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北欧にデフレ圧力、ユーロ安が波及 マイナス金利拡大、バブル助長懸念
【ロンドン=小滝麻理子】欧州中央銀行(ECB)の量的緩和によるユーロ安のあおりで、ユーロを導入していない北欧諸国にもデフレ圧力が及んでいる。ユーロ圏に比べて景気は堅調にもかかわらず、デンマークやスウェーデンの中央銀行は輸入物価の下落に対応してマイナス金利や量的緩和の導入を余儀なくされている。異常な低金利の長期化が資産バブルを助長するおそれがある。
デンマーク国立銀行(中央銀行)は1月以降、すでに4回の利下げを実施し、金融機関が中銀に余剰資金を預ける際の金利を、スイス国立銀行(中央銀行)と並び世界最低のマイナス0.75%に設定した。
スウェーデン中央銀行も3月、政策金利をマイナス0.25%に引き下げ、国債を大量に買い入れる量的緩和を拡大した。市場ではマイナス金利にはなお下げ余地があるとの見方が多い。
ECBの量的緩和の影響でユーロの下落基調が続き、経済が比較的堅調な北欧の通貨には上昇圧力がかかる。輸入物価の下落などを通じて、デフレ懸念が強まる構図だ。中央銀行はデフレを抑えるために、異例の金融緩和に踏み切らざるを得なくなっている。
異変はすでに起きている。デンマークでは大手銀行グループのノルデア・クレジットが住宅ローンにマイナス金利を適用した。最近ではデンマークの女性起業家が事業資金の融資を銀行に申請したところ、金利がマイナス0.0172%だったことも同国内で大きなニュースになった。「お金を借りたら金利をもらえる」という、ふつうでは考えられない事態が現実になっている。
いまのところマイナス金利の恩恵を受けるために住宅ローンが急増するなどの状況は起きていない。だが、ストックホルムなどの都市部は緩和マネーの影響ですでに不動産価格が急騰しているうえ、個人の借金も膨らんでいる。バブルを誘発するおそれは増すばかりだ。マイナス金利が長期化すれば、利ざやを改善するために銀行が個人の預金に手数料を課す動きが出る可能性もある。
相次ぐ金融緩和策の持続性にも疑問符がつく。デンマークは通貨クローネをユーロにペッグ(連動)する。同国中銀は2月、ペッグ制を守るために、過去最大となる250億ドル(約3兆円)規模のクローネ売りを伴う為替介入を実施した。その結果、同国の外貨準備高は国内総生産(GDP)の4割と過去最大に膨らんだ。
スイス中銀は1月、スイスフラン高を抑えるための為替介入が限界に達し、対ユーロで設定していたスイスフランの上限を撤廃すると突然発表して世界を驚かせた。デンマーク中銀はペッグ制の死守を強調するが、スイスの二の舞いになるのではないかと懸念する声も根強い。
[日経新聞4月11日朝刊P.7]
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