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4月17日、アライアンス・バーンスタイン(AB)の村上尚己氏は、世界的な金融緩和はこれまでドル高を加速させ米経済にブレーキをかけてきた面もあったが、今後は欧州経済の復調と相まって、プラス面が勝るだろうと分析。提供写真(2015年 ロイター)
コラム:ドル高で米経済は失速するか=村上尚己氏
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0N80B220150417
2015年 04月 17日 16:52 JST
村上尚己 アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト
[東京 17日] - 2015年初からの欧州株の大幅高を追いかける格好で日本株が上昇し、日経平均株価が一時2万円の大台に乗せるなど株式市場は盛り上がっている。株高の流れは、ファンダメンタルズが冴えない新興国にも波及。4月以降は中国など新興国株も大幅高となり、2014年9月の高値を超えてきた。
1月に発動された欧州中央銀行(ECB)による量的金融緩和政策が、欧州株のラリーをもたらした主因だろう。同様に金融緩和強化を続ける日本や新興国でも、金融緩和がリスク資産の価格を押し上げるメカニズムが欧州発で広がったとみられる。最近の日本の株高については複数の要因が影響していると思われるが、この側面が最も大きいだろう。
一方で、米国市場は総じて冴えない動きが続いている。年初対比で株式市場はほぼ横ばいにとどまり、債券市場では10年国債金利が年初とあまり変わらない2%前後の低水準で推移。3月分の雇用統計では伸びが失速するなど、2014年央からの世界経済のけん引役であるはずの米経済にほころびが生じている。米連邦準備理事会(FRB)は利上げ開始への地ならしを進める一方で、年央に想定していた利上げ開始を先送りするとみられる。
米経済の1―3月の成長率は年率2%以下にスローダウンした可能性が高い。米国の国内総生産(GDP)統計には、天候要因が表れやすい冬(1―3月)に成長率が低下しやすいというテクニカルなアノマリー(経験則)があるが、それが今年も表れた。1―3月には天候要因と統計のノイズなどに加えて、西海岸の港湾ストライキも生産・物流活動に無視できない影響を与えたとみられる。
もちろん、統計のノイズなどだけで片付けられない側面もある。ドル高や原油価格の大幅下落がもたらしたエネルギー開発関連の投資減少などが足かせになった面もあるからだ。筆者は、年央から米経済は再び再加速すると想定しているが、これまでドル高などの足かせの部分が、米経済のブレーキの主たる要因だったとすれば、成長加速が早々に実現しないリスクも残る。
米経済の回復が遅れると、金融緩和への期待で大幅高となっていた欧州など各地域の株式市場についても、業績との対比で、割高感が意識されるリスクが浮上する。このリスクシナリオの蓋然性は、今後1―2カ月で判明する米国を中心とした各国景気指標の方向で明らかになるだろう。
これが明確になるまでの間は、米国だけではなく、中国の景気減速懸念などから市場のセンチメントが揺らぎやすくなり、市場の振幅が大きくなる可能性がある。
<米経済再加速の経路>
ただ、筆者は米経済に対する懸念は徐々に薄れてくる可能性が高いとみている。これまでのドル高や鉱業セクターの投資削減などの負の影響が1―3月に出た面はあるにしても、それが長期化して米経済全体が今後も停滞するリスクは限定的だろう。
というのも、大幅なドル高が2014年後半から進んだ背景には、FRBのテーパリング(量的緩和の段階的縮小)終了と利上げ開始への思惑が底流にあるものの、それに加えてソブリン債の大量購入策導入という欧州金融政策の大転換が、ドル高の勢いを強めた面もあるからだ。
今後は、こうした側面(ECBなどの金融緩和がドル高を加速させ米経済にブレーキをかけた面)が次第に薄れ、むしろ他国の金融緩和が米経済を支える側面が色濃く出てくるのではないか。
例えば、FRBなどの後追いの格好で実現したECBによるアグレッシブな金融緩和は、世界的な金利低下要因となり、これまで米国の長期金利上昇を抑えてきた。2014年後半からの金利低下が家計や企業の支出性向を支えるプラスの効果は、すでに底流で働いている。米国は利上げ開始への出口を模索しているが、他の地域での「金融緩和競争」が世界経済の成長を支え、それが米経済を支える経路は働いているのである。
もう1つは、欧州経済の復調が、米国を含めた世界経済を押し上げる経路だ。欧州経済は、ドイツ、スペインなどで2015年1―3月は堅調な成長が続き、2014年まで停滞が続いたフランス、イタリアでもプラス成長に改善した可能性がある。
欧州経済指標の動きをみると、ユーロ安によって製造業関連の指標が改善しているだけでなく、消費者の購買意欲を示す消費センチメントや建設業など幅広いセクターが改善している。2011年から世界経済の足かせとなっていた欧州経済の復調は、日本経済の緩やかな回復とともに世界経済を支えるだろう。
1―3月の米経済の停滞を受けて、「ドル高」がもたらす負の側面が注目されている。ただ、ドル高の落ち着きとともに、原油安による所得・消費押し上げ効果と相まって、先に挙げた米経済の押し上げ要因が顕在化するのではないか。このため、米経済が再加速する余地は十分にあると見込んでいる。
*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。
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