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金融相場には、いったん崩れだすと大幅に下落する脆さがある
日経平均2万円の背後にくすぶる相場急落の不安
http://diamond.jp/articles/-/70360
2015年4月20日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■2年半で2.3倍になった株価 当面は底堅い展開になりそうだが…
4月10日、日経平均株価は約15年ぶりに一時2万円の大台に到達した。直近の株価の安値は2012年11月の8661円だったことを考えると、約2年半の間にわが国の株価は約2.3倍に跳ね上がったことになる。当該期間では、世界の主要株式市場の中でナンバーワンの上昇率だ。
株価上昇の背景には、円安傾向の進行等によって企業業績が回復したことに加えて、日銀の異次元の金融緩和策によって“金余り”の状況になっていることがある。
そうした株価支援材料は、短期的に大きく変わることはないだろう。利益確定の売りで一時的に調整はあるだろうが、当面、底堅い展開になると見られる。もう少し上値余地を見ることはできるだろう。
ただ、足元で世界の主要国の株式市場は、潤沢な流動性を背景に急ピッチに上昇する傾向が目立っている。市場関係者の中には、上昇のスピードが速く、典型的な“金余り相場=金融相場”の様相を呈しているとの指摘もある。
急ピッチの株価上昇に、実際の企業業績の拡大が追いつければよいのだが、あまりに期待先行しすぎると、そのギャップを埋めるために株価が大きく下落する可能性も考えられる。金融相場には、そうした脆さが共存している。
また、わが国の株式市場では、年金資金運用機構(GPIF)や日銀、さらにはゆうちょなどの資金が株価の下支え役を果たしている。“官制相場”と言えるかもしれない。今後の株価動向には慎重な見方が必要だ。
■株高を支える三つの要素 色濃い“金融相場”“官製相場”の様相
ここまでわが国の株価上昇を支えてきた、主な要素は大きく分けて三つある。一つは、円安の進行や景気回復などによって、企業の業績が回復していることだ。特に、円安傾向が進んでいることは、自動車などの主力輸出企業には大きな追い風になっている。
製造業の中で生産拠点を海外に移転している企業にも、円安は重要なプラス要因として作用している。海外で工場をつくるために行った投資案件に、円安の影響で大きな含み益が発生しているからだ。
それと同時に、足元でM&AやROE(株主資本収益率)を重視した経営手法が根付き始めており、海外投資家のわが国企業を見る目に変化が生じていることも見逃せない要因だ。
二つ目は、何と言っても積極的な量的緩和策の影響が大きい。日銀が供給する潤沢な資金の一部が株式市場に流れ込んでおり、それが株価を大きく押し上げる要因になっている。市場関係者の一部には、最近の株式市場の動向は典型的な“金融相場”との見方もある。
特に、わが国やユーロ圏に関しては、これからも一段の金融緩和策の実施が期待できることが、株式市場全体の堅調な展開を下支えする役割を果たしているのは間違いない。
三つ目は、公的資金の多額の株式購入だ。GPIFや日銀、さらには郵便貯金や簡易保険の多額の資金が株式投資に向かっており、株価は下がりにくい状況になっている。そうした状況を海外投資家なども十分に理解しており、株価の下値余地は限られることになる。
そうした状況についてベテランファンドマネジャーの一人は、「お上が株式市場をコントロールしているようで“官制相場”の様相だ」と指摘していた。
■足元の株式市場が抱えるリスク “官制相場”は意外に脆い
堅調な展開を続けるわが国の株式市場にも、見逃せないリスクが潜んでいる。まず、頭に入れておくべきことは為替動向だ。
2011年までの1ドル=75円台の超円高から、最近では1ドル=120円前後まで円安になっている。しかし、この円安トレンドがこれからも長期間続くと見るのはややリスクがある。
米国の経済状況の改善が続き、予想通りFRBの利上げが現実味を帯びてくるなら、ドルの上値余地はまだ若干あるだろう。しかし、米国経済が減速したり、FRBの利上げ時期が後ずれしたりするようだと、円安・ドル高傾向に変化が出る可能性がある。円安に一服感が出ると、企業の収益拡大にブレーキがかかることも想定される。
“金融相場”で、金余りによって株価上昇の期待が先行気味であることも大きなリスクだ。先行する期待に実際の企業業績が追いつければよいのだが、期待が実現できないと株価が下押しする可能性は高い。
当面、日銀の追加緩和策への期待が残っている間は上昇余地があるだろうが、過剰流動性だけで株価上昇を支えることはできない。
さらに、“官制相場”が万能でないことにも十分な理解がいるようだ。安定した相場展開が続く間は、GPIFや日銀などの公的資金の株式投資が、株価下支えの役割を果たすことができるだろう。
しかし、海外要因などをきっかけに、わが国の株式市場が大きな調整局面を迎えると、その効果は吹っ飛びかねない。多くの投資家が売りサイドに回ったとき、特定少数の投資家だけで相場を安定させることはできない。“官制相場”には、意外に脆い部分があることは頭に入れておくべきだ。
■相場急落のメカニズム いつか来た道を辿らない冷静な見方を
多くの投資家が株価動向に対して慎重なスタンスを取っている間、株価の急落は起こりにくい。
そうしたケースでは投資家は、“おっかなびっくり”のオペレーションを行うため、短期間に持ち高を増やさない。持ち高が大きく積み上がらないと、相場が変調を来しても、一度に多額の売りオーダーが出にくいからだ。
逆に、多くの投資家が強気に傾き、全員参加型で相場が押し上げられるとき、相場は意外と脆弱だ。皆が強気なため、多くの投資家は持ち高を目いっぱい積み上げる。
ところが、予想外の材料をきっかけに株価が下がりだすと、多くの投資家が、一斉に積み上げたポジションの売りに走る。そのため、相場は短期間に大幅に下落する。それが相場急落のメカニズムだ。
株価の基礎は基本的に企業業績だ。金余りであろうと、公的資金が株を買おうと、やや長い目で見ると、最終的に株価は企業の儲けに連動するはずだ。その視点を忘れるべきではない。
足元で円安傾向が続いていることもあり、当面、わが国の大手企業の収益状況は安定しているものの、為替相場の動向によってはその方向性が変わることも考えられる。4月の日銀の短観でも、企業経営者の景気の先行きに関する見方はかなり慎重だった。そうした慎重な見方の背景には、円安トレンド変化に対する懸念があるとも考えられる。
また、株式市場の需給状況を考えると、今年秋口には日本郵政グループのIPOなどが予定されている。どれだけの投資資金が吸収されることになるかは不透明だが、大型のIPO案件が投資資金を吸い上げることは確かだ。
米国や中国の景気先行きなど、海外には見逃せない不透明な要素が残っている。世界的な金融緩和策によって、株価上昇が続くのもそろそろ7合目まで来ていると言えるだろう。わが国の株式市場も“金融相場”“官制相場”に酔っていられる時間は、少なくなりつつある気がする。
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