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AIIB問題も、「格差」の問題も今後必ず好転する!? photo Getty Images
毎日新聞一面はじめ左派系識者の「格差拡大」「官製相場」批判の大間違い
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42966
2015年04月20日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
先週本コラムで書いた「日米が参加しないAIIBの致命的欠陥。中国は必ず日本に水面下で参加を求めてくる」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42865)が、読者皆様のおかげで好評、毎日アクセスランキング上位だった。
それに関連して、先週末に、今週22日に日中首脳会談を行う方向で調整しているという報道があった。安倍首相が21日から3日間の日程でアジア・アフリカ会議の60周年記念首脳会議に出席するためインドネシアに訪問する予定に合わせたものだ。
先週の本コラムに書いたように、このままでは、AIIBはうまく業務を行えない。焦っているのは中国であり、この日中首脳会談は、AIIBに日本の参加をうながすために中国から側から働きかけてきた可能性がある。安倍首相が、その後に訪米するので、アメリカにも参加するように安倍首相に頼む可能性もある。安倍首相がどのような対応をするかが注目だ。
■ 毎日新聞の「地域間格差拡大」報道への疑問
さて、本日のコラムは、17日一面の毎日新聞の記事を取り上げよう。毎日新聞は、全国の自治体のジニ係数を調査したところ、2013年に数値が上昇し、アベノミクスが地域間格差を拡大させていることが裏付けられたと報じている。
そもそもジニ係数とは、所得の不平等感を0から1の間で示す数値。「0」は完全な平等で、大きくなるにつれて不平等となり、「1」は1人だけに所得が集中する状態。0.4くらいより大きいと不平等だと言われる。
この係数を実際に計算するのはエクセルの練習にいい。所得を小さいものから並び替えて、累積所得を計算する。完全に平等なら、累積所得は右上がりの直線になる。ところが、不平等なら、累積所得は右上がりで、スタートは直線と同じ最後も直線と同じだが、その間は直線より下になる。これをロレンツ曲線という。不平等が大きければ、直線とロレンツ曲線との間の三日月型の面積が小さいはずである。この三日月型の面積と直線の三角形の比率がジニ係数である。
例えば、5人で、それぞれの所得が100、100、100、100、500とする。この場合の累積所得は、下図の青線になる(縦軸、横軸ともに最大値が1になるように調整している)。
もし、所得が平等ですべて100なら、累積所得は、下図の赤線(累積均等所得)になる。
ここで、ジニ係数は、赤線と青線に囲まれた部分の面積と、赤線とその下にある直角三角形の面積との比率である。赤線と青線に囲まれた部分の面積は、青線とその下の5つの台形(一つのは三角形)の面積がわかれば計算できるので、ジニ係数=(三角形−台形の和)の面積/三角形の面積 で計算でき、0.36になる。
例えば、10人で、9人の所得が100、残り一人の所得が500であると、ジニ係数は下図のように0.26と下がる。
ただし、この場合、格差を感じるのは、4人から9人に増えている。一方、所得500は、5人に一人から、10人に一人と特別な存在になっている。
■ジニ係数の性格をわかっていない毎日新聞記者
総務省は、すべての市町村について毎年「市町村税課税状況等の調」を公表している(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran09.html)。市区町村別の課税対象所得の総額を納税者数で割った額を平均所得とすれば、平均所得について、ジニ係数を計算できる。上の方法でエクセルの計算は10分程度あればできる。
ちなみに、2013年のロレンツ曲線とジニ係数を出してみれば、以下の図のとおりだ。かなり平等な分布であることがわかる。
毎日新聞では、ジニ係数について、2012年は0.083程度だったが、2013年に0.088程度に上がっているとしている。たしかに上がっているが、0.1にも達していない程度で、平等の中で、数字がほんのわずか上がったにすぎない程度だ。この記事を書いた記者は、自分でジニ係数を計算したのだろうか。もし、ジニ係数の性格をきちんと理解していたならば、「平均所得:地域間格差くっきり 安倍政権下で拡大」というタイトルは恥ずかしくなるだろう。
