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地方の買い物難民問題 現実に即さぬ法律が解消を困難にする
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150420-00000003-pseven-bus_all
週刊ポスト2015年5月1日号
地方コミュニティの疲弊問題が深刻さを増している。小泉純一郎政権以来「地方のことは地方で」がキャッチフレーズになった。ところが、いまや企業を含めた地域社会自体が崩壊寸前で対応できない現実がある。今回は地方における高齢者や障害者など弱者の移動・輸送問題をとりあげよう。
高齢者が日常の買い物やちょっとした用事で外出するのに移動手段がなくて不便するという「買い物難民問題」が大都市で注目されているが、限界集落のような地域では一層、大変だ。
そこで、岡山県真庭市は政府がネット上に開設している規制改革ホットラインに「自家用有償旅客運送の制度を買い物支援に使えるよう改善できないか」と訴えた。これは、たとえば特定非営利活動法人(NPO)が高齢者や身障者を運送する場合、自家用車も有償で使える制度だ。
人だけでなく、注文に応じて食料や日用品なども配達できるようになれば、車を運転しない高齢者は助かるだろう。そんな狙いである。
この提案に対して国土交通省は前向きだった。道路運送法には、いまでも乗合バスが少量の郵便物や新聞、貨物を運ぶのを認める規定がある。今回、新たに自家用車やタクシーにも認める制度を検討する、という。
読者には「マイカーをどう使おうと所有者の勝手じゃないか」と思われる向きもあるかもしれない。だが、人やモノを有償で運送するのは道路運送法に触れる。白タク、白トラックは違法である。
より深刻なのは身障者や要介護者の運送だ。こちらは福祉有償運送という制度の下で、いまでもNPOが実施できるようになってはいる。だが、現実には難題が立ち塞がっている。
過疎地でNPOがバスを仕立てて身障者や要介護者を運ぶ事業を始めようとすると、事前に地元のタクシー業者などから了解を取り付けなければならないのだ。
なぜかといえば、道路運送法施行規則で「地元自治体の長やバス、タクシー事業者、住民・旅客、地方運輸局長、NPOなどで構成する運営協議会の合意が必要」と定められているからだ。
地元のバス、タクシー事業者が「自分たちのお客がNPOに奪われるから反対」と声を上げれば、実施できない。いわば、事業者に実質的な拒否権が与えられている形である。既得権をもつ業者優遇策のように見える。
弱者の生活支援をどうするかは地域の重要課題だ。そうであれば特定業者に拒否権を認めるのではなく、協議会の意見は参考にとどめて地元の自治体なり議会に最終権限が与えられるべきではないか。
ただし、単純にバス、タクシー業者を悪者扱いにもできない。なぜかといえば、NPOが活躍せざるをえないような過疎地では、とっくにバスやタクシー会社が撤退していたりするからだ。会社があっても、実は客の棲み分けができている場合も多い。
NPOのバスがないなら、安くはないタクシーには乗らず「家にひきこもるだけ」というのが実態なのだ。
さらに「運営協議会自体が設置されていない地域もたくさんある」(NPO関係者)という。そう聞くと「地方のことは地方に」という掛け声だけで問題は解決しないと実感する。業者とNPOの対決という単純図式でもない。
自治体も霞が関ももう一度、疲れきった地域の現実に向き合うべきだ。なにより働いてもらいたいのは、もちろん地元の政治家である。
■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)
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