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社説:収束する欧米の成長率
米国の早期金融引き締めの根拠は弱まる一方だ
2015.4.14(火) Financial Times
(2015年4月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米FRB、政策金利0.5%引き下げ
FRBは早期の利上げ実施に慎重になる必要がある〔AFPBB News〕
2015年初め、米国は力強い景気回復に乗り出したと見られており、少なくとも3%の経済成長が予想されていた。米連邦準備理事会(FRB)は目前に迫った金融引き締めについて語っていた(そして今も語っている)。
一方、ユーロ圏は景気不振にはまり込んでいると見られており、欧州中央銀行(ECB)がまさに量的緩和政策を発表しようとしていた。
ところが、ここへ来て、米国の成長の勢いが鈍る一方でユーロ圏のそれが回復している。
何が起きているのか。また、それはなぜなのか。そして、これは政策にとってどんな意味を持ち得るのだろうか。
今のところ、予想のコンセンサスに目立った変化はない。3月のコンセンサスはまだ、米国が2015年に3.1%、2016年に2.9%成長するというものだった。一方、ユーロ圏は今年の成長率がたった1.4%、2016年が1.7%にとどまると見られている。
欧米の相対的パフォーマンスに大きな変化
だが、ギャビン・デービス氏が指摘しているように、欧米の相対的なパフォーマンスに大きな変化が起きている。
同氏の推計では、米国の年率換算の成長率は現在、わずか2.0%で推移しており、1カ月前の2.5%、昨年秋の4.0%から減速した。一方、ユーロ圏の年率換算の成長率は1.7%で、2月の1.3%から上昇したという。
その結果、米国とユーロ圏の成長率の差は昨年夏の3.5ポイントからわずか0.3ポイントに縮小した。この状況が続けば、コンセンサスの予想は大きく外れることになる。
なぜこれが起きているのか正確に知るのは難しい。
だが、数ある説明の中には、原油価格の急落、ユーロの下落、危機に見舞われたユーロ圏諸国、特にスペインとイタリアの遅まきの景気回復が含まれるに違いない。
ユーロ圏には大きな産油国が1つもない。その結果、原油価格の急落は経済にとって紛れもない恩恵となる。
だが、米国では、石油生産(および石油への投資)の規模と最近の劇的な伸びから、バランスがより均等だ。
ユーロ安の浮揚効果
さらに、積極姿勢を新たにしたECBの金融政策の最も強力な効果は、為替レートに対するものだった。JPモルガンによると、ユーロ圏の実質実効為替レートは2013年12月から2015年3月にかけて14%下落した。通貨安は国際的に事業を展開するユーロ圏内の企業に大きな恩恵をもたらすだろう。
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ユーロ圏の実質実効為替レートは2013年12月から2015年3月にかけて14%下落したという〔AFPBB News〕
最後に、ユーロ圏経済は全体として、まだ2008年第1四半期当時より規模が小さく、失業率は11%を超えている(これに対して米国は5.5%)。
ユーロ圏経済はだいぶ前から何らかの回復を遂げてもおかしくなかった。その回復がついに訪れたのかもしれない。
だが、ユーロ圏が力強く持続可能な景気回復を謳歌していると結論づけるのはあまりに時期尚早だ。たとえ今年2%の成長を達成したとしても、ユーロ圏経済は金融危機後に失った分を取り戻すだけだ。
循環的失業率は依然として極端に高過ぎ、インフレ率は危ないほど低い。ユーロ圏のコアインフレ率は直近の12カ月間でわずか0.6%にとどまっている。金融政策を変更する理由はない。
何より懸念される米国の減速
より重要かつ何にも増して望ましくないのは、米国の減速だ。これは金融政策の引き締めに関してFRBの細心の注意が必要になることを浮き彫りにしている。
米国経済はまだ強烈な向かい風――過剰債務と弱い投資という長期的な向かい風と急騰するドルという比較的最近の向かい風の双方――に抗って活動している。
近く金融政策を引き締めるべきだとする根拠は、存在しないとまで言わないにせよ、弱い。FRBが最初の利上げをその後何度も続く段階的利上げの先駆けと見なすのであれば、特にそうだ。
FRBは時機を待つべきだ。我々が何度も繰り返し学んだように、基本的な経済動態は非常に弱い。「長期停滞」は誇張かもしれないが、悲しいかな、大きな誇張ではないのだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43522
原油価格急落で再びテキサスは燃えてしまうのか
シェール開発と高原油価格で潤ってきたが・・・
2015.4.14(火) 藤 和彦
米FRB、量的緩和の終了を決定 ゼロ金利は維持
原油価格急落が世界の金融市場に強いストレスを与えている。2008年の世界金融危機を受けて量的緩和を開始した米連邦準備制度理事会(2011年8月9日撮影、資料写真)〔AFPBB News〕
