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JA全中、安倍政権に潰され完全服従 傲慢な改革反対運動の代償 農業改革骨抜き懸念も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150415-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 4月15日(水)6時1分配信
全国各地の農協組織を束ねるJA全中(全国農業協同組合中央会)の万歳章会長が、先週9日の定例記者会見で突然、辞任の決意を表明し、永田町、霞が関の政策関係者の話題をさらった。肝心の辞任理由について万歳氏自身は、「ひとつの区切り」と曖昧にしか語らなかったという。
しかし、この辞任には、農協法改正をめぐって政府・自民党と激しく対立したJAグループが、戦略を一転して服従の姿勢を打ち出すことによって、政府・自民党との間に生じた深くて大きな溝の解消を目指す意図が見え隠れする。仮に万歳氏の狙い通りに両者の蜜月関係が復活すれば、入り口に立ったばかりの農業改革にピリオドが打たれ、懸案の農業再生がうやむやになりかねない。一般国民にとっては、高い農産品の価格引き下げが遠のくリスクが膨らむ“事件”である。
万歳氏は9日の会見で、まず、今回の農協法、農業委員会法、農地法の関連3法の改正に言及し、「これまでに経験したことのない組織の大転換が提起され、現場から多くの不安の声が上がる中で、極めて重い決断をした」と胸を張った。そして、「決断が『農業者の所得拡大』と『地域の活性化』に結びつくよう、総力を挙げてJAグループの自己改革に取り組む所存です」と殊勝に語ったという。これまでの徹底抗戦の姿勢を一変して、政府・自民党に従っていく姿勢を見せたのである。
その上で、最後に自身の進退に話題を移し、「農協法の改正法案が閣議決定されたことなどをひとつの区切りとして、また、今後の自己改革を実践していくために、新しい会長のもとで流れをつくっていきたい」と辞任の考えを明らかにしたのだった。
万歳氏の本来の任期は、17年8月までだ。新会長の選出は今年8月になる見通しで、昨年8月に再任されたばかりの万歳氏が2年余りの任期を残してサプライズ辞任することになったのである。
常識的に見れば、万歳氏の辞任はJA全中の弱体化策をのまされたことに対する引責辞任だろう。後述するが、今回の農業改革はまだ序の口で、全体としては骨抜きの感が強い。規制改革会議が14年5月にまとめた政府の当初案と比べると、抜け落ちたものが多いからだ。ただ、JA全中に限ると、話は違った様相を呈してくる。
●政府・自民党に詫び
例えば、都道府県レベルのJA中央会などが株式会社化を含む改革を自主判断に委ねられて、今まで通り独禁法の適用除外の存在として存続できることになったのに対し、JA全中は設立根拠を農協法から削除され、強制的に一般社団法人に移行することが決まった。加えて、下部組織の農協を締め付ける強力なツールだった「全中による会見監査の義務付け」も廃止される。これにより、JA全中はJAグループの政治活動の司令塔の立場を奪われるとみられている。こうした政府主導の改革に対して、万歳会長が居座ったままでは、組織内のけじめがつかないのは明らかだ。
一方、抵抗を続けてきたJA全中がついに政府の軍門に下ったとの見方も有力だ。万歳氏自身は記者会見で、保守分裂選挙となった佐賀県知事選以来、亀裂が決定的だった安倍晋三政権に対する恨み言を封印。今後は「お互いに力を合わせてがんばる」と、両者の関係修復に強い意欲を見せた。それゆえ、責任者である万歳氏本人がサプライズ辞任をして、政府・自民党に詫びを入れたという見方を呼んでいる。
●傲慢な農業改革反対運動
振り返れば、安倍首相もJA全中の傲慢な農業改革反対運動に振り回されてきた。万歳氏の2代前の会長だった宮田勇氏は、第1次安倍政権下の2006年12月、オーストラリアとのEPA(経済連携協定)交渉に反対する全国規模の集会で挨拶。「重要農産品の例外扱いが明確にならない限り、交渉入りは絶対すべきでない」と徹底抗戦を唱えた。この演説は、自民党農水族の首相官邸離れを促し、1期目の安倍政権が短命に終わる一因になったとされる。また、第2次安倍政権が参加の決断を下したTPP(環太平洋経済連携協定)交渉でも、JA全中は執拗な反対運動を展開してきた。
極め付きが今年1月11日に行われた佐賀県知事選だ。あろうことか、与党推薦候補が農協の支援した候補に敗れたのである。当時、菅義偉官房長官が自民党議員に対して「選挙活動ばかりやっている農協の改革は徹底的にやったほうがいい」と怒りをあらわにしたと報じられている。いくら有力な支持団体であり強力な集票マシーンであるといっても、これでは議員もたまらない。自民党農水族議員の多くが、まるで蜘蛛の子を散らすかのようにJA全中と距離を置き、与党内での支援活動を手控えた。
安倍首相は自ら、今通常国会の施政方針演説で、JA全中に「脇役に徹してほしい」と言い渡し、「60年ぶりの農協改革を断行し、農協法に基づく中央会制度を廃止」すると宣言するほど、JA全中潰しに傾注した。
●農業改革ではなくJA全中改革
その結果、今月3日に閣議決定されたのが、農協法、農業委員会法、農地法の関連3法の改正法案だ。農協法の改正では、JA全中を農協の意見の総合調整などを行う一般社団法人に移行させ、農協に対する全中監査の義務付けも廃止した。代わりに公認会計士監査を義務付けることにしたのである。これによって、JA全中は下部組織との強固なつながりをたたれ、約700の農協に課していた賦課金(年間約80億円)を徴収する道を失う可能性が大きいという。
このほか、農協法改正では、農協の経営目的として農業所得の最大化を盛り込んだ。さらに、組合員に経営指導や物資の運搬、販売、金融サービスといった農協事業の利用の強制を禁じることも明記した。農業委員会法の改正では、形骸化批判を受けて、委員の選出方法を公選制から市町村長の任命制に変えると規定した。農地法の改正では、企業の農業生産法人に対する出資規制を現行の「25%以下」から「50%未満」に緩和する規定を盛り込んだ。
とはいえ、客観的に見ると、改革のポイントが絞り込まれ、農業改革ではなくJA全中改革に終始した感は否めない。というのは、農業への新規参入の促進や企業の農地所有の解禁、農地の転売規制の見直し、農家への補助金制度の見直し、競争力のある農産物開発など、重要な改革でほとんど抜本策が盛り込まれなかったからだ。そういった意味では、これまで改革の障害になっていた抵抗勢力のJA全中叩きには成功したものの、農業全体の抜本改革には手をつけられなかったのが、今回の改革の特色だ。
農業は戦後70年の間に、就業人口が8分の1の200万人に減り、従事者の平均年齢が66歳を超える高齢化に直面している。その一方で、消費者は高い国産米など国内産品の消費を強要されてきた。コメは「ミニマムアクセス(最低輸入量)」を年間77万トンに限定し、これを上回る部分には778%の高関税をかけて、輸入を制限してきた。最近でいえば、スーパーの陳列棚で欠品が目立つのに、なかなか十分な輸入が行われなかったバターの問題もある。農業と農政にいら立ちを感じている消費者は多いはずだ。
万歳氏の辞任を機に、政府・自民党がJAグループの懐柔に動き、改革を疎かにするようでは、国民は浮かばれない。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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