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キーエンスの平均年収は1440万円とズバ抜けて高い。なのに営業利益率は53%と製造業では突出。この秘密はどこにあるのか(2014年10月の日本国際工作機械見本市で)
業績欄でわかる「人をコスト」と見る会社、「財産」と見る会社
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150415-00066447-shikiho-nb
会社四季報オンライン 2015/4/15 22:11 渡部 清二
今回も四季報の【業績】欄から、「成長力」と「稼ぐ力」について考えてみたい。
成長力の「成長」とは売上高が増える「増収」のことであり、その勢いである「成長力」は「売上高の伸び率=増収率」をみればわかると前回コラムでお伝えした。なぜ利益ではないのかと思う人もいるだろう。私は、利益に着目して成長を計る「利益成長」を否定しているわけではない。売上高の伸びと利益を残す「稼ぐ力」を同時に考える場合、売り上げの伸びは結局、「利益成長」を見ているのと同じことになるからだ。
では、もう一方の「稼ぐ力」とは何か。それは営業利益を売上高で割った「営業利益率」で見るべきだろう。
ところが、成長力を表す「増収率」も、稼ぐ力を示す「営業利益率」も会社四季報には載っていない。重要な情報だけにどちらも追加してほしいところだが、データや情報ですでにぎゅうぎゅう詰めになっている四季報誌面に、これ以上項目の追加を要求するのは酷かもしれない。これらの指標は非常に簡単なので各自で計算したほうが速いだろう。計算式は以下のとおりだ。
・増収率(%)=今期売上高予想÷前期売上高×100
・営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100
この数字を持ってあれこれ考えるには、まずこれらの平均値を把握しておくことが重要だ。一つ目の増収率の平均は四季報3ページの「市場別決算業績集計表」を見ればよい。いわゆる急成長株は、その表の新興市場の平均増収率(今期は15.3%)を継続して超える増収率の企業と考えてよいだろう。
二つ目の営業利益率では、分母になる営業利益は、売上高から売上原価(原材料費や仕入れ値など)と人件費・販売管理費を差し引いたもので、本業のもうけを表す。つまり営業利益率は「本業で稼ぐ力」と考えてよい。
その平均値は、2015年四季報春号の8、9ページにある「業種別業績展望」の表の数字を参考に算出できる。ここには売上高や営業利益など、業種別に集計された合計の実額が記載されている。これらの数字を使うと、今期(2015年1月期〜12月期)の金融を除く全産業の平均的な営業利益率は「5.8%」であることがわかる。一般的には10%以上あれば、「稼ぐ力」のある会社と判断してよい。
■ 農協の大改革で何が起こるか
さて、これも前回コラムでお伝えしたが、売上高が大きくかつ増収率の高い企業は、多くが買収や合併をしている。飽和したマーケットにおいては、買収や合併でシェアを伸ばすことは非常に有効な戦略の一つだ。
そもそも飽和したマーケットに成長株が存在するのかという疑問は残るが、飽和したマーケットだからこそ新規参入者が少なく相対的に競争がゆるいという考え方もでき、何か大きな変化があれば業界内のシェアを一気に拡大して成長する企業も現れる可能性がある。
たとえばフィールド・ワンホールディングス <2060> だ。昨年10月に畜産向け飼料会社の協同飼料と日本配合飼料が経営統合した会社で、【特色】欄には「全農に次ぐ業界2位」とある。
その農協に対して、1954年の発足以来60年ぶりとなる大改革が行われる。農協改革は岩盤規制改革の象徴の一つと報道されているが、この大ナタによってさらに全農が力をつけてシェアを伸ばすのか、はたまた民間企業のフィールドワンが全農のシェアを奪い取って拡大していくのか。同社にかぎらず、これは農業にかかわるすべての銘柄に当てはまることであり、業界内でどんな変化が生まれるか要注目あろう。
次に「本業で稼ぐ力」の営業利益率を高めるためにはどうしたらよいか。方法は以下の二つしかない。
(1)売上原価や人件費・販管費を引き下げる
(2)売上原価や人件費・販管費に利益を上乗せした価格で販売する
この二つの方法は一見すると、コストを下げるか販売価格を上げるかの二者択一の問題に見えるが、実はもっと深い問題を含んでいる。それは人件費をコストと考えるかどうか、言い換えれば「人」をコストと考えるかどうかという問題である。
上記(1)の「売上原価や人件費・販管費を引き下げる」は、人をコストと考える「引き算(マイナス)」の考え方である。一方、(2)の「売上原価や人件費・販管費に利益を上乗せした価格で販売する」は、人を財産と考え、その上で利益を乗せていく「足し算(プラス)」の考え方になっている。つまり人を「コスト」ととらえるか、人を「財産」ととらえるのか、まったく正反対の考え方からのアプローチである。
これは自分自身の問題に置き換えて考えていただくといちばんわかりやすいが、会社が自分のことを「コスト」と見ているのか、それとも「財産」と見ているのかでやる気とかモチベーションは大きく違ってくる。当たり前だが、「あなたは会社にとってコストだ」と言われればやる気など起きるはずもなく、人を「財産」と考えている企業のほうが活気もあり販売力もあり、強い会社になるはずだ。
具体例としてFAセンサーを手掛けるキーエンス <6861> を見てみたい。「平均年収」をテーマとしたコラム8(=四季報「平均年収」や「平均年齢」で儲ける裏技)でも紹介したが、同社の平均年収はなんと1440万円で製造業ではズバ抜けて高い。誰もがうらやむ高い水準にあるが、営業利益率も驚異の53%と製造業では突出しているのだ。
人件費が高くとも、その上にさらに利益を上乗せした高い価格で販売する力があって「稼ぐ力」も圧倒的なのだろう。結局は、強い「販売力」が、高い「成長力」と「稼ぐ力」につながっており、市場はそれらを評価して堅調な株価につながっている。
また、従業員一人当たり売上高という指標のランキングが、四季報オンラインの「最新データランキング」サイトで見ることができるが、これはまさに従業員一人ひとりの「販売力」を表したものといえる。
そのランキングで上位に位置する、石油精製販売のJXホールディングス <5020> や不動産中堅のヒューリック <3003> は、共に平均年収は1000万円を超えるが、これらの企業は高い給与をしっかり払って、強い販売力を誇る「足し算」の企業と見ることができる。
最後に平均年収という側面ではなく、違った側面から人を「財産」として大事に考えている会社を紹介して終わりたい。
その会社とは、電設資材メーカーの未来工業 <7931> だ。四季報【特色】欄に「残業ゼロ経営」とあり、最近盛んに議論される労働時間短縮の問題について、いち早く実践してきた会社である。残業ゼロでも、今まで売り上げを着実に伸ばしてきており、また「稼ぐ力」の営業利益率は今期予想で13%と上場会社平均の2倍の高い水準を維持している。未来工業のような会社が今後の働き方について、いろいろヒントを教えてくれるのかもしれない。
渡部 清二(わたなべ・せいじ):大手証券会社に23年間在籍。中堅企業、個人投資家向けの資産コンサルティング、世界の運用会社向けの日本株セールスに携わる。2014年4月四季リサーチ株式会社設立、代表取締役。
(毎週水曜掲載)
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
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