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富士フイルムの「“チェキ”instax mini 10」
チェキ、なぜ土壇場から劇的復活?韓国・中国での人気、競合企業の破産を追い風に活性化
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150421-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 4月21日(火)6時1分配信
新入社員の配属や人事異動による歓送迎会など写真撮影のシーンも増えて、一段とカメラが活躍する時期となった。近年は、スマートフォンで撮影する人が増え、それに比例して、かつては写真撮影の主役だったデジタルカメラ市場が縮小している。
そんな中で人気が拡大しているのが、富士フイルムのインスタントカメラ「チェキ」(「instax mini」シリーズ)だ。2013年度の年間販売台数は230万台、14年度は350万台を見込む。人気を支えるのは、意外にも若い世代だ。
一度はデジカメに追いつめられたアナログ商品が息を吹き返し、年々売り上げを拡大させるという逆転現象が起きている。
●デジタル普及直前の発売
チェキが発売されたのは1998年11月。「撮ったその場でプリントが楽しめる」インスタントカメラとして市場に送り出された。
98年は、マイクロソフトから「Windows 98」が発売され、インターネット時代が急速に進んだが、世の中全般で見るとネットが情報インフラとなりきってはいない頃であった。
カメラ市場も、まだフィルムカメラ全盛期で撮影内容がその場でわかるインスタント写真の需要は根強かった。「ポラロイド写真」との呼称が一般に定着していたことからもわかるように、チェキが発売されるまで、この市場には米ポラロイド社が君臨していた。
チェキ開発の背景には、富士フイルムの従来商品「フォトラマ」(81年発売)の売れ行き不振もあった。発売時に話題を呼んだフォトラマではあるが、90年代には苦戦が続いていたのだ。そこで開発に当たり同社が目を付けたのは若い世代、特に女子高校生だった。彼女たちは同社製レンズ付きフィルム「写ルンです」をカバンに入れて持ち歩き、日常的に写真を撮る習慣があったのだ。
当時の女子高生はトレンドリーダーであり、撮ったその場で写真シールがプリントアウトされる「プリクラ」(アトラス)も彼女たちが人気を牽引した。その世代を当て込み、市場調査を重ねた末に発売されたチェキは思惑どおり若者の支持を集め、02年度には全世界での年間販売台数が100万台に達した。
だが同時期、世の中は急速にデジタル化へシフトしていく。富士フイルムにおけるカラー写真フィルム需要のピークは00年で、「そこから2〜3年で年率7〜10%減、その後は同20〜30%減となった」(同社)。社名が示すとおり、同社は戦前の34年に写真フィルム製造の国産化を目的に創業された会社で、戦後はフィルムなど写真感光材料のメーカーとして発展してきた。それが「主力事業の市場が一気に縮小」という土壇場に立たされ、03年から大々的に事業構造の転換を図っていったのだ。
デジタル化という大波に見舞われたチェキも、02年度をピークに販売台数が激減していった。
●競合が破産し、残存者利益
富士フイルムは05年度にチェキの年間販売台数が10万台に落ち込むと、新機種の開発を休止し、カラーバリエーションを増やして販売を継続した。同社がリストラクチャリング(事業の再構築)に取り組み、次世代の成長事業を医薬品や化粧品などヘルスケア分野にシフトすると、商品存続の正念場を迎えた。
だが、そんな時期に同社は「韓国のテレビドラマでチェキが偶然使われ、話題になった」ことを聞きつけた。これを受けて韓流スターを活用したプロダクトプレイスメント(映画や番組中で、特定の商品を使用させる広告手法)を仕掛けたところ、韓国内での販売が伸長。さらに中国の人気モデルがブログで「チェキを使っている」と紹介したことで、中国にも人気が波及した。
ちょっとレトロでおしゃれなカメラが生み出すカードサイズのプリントや、デジタルプリントとは違うインスタント特有の柔らかな画質が、デジタル化が進む中にあって若い女性を中心に評判となっていたのだ。
一方で、ライバルだったポラロイド社は08年に経営破たんした。競合が市場から退場した結果、同社は世界で唯一のインスタントカメラとフィルムを手がけるメーカーとなった。
海外市場の押し上げにより10年度の年間販売台数が87万台と復活し始めたチェキは、「世界で一番“カワイイ”カメラ」をコンセプトに商品リニューアルに取り組んだ。
そして12年、新製品として「“チェキ”instax mini 8」を発売した。使いやすい操作性はそのままに、撮影機能を充実させて女性ユーザーが好む、明るくソフトな雰囲気の写真が簡単に撮影できるのが特徴で、ホワイト、ブラックのほかにパステルカラーのピンク、ブルー、イエローの全5色を揃えた。さらに13年9月には最上位機種「“チェキ”instax mini 90 ネオクラシック」も投入。その後も新製品や人気キャラクターとのコラボ製品を相次いで投入するなど、同ブランドを活性化させてきた。
こうした手法も成果を上げた結果、チェキの年間販売台数は最も低迷した時期の30倍以上となった。ライバルが消えた結果として、ビジネス用語でいう「残存者利益」も手にした。
ちなみに、この現象はファクシミリ市場に似ている。ファクシミリも情報や連絡の受発信の主役から退き、専用機を販売するメーカーも少なくなったが、それでも根強く販売し、新商品を投入するメーカーには残存者利益をもたらしている。
●旧主力事業の遺産である「モノ」や「ヒト」も生きた
長年にわたり写真と向き合ってきた富士フイルムは、デジタル時代におけるインスタント写真の魅力を、「アナログならではの温かみのある画質」「撮影後すぐにプリントを手にできる」「世界に1枚しかないプレミア感」と解説する。それに加えて、「プリントして仲間に配ることでコミュニケーションが深まる」という副産物もある。
だが、なぜデジタル時代にアナログ商品を残すことができたのか。理由として考えられるのは、写真という創業以来の主力事業だったこと、そして余力のある大企業だったことだ。
余力のある大企業の場合、長年のドル箱だった主力事業が持つレガシー(遺産)は、外部の人がイメージする以上に大きい。それはキーテクノロジー(基盤技術)やキーマテリアル(基盤素材)といったモノであり、事業を支えてきた人材だ。こうした底力も同商品の再拡大を支えたといえよう。
再拡大期を迎えた今、同社がチェキシリーズで掲げる言葉も少しずつ変わってきた。12年9月に発表したニュースリリースでは「今後もお客様により楽しく豊かなフォトコミュニケーションを提案し続けていきます」だったのが、13年8月と14年10月に新機種や新色を追加投入した時には「チェキの魅力と共に『撮る、残す、飾る、そして贈る』という写真本来の価値を伝え続けていきます」と具体的になった。
商品シリーズの位置づけも、スマートフォン用プリンター「スマホ de チェキ」を発売し、ターゲットをスマホユーザーにも拡大したことで、「インスタントカメラ」から「インスタントフォトシステム」へと広がっている。
さまざまな業界でビジネス環境が一気に変わり、それまでの強みが弱みになる時代だが、逆に弱みと思われたことが強みになるケースもある。それは機能性とは違う情緒性だ。前述の「アナログならではの温かみ」は、そんな情緒性を象徴する言葉といえる。
高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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