にも賃金については下方修正が行われており、これは「期間が経過するうちに賃金の支払いに余裕のない企業が廃業や倒産などで退出していくため、調査対象入れ替え前の数値が高めになっているからではないか」(厚生労働省の雇用・賃金福祉統計課)と見られている。
今回は、そもそも3月31日の発表予定が延期されたこともあって、「政府にとって都合の悪い結果が出てしまい混乱したのではないか」という憶測まで飛んだ(後にプログラム処理に一部ミスがあったと公表)。
■「官製」春闘でベア復活なのに
2014年度については、安倍政権が大手企業に賃上げを要請する「官製」春闘によって、ほぼ6年ぶりにベースアップが行われ、賃金が前年比で上昇したとされていた。
ところが、修正後、賃金の基本であり、消費を大きく左右する所定内給与(事業所規模5人以上、全産業)は2014年も毎月、前年割れの続いていたことが明らかになった。修正前の数値よりも毎月0.3〜0.4ポイント下方に修正され、暦年では修正前の前年比横ばいから修正後は0.4%の減少となった。
2015年3月の速報が公表され年度ベースの数字が分かるのは4月末。だが、みずほ証券が作成した所定内給与の季節調整値による2014年4月〜2015年2月(確報値、2月分は4月17日発表)の平均値は、修正後の数値では前年同期比0.2%の下落となっている。「賃上げの波及は限定的だった」とみずほ証券の末廣徹マーケットエコノミストはいう。
安倍晋三首相は今国会での施政方針演説で、「昨年、過去15年間で最高の賃上げが実現しました」と成果を喧伝したが、これは大手企業に限った現象だったことが明らかとなった。政府の要請が利くのは、主に円安が収益にプラスであって、政権との関係や企業イメージに配慮が働く輸出大企業。「官製」の限界が露呈した形だ。ちなみに過去15年で所定内給与が前年を上回ったのは2000年と2005年のみだ。
■2015年度の所定内給与も期待薄
ここからの焦点は2015年度の賃上げとその波及効果がどうなるかだ。
連合がまとめた2014年の春闘の賃上げ率は2.07%。2015年度については、最終的に結果が確定するのが7月。内閣府は、連合の第2回集計の2014年度と比べた上振れ分と同程度が、最終着地でも上乗せされると想定し、2015年度の賃上げ率を2.2%と推計している。
みずほ証券が、連合の春闘の賃上げ率の上昇と毎月勤労統計の所定内給与の伸び率との関係を1990年以降のデータで試算したところ、春闘の賃上げ率の上昇1%に対して、所定内給与は1.26%上昇する関係にあるという。
そこで、仮に内閣府推計の2.2%を前提に、所定内給与の伸びを試算すると、賃上げ率の上昇分は2.20%と2.07%の差0.13ポイント。所定内給与の伸び率はこれに1.26を乗じた0.16ポイントでほぼ横ばいということになる。
ただしみずほ証券の末廣氏は、「消費税率引き上げ後の内需低迷や円安によるコストの上昇から、中小企業は2014年度の前半より厳しい環境に置かれている」と指摘、「賃上げの波及は昨年より弱く、所定内給与も前年割れが続く可能性がある」と見る。
(「週刊東洋経済」2015年4月25日号<20日発売>「マクロウォッチ」に加筆)
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