「米GE、約300億ドル相当の不動産売却で近く合意」
ブルームバーグ(2015年4月10日付)は、ゼネラルエレクトリック(GE)が金融サービスの管理を整理するため、自社が保有する甚大な商業用不動産を米投資会社ブラックストーングループや米銀大手ウェルズ・ファーゴに売却するための協議を進めていることを伝えている。
なぜGEはここにきて大胆なリストラを実施しようとしているのだろうか。
米国の商業用不動産価格は、金融危機後の2010年1月を底に上昇に転じ、2013年9月に金融危機前のピークを超えるなど、住宅用不動産とは対照的に「完全復活」を遂げた。2014年に入ると、米国での永住権取得を狙った中国人の「買い」が殺到(注)。商業用不動産の上昇局面は当分続くだろうとの観測が一般的となった。
(注)米国には雇用創出につながる50万ドル以上の投資を条件に本人と家族に永住権を付与する制度がある。2014年度の対象者は初めて上限の1万人を突破したが、このうち85%を中国人が占めた。
チャイナマネーの主な投資先はニューヨークやサンフランシスコなどの高級物件だが、シェールブームで好景気が続いたテキサス州ヒューストンの引き合いも強いとされている。2015年に入っても「米国の商業用不動産は、主要なリスク商品の中で原油価格との関連が低い」ことを理由に、日本でも外資系金融機関が中心となって米国の商業用不動産への積極的な投資を勧めている。
テキサス州では、金融危機後の景気後退が2009年12月に底をつくまでに42.2万人の雇用が失われたが、2011年11月に金融危機前の水準に急回復した。高い原油価格とシェール開発により米国経済全体を上回るスピードで成長してきたテキサス州では、不動産市場の需要も急増し、在庫が追いつかない「過熱ぶり」となった。
しかし、この状況は原油価格急落で一変した。
原油価格急落で商業用不動産が苦境に
「テキサス州の『ランドマン』、失業の危機、石油ブーム終了で」(2015年3月24日付ブルームバーグ)
ランドマン(地権交渉人)は、不動産の権利関係や地下に眠る資源の所有者を調査し、土地所有者と掘削契約を結ぶ業務を行う。過去数十年で最大の石油ブームでランドマンは引っ張りだこだったが、今やエネルギー業界低迷の打撃を真っ先に受ける職業の1つとなったという。
ランドマンだけではない。パイプライン溶接やトラック運転など業界のほぼ全ての職種が影響を受けているため、テキサス州では最大14万人の雇用が脅かされているとされる。
経済活動の低迷は、商業用不動産価格の下落に直結する。2015年4月7日付ブルームバーグは「原油価格下落、米エネルギー拠点の不動車所有者を圧迫」と伝えている。
原油価格急落によりエネルギー事業の中心地の不動産所有者が厳しい状況に陥る中で、過去10年間の不動産ブームの時期に組成された1.1兆ドルのローンが今後3年以内に返済期限を迎える。
テキサス州ではヒューストンなどの大都市にある最高級物件のビルに資金がつぎ込まれたが、不動産価格の下押し圧力が高まっているため、不動産投資会社はエネルギー企業の低迷に備えて、より高い利回りを要求しているという。
商業用不動産分野への貸出を見ると、テキサス州以上にアラスカ州やノースダコタ州、ウエストヴァージニア州での伸び率が高い。油田サービスや天然ガス採掘危機等の事業を通じてエネルギー業界の事情に詳しいGEは原油価格急落による商業用不動産の苦境を先取りして売りに転じたと見るのはうがち過ぎるだろうか。
80年代後半、テキサス州が金融危機の引き金に
筆者の頭をよぎるのは、1980年代後半の逆オイルショック後にテキサス州を襲った「S&L危機」である。
当時からエネルギー分野への依存が高かったテキサス州経済は、雇用が減少したばかりではなく、商業用不動産不況により、同部門への貸付を増加させていた銀行や「S&L」(貯蓄貸付組合)の多くが破綻し、全米を巻き込む金融危機の引き金となった。
米国における原油価格は、1970年代の2度のオイルショックにより、1バレル当たり2.75ドル(1973年)から36.95ドル(1981年)に急騰し、産油州であるテキサス州では石油を掘れば儲かるという「石油バブル」をもたらした。テキサス州の金融機関は原油価格が1バレル当たり60ドルにまで上昇することを前提とし、審査基準を甘くして石油ビジネスへの融資拡大にしのぎを削るにことなった。
しかし、その後、先進諸国での省エネルギーの取り組み、非OPEC産油国の増産(北海油田やメキシコ湾など)、OPEC諸国の政策変更(サウジアラビアが「調整役」を放棄)などの要因により、1981年から原油価格は徐々に低下。1986年には1バレル当たり10ドルにまで下落してしまう。高コスト構造の米国産原油はこうした低価格に競争力がなく、多くの採掘事業が行き詰まり、米国内の油井数は4000(1981年)から757(1986年)に激減した。
そうした状況の中で、多くの銀行関係者は「原油価格の下落は一時的なものであり、いずれ回復する」と楽観的に考えて対応が遅れ、損失が拡大した。