なお、平均所得200−360万円の間に全体の95%の自治体が入っている。新聞記事では、それから外れた特異な自治体を格差の象徴の個別例として描いている。
毎日新聞では、10年間を調べたものを調査といっているが、エクセルになれた学生ならば、一人でも2,3時間程度でできる簡単な演習程度である。
■景気がいいとジニ係数は高くなる
毎日新聞は、2004年から2013年までを計算しているが、ジニ係数は上に述べたように簡単に計算できるので、1980年から2013年まで算出してみた。1993年までは、2013年よりジニ係数は高かった(下図)。
さらに、景気との関係をいえば、景気がいいときにはジニ係数が高くなる傾向がある。景気がいいと、失業率はそれにやや遅れて低下する。このため、ジニ係数と1年後の失業率は▲0.86という高い逆相関がある(下図)。
これは、格差問題を考える際に、留意しておくべきことだ。思い返してみると、80年代に格差問題は騒がれたことがあったが、結果として大きな問題であっただろうか。同時に進行していた失業率の低下が、格差問題のマイナス面を補っていたのではないか。失業率の低下は、経済成長による多くの人の所得の向上でもある。格差は他人と自分の比較であるが、経済成長によって過去の自分と比較して満足が得られれば、他人との比較も気にならなくなるだろう。
はっきりいえば、雇用拡大があれば、格差問題は取るに足りないわけだ。経済政策としてもっとも基本的なことは雇用の確保である。それができれば、経済政策としては60,70点で及第点になる。
格差問題は、左派系識者がしばしば言及するが、格差が広がっているときに、経済成長・雇用の拡大があることがしばしば無視される。その結果、彼らの意見が経済成長の否定になってしまう。その意見が雇用の拡大を否定していることに気がつかないという間抜けぶりだ。
その一例が、左派系識者によくみられる株の否定である。「官製バブル」、「庶民の景気回復の実感はない」、「資産家だけが儲かっている」などの論調だ。
■株価だけ高くて経済が悪いことは考えられない
日本の株価について、バブル崩壊以降の1995年から年平均で見て、その年の名目GDPとの関係をみると、相関係数は0.7程度になる。米英では相関係数が0.9程度であるのと比べると低いが、それでも景気と株価の間には、一定の相関がある。これを細かくみていくと、株価は1年先の経済の動きをある程度先取りしているようにみえる。
要するに、株価だけ高くて経済が悪いというのはあまり考えられないのだ。経済全体がよくなるので、その一部を株価が先取りしているとみるのが自然だ。
その一例が、半年先の就業者数と今の株価に0.9程度の相関関係があることだ。
この話をすると、しばしばそれは資産家が儲かって、それが庶民に流れる「トリクル・ダウン」といわれるが、基本的にはそうでない。経済全体がよくなるときに、株価が先取りしているだけだ。
これは経済政策の波及の理解に関わる話だ。例えば、金融緩和して、実質金利が下がり、それが経済全体に波及し雇用が創出される。一方、実質金利の低下は、いち早く株価に影響する。このため、株価が上がるのが先になって。雇用の創出は後になる。株価が上がって、その結果、雇用が増えるように見えるが、これは見かけの因果関係であって、実際には、その両者の背後には金融緩和という原因が存在しているのだ。
こうした経済全体の構図が分からないと、「官製バブル」とか言い出す。株式市場への公的資金はこれまでも投入されてきた。それで利益が得られたわけではない。これまでの株価が下がって収益はさほどでもない。つまり、全体の中では少ない公的資金で株価を上下できるというものではない。公的資金投入で株価上昇というのは、証券会社の宣伝文句にすぎない。
「庶民の景気回復の実感はない」というのは、就業者数のように、多くの経済変数の変化は遅れて起こるからである。
「資産家だけが儲かっている」になると、半ばやっかみがでている。
「格差ガー、格差ガー」といって、他人との比較を気にするよりも、自分の中で、昨日より今日がいい、明日はさらによくなるかを考える方がはるかに精神衛生上もいいと筆者は思うが、どうだろうか。
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