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短期集中派vs毎日コツコツ派。どちらが出世するか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150415-00015016-president-bus_all
プレジデント 4月15日(水)9時15分配信
毎日コツコツ派の経営者の筆頭は、日本航空と京セラの名誉会長・稲盛和夫氏だろう。日航社内の壁のあちこちに、次の言葉が掲げられている。
「新しき計画の成就は、ただ不撓不屈の一心にあり。さらば、ひたむきに、ただ想え、気高く、強く、一筋に」
2010年に、日航再建を託された稲盛氏はこの思想家・中村天風の言葉を社員に告げた。1秒の集積が1日、1週間、1カ月、1年、そして一生となる。人生は一瞬の積み重ねだ。大きな成果も偉業も、実は天才的な才能があるわけではない普通の人がコツコツと積み上げたもの――。そんな哲学を持つ稲盛氏は、自らもコツコツ精進してきた。たった社員8人で設立した京都セラミック(京セラの前身)を一流企業に成長させ、第二電電(現KDDI)も設立。日航の再建を軌道に乗せた。旧帝大系の大学出身者がずらりと並ぶ経営者のなかで、鹿児島大学工学部という地方大学出身の「非エリート」でありながら、組織のトップに上り詰めるとともに国内外に数多く支持者を持つことができたのは、やはり「毎日コツコツ」の賜物に違いない。御年82の現在も日々仕事に打ち込んでいる。
「ハングリーであれ、愚か者であれ(Stay hungry, Stay foolish)」という名言を残したアップル元CEOの故スティーブ・ジョブズ氏もどちらかといえばコツコツ派だ。
この言葉は曹洞宗の祖である禅師が説いた「愚の如く、魯の如し、只よく相続するを主中の主と名づく」の訳。
「よく相続するを……」はコツコツ1つのことを続ける人が最も強いという意味だ。形あるものは滅びる。だからこそ命ある間にたゆまず努力し、一瞬一瞬の生を最大限に発揮せよ、という教えをジョブズは信条とし、多くのイノベーションを起こしたわけだ。
財閥系企業を中心にこれまで120人の社長にインタビューしているジャーナリストの相沢光一氏はこう語る。
「不思議と大企業の社長の多くは『なぜ自分が社長になったかわからない』と言います。確かにグイグイ部下を引っ張るリーダー型は少数派で、地味な印象。派手な経歴や実績もあまりない。でも、話を聞いていると言葉の端々から、記憶力の良さや豊富な読書量に裏付けされた指揮官としての素養が備わっていることがわかるんです。人間的な厚みというか凄みのようなものを感じます。粘り強く、与えられた仕事を実直にコツコツやってきたから人望も厚く、結果的に出世の道を切り開くことができたのだと思います」
山を下(裾野)から築き、「視界」を別次元のものにしていったのだろう。
■なぜ優秀な経営者はハイブリッド型なのか
一方、短期集中派が出世に不向きかといえば、そんなことはない。
ソフトバンク創業者・社長の孫正義氏は学生時代に「音声付き電子翻訳機」の商品化を思いつくと、すかさず通っていたアメリカの大学でコンピュータが専門の教授を探して、プロジェクトチームを組み、一気に完成させた。さらにその試作機を持って帰国した孫氏は売り込む先をシャープに絞り、誰がキーマンかを調べ上げると、当時専務で、「電卓の生みの親」といわれた佐々木正氏に直談判。1億円で契約し、それがその後の起業の元手となった。まさに電光石火の早業である。
いうまでもなく経営はスピードが勝負。トライ&エラーは必要だが、成功を収めるには、エラーを最小限にし、成功までの時間短縮が重要だ。出世の条件にもそうした価値観が影響を与えている。これまで100人以上の日本のビジネス史に残る社長に取材したジャーナリストの勝見明氏はこう語る。
「優れた経営者は、基本的にコツコツ的な積み重ねのなかで、ここがチャンスとみたら短期集中的に攻め込むことが多いです。(前出の)孫さんにしても大学時代に『毎日、発明のアイデアを3つ考える』ことをノルマにしてそれを欠かさなかったからこそ、あの音声付き電子翻訳機は完成した。つまり、コツコツがなければ、すぐにソフトバンクが創業されることもなければ、その後の急速な成長もなかったのです」
楽天会長兼社長の三木谷浩史氏もコツコツ+短期集中で同社を飛躍させた。
「楽天が急成長したきっかけのひとつが、出店料を固定制から従量制へ切り替えたこと。サーバー拡充などシステム投資のための経営判断でしたが、当然出店者の反発が予想される。でも、三木谷さん自身がふだんから地道に全国を営業で歩き、出店客の広がりを肌でわかっていたから決断できた」(同前)
平凡な経営者なら判断に迷い機を逸したかもしれない状況なのに、さっと判断できるのは「脳の出来」も関係あるかもしれない。脳科学者で諏訪東京理科大学教授の篠原菊紀氏は解説する。
「羽生善治さんなどプロ棋士は次の一手が閃いて、やる気が上がることがあります。このとき脳の線条体が活発に活動します。彼らは過去に何千何万の指し手を体験したり研究したりするなかで最善の一手を見出す。同じように優秀な企業の社長ほど豊富な経験をもとに直観的な経営判断をしているはず」
「棋士脳」の経営者は日々のコツコツを蓄積し続けることで、「ここぞ」という場面を素早く察知し一気呵成に力を発揮する仕事のコツを体得している。
「不確実性の高い現代、コツコツと短期集中のどちらか一方の能力しかなければ、出世するのは難しいのかもしれません」(前出・勝見氏)
大塚常好=文 小倉和徳、町川秀人、若杉憲司=撮影 ロイター/AFLO=写真
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