その後、テキサス州の銀行は、石油産業に代わり、当時好調であった不動産融資に傾注することになった。そのため、不動産の空室率が上昇しているのにもかかわらず建設ラッシュが続いた。ところが不動産ブームの発端は、石油ブームで地域経済が繁栄していたからである。実体経済の裏付けのない不動産ブームが続くはずがなかった。空室率はさらに上昇し、商業用不動産に傾注していた金融機関は多くの不良債権を抱えることになった。
その結果が、1987年から89年にかけて米国全体で発生した金融機関の大量破綻である。件数べースのうち、実に71%(491行)がテキサス州の金融機関だった。資産ベースでは、87年にテキサス州の銀行が有する資産の25%分が消失し、総資産規模でテキサス州のトップ10の銀行のうち9行が破綻または買収されるという壊滅的な状況となった。
銀行だけではなく「S&L」の破綻もテキサス州が中心であった。
S&Lはそもそも住宅ローンに特化した小さな金融機関だった。1980年代初頭にリスク性のある商業用不動産融資が認められたが、その監督・検査体制が効果的に機能しなかったため、86年初めに3234あったS&Lは95年末には1645まで減少し、S&L危機に伴うコストは1500億ドルに達したと言われている。
このように逆オイルショックを契機に80年代から90年代前半にかけて3000近い金融機関が破綻し、総資産で約9000億ドル、破綻処理コストが1900億ドルにも達する金融危機が発生したのである。
ヘッジ取引の売り手は貧乏くじを引くことに
逆オイルショックの場合は、その直後から原油生産企業の破綻が相次いだが、今回は、シェール企業各社が弱気相場に備えて身を守るための保険を用意していた。
ブルームバーグ(4月10日付)によれば、2014年末のシェール企業57社が保有するヘッジの公正価格は260億ドルと2014年9月末時点に比べて5倍に増加した。これにより、シェール企業各社は安値が続く限り、原油先物の「売り」と原油現物の「買い戻し」から生ずる差益を稼ぐことができ、これを操業資金等に充当することができる。このことは、本来なら高コストで操業停止に追い込まれるべきシェール企業が、先物によるヘッジ機能が効力を有する間、操業を続けられることを意味する。
ただし、シェールバブルに目がくらむ金融機関がさらなる融資を続行すれば、逆オイルショック後のような巨大な金融危機の発生を招きかねない。
一方、価格ヘッジの売り手企業は保険金支払いの契約を履行しなければならない。「これらの企業としては、米史上最大のエネルギーブームに融資していたJPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカ(BOA)、シティグループ、ウェルズ・ファーゴなどウォール街の銀行が筆頭に挙げられる。リスクの一部を第三者に売却するのはこれらの銀行にとって一般的なことだが、全ての取引の開示を義務付ける規則はないため、これらの取引によってどの企業が困難な状況に陥っているかを正確に特定することは不可能に近い」(ブルームバーグ、4月10日付)
「エネルギーヘッジファンド、アゲイン・キャピタル(ニューヨーク)のパートナー、ジョン・キルダフ氏は『ヘッジ取引で積極的な売り手だった市場関係者は価格が変動した際に貧乏くじを引くことになった』と指摘する」(同)
流動性が低下した債券市場の危険性
視点を世界の金融市場に転じると、国際決済銀行(BIS)は、世界の債券市場は100兆ドルを上回る規模に膨らんでいるにもかかわらず、ブラックロックなどの世界の主要な資産運用会社は米国債と投資適格級社債の売買高が減少しているため、債券取引がますます困難になっていると訴えている。
世界の資産運用会社の運用資産は76兆ドルと世界のGDPに匹敵するが、先進国での低金利の長期化が利回り追求の動きを招き、ファンドによる流動性の低い資産への投資に拍車をかけている。このような状況を危惧したIMF(国際通貨基金)は、4月8日、資産運用会社への規制・監督の見直しを勧告した。
JPモルガン・チェースのダイモンCEOも同様の懸念を示している。4月8日付けの株主宛書簡の中で、2014年10月15日に米国債利回りが約0.4ポイント急変動した出来事は、「30億年に1度しか起きないはずの出来事だった」という。その上で、「新たな規制で債券市場全体の流動性が低下した結果、『市場のイベント』が新たな金融危機の引き金になるのは時間の問題だ」と現在の金融市場に対する危機感を露わにした(ブルームバーグ、4月9日付)。
原油価格はこのところ1バレル当たり50ドル前後と安定的に推移しているが、原油価格急落が世界の金融市場に与えるストレスは水面下で着実に強まっている。エネルギー地域の商業用不動産やシェール企業が絡む原油先物取引に関わる市場でのイベント発生について、これまで以上に警戒する必要があるだろう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43506
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