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大塚家具騒動で浮上した、同族企業の落とし穴 「家内安全」が最強の競争力
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150420-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 4月20日(月)19時30分配信
大塚家具のお家騒動は、長女・大塚久美子氏が社長に留まり、一件落着した。
コーポレートガバナンス(企業統治)をめぐり、メディアからこれほど注目されたファミリービジネス(同族企業)も過去になかったのではないか。経営問題として報じたマスコミがほとんどだったが、久美子氏の経営手腕に対する評価はさて置き、「美人」「独身」といった点を興味本位に取り上げていたメディアも少なくなかった。案の定、記者会見では「独身」に関する質問はご法度となった。確かに、久美子氏は才色兼備である。父の勝久氏(創業者)もかつては、家具屋の娘であることをひっかけて「家具屋姫」と周囲に言い、溺愛していた自慢の娘でもあった。それだけ余計に世間の興味がそそられるのだろう。
だが、アングルを変えて見てみると、この世俗的興味もファミリービジネスをめぐる経営学の研究テーマになる。なぜなら、一昔前と比べても、「ファミリー」が大きく変化しているからである。
これまで日本的経営の長所として着目されてきた家族主義、集団主義、年功序列、終身雇用、企業内労働組合なども日本の伝統的制度であるファミリー(家)の概念から派生するものと考えられる。そのルーツをたどれば、「家」の制度は江戸時代の封建制度の中で熟成された。三島由紀夫氏が『葉隠入門』で描いているように、藩においては、人的な上下関係はなく、藩というものに対して忠誠を誓う関係が存在した。
ただ、日本的経営と一口に言っても、いつ頃の「家」を想定しているのかは厳密にいうと定かではない。少なくとも、社会学者エズラ・ボーゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』がベストセラーになり日本的経営の長所が注目された1979年当時の日本企業のバックグラウンドにはそうした概念が存在していた。そして、日本企業が驚異的な成長を遂げた80年代も日本的経営はもてはやされたが、すでにこの頃には、日本においても、(第二次世界大戦)戦中戦後から続いた「家」の概念は変化し続けていた。
ところが、戦後生まれ世代が経営トップになった90年代頃から、株主重視、四半期決算、成果主義、人員削減など、アメリカ的経営が注目されるようになり、「失われた20年」の中で、従来型の日本的経営は鳴りを潜めた。その後、長期低迷に陥る日本企業を経営する人とそこで働く従業員が、どのような家庭のもとで育ち、今、どのような家庭観を持っているかは、意外にもあまり論じられてこなかった。
●変化した「家」の概念
戦後、日本の「家」の概念は大きく変わった。その一面としてよく指摘されるのが、大家族から核家族への変遷、世帯類型別で単身世帯が最多になったことである。単身世帯の中身も複雑。高齢化に伴う老人の一人暮らしは珍しくなくなってきた。だが、そのほとんどはリタイアしている。仕事に携わっている現役世代に絞ると、その現状も多様である。
例えば、独身男女の一人暮らし。それをさらにブレークダウンすると、晩婚化、未婚化、離婚の増大により、若い人とは限らなくなってきた。家族の構造だけでなく、企業社会が成長、拡大するとともに、都市化が進み、核家族で親となった人々が、昔の家族とは異なる新しい価値観を持つようになり、意識的、無意識的にかかわらず、その息子、娘に影響を与える。このような時代変化を認識せずに既存の価値観で測ると「変人」に見える人が、社会の現状に照らし合わせると「普通の人」ということになりかねない。
社会学には「家族社会学」という分野があり、これまでの社会の基礎である家族に注目してきた。しかし、「家族の変化と経営」の問題について、企業を研究対象とする経営学は、ほとんど触れてこなかったのではないだろうか。ファミリービジネスや老舗の研究者でさえ、「現代の家族」には言及しておらず、「ファミリー」をかつての普遍化した概念でとらえている。
「現代の家族」を考慮すれば、「ファミリービジネス」と一口に言っても、その土台となるファミリーは多様であり、「昔の良家」を元に論じているだけでは、ファミリービジネスのナツメロ版になってしまうのではないか。「昔の良家」ではなく「今風の家庭」がベースにあるとすれば、そのファミリービジネスは、これまでどおり持続的に成長できるとは限らない。ここにファミリービジネスや老舗を美化しすぎる落とし穴が存在する。
ただし、ファミリービジネスが見直されている事実を知ると、それにはそれなりの理由がある。したがって、既存の家族観をすべて否定する気は毛頭ない。むしろ尊重すべき、参考にすべき、というのが筆者の見解だ。日本の家族のかたち、そして個人が大きく変わったように、日本企業の経営システムも変わりゆく経営環境に迎合するのではなく、「温故知新」を基にイノベーションを起こすことが求められている。
●「現代家型経営」のすすめ
そこで、筆者は「現代家型経営」、または、「近未来家型経営」を提唱する。非ファミリービジネスの社長であれば、株主(オーナーシップ)やビジネス(顧客、市場)、従業員との関わりはあるが、創業家との関係は考えないで済むと思われている。だが、すべての日本企業がそうであるわけではない。「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助氏が創った会社(パナソニック)でさえ、ファミリーをめぐる問題があったように、ファミリービジネス的色彩を有する日本企業は、創業家の存在を抜きにしては語れない。先に述べたとおり、それが強みになる場合もあるが、足を引っ張るケースも少なくない。
企業は常に変革を強いられている。時代に応じて変革していかなければ生き残れない。特にファミリービジネスの場合、ファミリーが大きな要素として複雑に絡み合っているだけに、家庭の変化への対応にも迫られる。どこの企業でもあたりまえの人的資源管理(HRM)が、ファミリーに対しても求められるのである。サラリーマンでさえ、家庭がうまくいっていなければ仕事に支障をきたす。
ファミリービジネスの場合、ファミリーが病んだ時だけでなく、会社とファミリーが思わしくない関係になった場合、従業員は最大の被害者となり「三方よし」を唱えている場合ではなくなる。「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」と普通の家庭ではご愛嬌になる問題も、ファミリービジネスでは関係者に実害を及ぼしかねないのだ。
(文=長田貴仁/岡山商科大学経営学部教授、 神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)
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