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中国主導のインフラ投資銀行にドイツなど欧州主要国が参加を決めたことで、マスコミは外務省や財務省をなじっている。だが筆者は「マスコミこそ現場を知らなすぎる」という(新華社/アフロ)
中国主導「インフラ銀行」は巨大なリスクだ マスコミは欧州と金融の現場を知らなすぎる
http://toyokeizai.net/articles/-/66794
2015年04月17日 ぐっちーさん :投資銀行家 東洋経済
今回は、中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)への日本の参加について、「東洋経済オンライン」で書いておきたいと思います。
■AIIBの実態を知らずに投資するのは言語道断
メディアはどうも、日本が乗り遅れてしまった・・初動での情報戦に敗れ、欧州先進国の参加意思(特にイギリスとドイツ)を読み切れなかった等々、参加しないという判断に批判的なようですが、果たしてどうなんでしょうか。
私は正直、AIIBについては、参加する必要性も何もないし、中国政府の恣意的な投資判断に日本人の税金が使われるなど、むしろ言語道断だろう、と思っています。
そもそも中国は一党独裁の国なのです。この時点でどういう投資先を選ぶのか、という「1丁目1番地」ですら、公平性など論外だということがわかります。
中国共産党のやりたいようにやる。「あんたたち、そんなことわかっておカネ出す約束したんだから文句言わないでよ」、と言われるに決まっています。
AIIBが、イギリスやドイツが付き合うべきはない、と考えているところに投資する場合(例えば、極端な話、ISILと関係が疑われるような団体のインフラを建設するとか、ISILを強く支持している勢力のいる国に投資をするなど)、出資を取りやめられると思っているのでしょうか。
要するに、彼らは東南アジアを中心とする「中華圏」での投資先の選別を、自力でやる力がないから中国の背中にのって、チャイナマネーの力に乗っかろうとしているわけです。
ヨーロッパから見ると元植民地だったという歴史的事実があるだけで、実際にはアジアは遠く、特に東南アジアの適正な投資先は彼らにはとても選択できませんし、実際これまでの進出事例も限定的と言わざるを得ない。植民地としてのアジアは理解できても、対等なビジネスパートナー、あるいは投資先としてのアジアには理解が及んでいないのです。
これに比して、日本は中国よりはるかに早くから民間ベースでも、国ベースでも、さらに言えばADB(アジア開発銀行)まで使って、それこそふんだんに投資、オペレーションをしてきた実績があるわけです。
つまり、日本は別にチャイナマネーの背中に乗らなくても自力でアジア(特に東南アジア)でやっていけるノウハウやコネクションを十分に持っている。ですから置かれている状況はイギリス、ドイツなどと全く異なるわけです。
このあたりの事情は、実際に東南アジアでお仕事をされている方は肌をもって感じられるのではないでしょうか(シンガポールが良い例で、元イギリスの植民地ではありますが、ビジネスにおける足跡は言語が英語、と言う以外にはほとんどありません。イギリス式ハイティーが高級ホテルにその名残をとどめている位でしょうか)。
■外務省や財務省をなじるマスコミは、現場を知らない
ADBの出資者としては欧州勢はドイツがかろうじて5%台の出資比率を持っているだけで、要するに欧州勢はアジアでの投資戦略に大きく後れを取っていたことがあって、これ幸いとばかりに今回の早期の参加決断につながってくるのです。
すでに、ADBで地位を築いているアメリカ、カナダなどが参加しないのはある意味当然で(政治的な戦略で今後参加する可能性はある)、オーストラリアが重なったくらいですが、同国の輸出先第1位が中国であることからすればこれはある種当然でしょう。
さらにAIIBに参加表明している国を見て頂くと、それこそベトナムやミャンマー、バングラデッシュなど、むしろ投資や経済援助を今も受けていて、今後も援助が必要だという立場の国々が多く参加していることがわかります。
彼らは一体何をするつもりなのでしょうか? 自分で少し出資をしておいて、自分の国のインフラ投資にこのAIIBを誘導するつもりなのでしょうか。考えにくいですが、公正さを貫くなら、出資をするからにはAIIBからの融資は自国は一切受けない、と言うのが筋でしょう。
しかし、現在それすらどうするか決まっていないのに日本が何千億円も出資するなんて話になり得ませんし、こんな話はアメリカでも当然議会は通りません。
ちょっと考えただけでも、これだけ矛盾だらけでわけがわからん、へんちくりんな仕組みのAIIBに日本政府が参加しないからといって、それを外務省、財務省による情報取得ミス、となじっているメディアはむしろ、本当に現場を知らない、ということを露呈しているとも言えるでしょう。
東南アジアに優れたアンテナを持っていない欧州勢が参加するのは当然ですし、少しでも中国からおカネを引き出したい途上国が良い顔をしようとするのは当然です。それこそが資本主義、「ナニワ金融道」の世界なのですから。
一方、日本は円借款、ADB、民間投資など、あらゆる分野で多くの実績があるわけです。そしてアンテナ役である総合商社という世界に類を見ないネットワークが脈々をその関係を築いてきています(戦争中は帝国陸軍や海軍よりも、三井物産の方が情報が早かった、という通説までありますね)。
■「ルビコン河を渡った」欧州の対応に幻惑されるな
つまり、官民ともこれだけのネットワークをもっている国は日本しかないのです。中国も莫大な円借款を投入している国として知られていますから、この際、「その一部をAIIBの出資金に回してもかまわないよ」、とでも言ってやればどうでしょうか。さもなくば「返してからそういうことをやれよ」、という話でもあります。
いずれにせよ、今回のAIIBのケースは中国を筆頭に、欲にまみれた連中が乗っかている醜悪な実態にしか見えません。日本はこの件に関しては、同じ金融リテラシーを共有できるアメリカ、カナダとこれまでどおりやっていく、というのが王道でしょう。
欧州はすでにギリシア問題で事実上の国家による債務不履行を認めてしまっており、今後もその他のEU国において同様のことが行われる可能性もあり、その意味では日米とはすでに袂を分かち、ある意味「金融におけるルビコン河」を渡ってしまった・・ともいえるのです。
企業レベルは別として、国家レベルで債務不履行を認めてしまう、というのはこれまでの国際金融秩序を根本的に否定することであり、それが中国、ロシアといった元々リテラシーに欠けている大国と「呉越同舟」と言うわけですから、これに巻き込まれるリスクの方がはるかに大きく見えるのは私だけでしょうか?
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