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没落する帝人 赤字と黒字繰り返し、終わりなきリストラ…見通し甘く、危機感ない経営陣
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150416-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 4月16日(木)6時2分配信
帝人の「ジェットコースター経営」に歯止めがかからない。
同社が2月3日に発表した2015年3月期第3四半期(14年4〜12月)連結決算の最終損益は144億円の赤字だ。通期も180億円の赤字見通しとなり、2期ぶりの最終赤字転落がほぼ確実となった。
帝人の赤字転落は今期だけではない。同社は直近の7年間、今期を含め4回も最終赤字を記録しており、業績は赤字と黒字の繰り返しだ。浮き沈みの激しいジェットコースター経営といえるだろう。
今回の第3四半期の業績は、原油安で原料価格が想定以上に下がり、営業利益が前期比1.54倍増の246億円に達した。この勢いで、通期見通しも前期比77.6%増の320億円となった。
だが、シンガポール工場、山口県の徳山事業所の閉鎖など、電子材料・化成品事業のリストラを主とする特別損失416億円を計上したために営業利益が吹き飛び、最終赤字に追い込まれる見通しになった。
同社の山本員裕CFOは、2月の決算発表で「構造改革は全体としてほぼ計画通り進捗しており、着実に利益が回復してきている」と余裕を見せ、通期で赤字転落の危機に対する切迫感はなかった。
会場でこの説明を聞いていた証券アナリストは、「同社は過去7年間、中途半端なリストラで黒字と赤字を繰り返してきた。その原因を究明することもなく、ただうわべの数字を並べただけで『構造改革は計画通り進捗』と、根拠のない説明に終始していた」と憤慨する。
成長への道筋が一向に見えてこないこの名門企業は、いつになったらジェットコースター経営から抜け出せるのだろうか。
●環境変化に対応できない川上重視意識
同社が416億円もの特別損失計上を明らかにしたのは、昨年11月の15年3月期第2四半期(14年4〜9月)連結決算発表の席上だった。
電子材料・化成品事業の採算が海外メーカーとの競争で悪化、シンガポール工場と徳山事業所が閉鎖に追い込まれ、それに伴う290億円の特別損失計上を余儀なくされた。
ほかにも、テレフタル酸ジメチルの生産停止など原料・重合事業で51億円、成長戦略の要に位置づけているヘルスケア事業でも42億円の特別損失を計上している。前出の証券アナリストは「主要事業で軒並み特損を計上するというのは異常で、それに対する緊張感が経営陣になかったのもまた異常だ」と振り返る。
電子材料・化成品事業のリストラは、CDや家電製品の外装材に用いられているPC(ポリカーボネート)樹脂を生産するシンガポール工場(従業員数約200人)と、ポリエステル繊維を生産する徳山事業所(同約100人)の閉鎖が中心だ。帝人の工場閉鎖は約20年ぶりとなるが、特にシンガポール工場の閉鎖が、同社の迷走ぶりを象徴している。
同社は99年にシンガポールに進出、一気に4期までの増産計画を立て、エース級の人材を送り込んでPC樹脂事業を急拡大した。しかし、当時から業界内には「人件費や電気代が高いシンガポールの高コスト体質は、PC樹脂のような付加価値の低い原材料事業には向かない」と懸念する声が上がっていた。
案の定、進出から10年までは好業績で推移していたが、その後は安価な中国製品に追い上げられ、高コストのシンガポール工場製品の競争力は急速に低下する。生産ライン4本のうち、13年10月に1本を停止し、昨年5月にも1本停止した。
昨年11月の決算発表の席上で、鈴木純社長は「従来型事業からの脱却が遅れ、近年の競争に対応できなかった」と反省したが、会場内の株主から「そんなことは初めからわかっていた」と野次が飛んだ。
化学業界の関係者は「帝人経営陣の認識が甘いのは、伝統的な川上重視意識が背景にあるからだ」と指摘する。
例えば、繊維事業であれば「糸売り」を重視し、装置産業特有の「工場稼働率優先の経営」に終始する。川上にいるので、川下にいる消費者のニーズが見えない。ファーストリテイリングとの提携で川中に進出し、「ヒートテック」の共同開発などで繊維事業を再拡大している東レとは対照的だ。
●経営計画は希望的観測の数値目標ありき
同社が12年2月に発表した中長期経営ビジョン「CHANGE for 2016」は、16年度目標に売上高1.3兆円、営業利益1000億円、最終利益600億円を掲げる意欲的な内容だった。
だが15年3月期の売上高は7800億円、営業利益は320億円、最終損益は赤字の見通しだ。中長期経営ビジョンの目標には遠く及ばないわけだが、そもそも同ビジョンの発表時に、すでに業界内からは「風呂敷を広げすぎだ」と失笑が漏れていた。
そこで、同社は同ビジョン策定後の経営環境の変化を踏まえ、昨年11月に16年度の経営目標を再設定した「修正中期計画」を発表した。同計画で同社は、16年度の目標を売上高8000億円、営業利益500億円、最終利益250億円へと下方修正した。そして「課題事業に対する抜本的改革の断行」と「『複合化』と『融合』による『ソリューション提供』の実現に向けた重点資源投入」という成長戦略を掲げている。
しかし、目標を大幅に下方修正した「修正中計」ですら、大半の投資家や証券アナリストが「計画達成は、ほぼ不可能」と、冷ややかに見ている。
前出の証券アナリストは「修正計画をかき集めて社内調整したような内容だ」と、あきれる。それはなぜかというと、抜本的改革の断行をうたいながら、実際に決めたのはシンガポール工場と徳山事業所の閉鎖だけであり、業績回復の見込みがないアメリカの在宅医療事業やフィルム事業は収益改善目標を示しただけで、それをどう達成するかという具体策は不明だからだ。
つまり「ちょっと業績が改善したらリストラを中止し、業績が悪化したら慌ててリストラを再開する。これでは、従来のやり方と変わらず、リストラが永遠に終わらない」(前出の証券アナリスト)というわけだ。
また「『複合化』と『融合』による『ソリューション提供』」の成長戦略も、「項目とコンセプトを書き並べただけで、成長の根拠を何も示していない泥縄のような政策だ」と、前出の証券アナリストはため息をつく。同社の関係者ですら「数字先行で立てた計画であることは否めない」と打ち明ける始末だ。
リストラは中途半端で、成長戦略の道筋も不明確。さらに、成長エンジンとなる新事業創出は暗中模索で、経営計画の数値目標は単なる願望……。それが同社の低迷の原因であり、実情といえる。事実上、進退窮まった大八木成男前社長から名門復活を託された鈴木社長は、同社最年少となる55歳でトップに抜擢されたが、その責務はかなり重そうだ。
文=田沢良彦/経済ジャーナリスト
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