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建設現場などでは人手不足のはずだが、日本経済全体では人手不足ではない。なぜこうしたことが言えるのか(写真:YNS / Imasia)
「人手不足」は本当に深刻な状況なのか? 「日銀の金融緩和は長期化する」といえる理由
http://toyokeizai.net/articles/-/66167
2015年04月13日 村上 尚己 :アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト 東洋経済
人手不足が広がっていると言われている。
日本銀行が四半期ごとに発表する日銀短観の「雇用人員判断DI」は、企業からみた人員の過不足感を示しているが、2014年に景気回復が止まる中でも、人手不足感は強まり続けた。
■失業率3.5%と人手不足の関係をどう読むか
直近の2015年3月調査短観においても、景況感の改善がわずかだった一方で、企業が一段と人手不足感を感じていることを示していた。こうした中で、「家計への調査」という側面もある失業率が3.5%まで低下しており、これ以上失業率の低下が見込みにくいという見方もある。
もし、失業率のさらなる低下に限界があり、マクロ経済全体で人手不足感が強まっているならば、日本経済はすでに「成長の天井」に接近しつつあり、総需要刺激を行ってもそれは実質成長率を高めずに、インフレ率を高めるだけになる。そうであれば、日本銀行による金融緩和など総需要刺激政策のメリットに、期待できないということになる。
2014年4月からの消費増税によって、経済成長率がマイナスに転じたことや原油安もあり、インフレ率の伸びは鈍化した。一方で、賃金動向と連動するサービス価格上昇率は、消費増税後も安定しており、年率1%前後のペースで緩やかに上昇している。ただ、2%のインフレ目標には満たない伸びである。ベースアップなどで名目賃金は上昇しているものの、伸びがまだ緩慢である。
企業の実感どおりに、労働市場全体で人手不足感が非常に強まっており、3%台半ばにある失業率のさらなる低下が難しいのであれば、名目賃金はこれまでのような緩やかな伸びに止まらず、上昇圧力がもっと強まっているだろう。労働市場においても、需給動向が名目賃金という価格に反映するメカニズムは相応に働くためである。
■「正常化」に戸惑う企業、なお低下余地ある失業率
では、冒頭で示した、企業が感じ続けている「人手不足感」の強まりについてどう考えればよいか?「デフレと恒常的な人手余り」が約20年にわたり続いていたため、現在起きている労働市場の正常化に対して多くの企業が戸惑っていることが、「人手不足感」として表れているのかもしれない。
現行程度の賃金やサービス価格の伸びに止まっていることを踏まえれば、失業率がこれ以上低下しない限界に達している可能性は低いと思われる。むしろ、サービス価格や賃金の低い伸びが今後さらに高まる過程で、労働市場の需給が一段と引き締まり、さらなる失業率の低下が続く可能性がありえる。
実際に2007年にも失業率は現在同様に3%台半ばまで改善したが、賃金上昇率はほとんど加速しなかった。
当時は、日本銀行が利上げを始めていたが、実際には失業率の低下余地がまだ残っていた可能性がある。日本の場合は3%台程度の失業率では、賃金上昇をもたらすほど需給が引き締まっているとは言えない可能性が十分あるということである。
インフレ率を加速させない失業率がどの程度の水準であるかには、不確実性がつきまとう。人口構成の変化や、労働市場から退出していた潜在的失業者数の存在など、さまざまな要因が影響するためである。
このため、失業率の下限について、経済成長率やインフレ率などの状況に応じて、失業率の想定を柔軟に考える金融政策運営が実践的である。
米連邦準備制度理事会(FRB)においても、かつて金融緩和継続の一つの目安として、従来は6.5%の失業率をガイダンスとして定めたが、その扱いは曖昧だった。
失業率だけでは測れない、潜在的な失業者などの広範囲な労働市場の緩みに配慮した政策運営を続けた。今年3月米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、メンバーが想定する長期の失業率は5%前後まで引き下げられた。
すでに、FRBは利上げ開始のタイミングをうかがう段階にあるが、賃金などインフレ率の落ち着きを見ながら労働市場のスラック(=余剰感)が残っている可能性について、柔軟な判断を続けているとみられる。
■失業率の低下想定なら、日銀の金融緩和は長期化へ
日本は、約20年ぶりにデフレからの脱却を目指している。インフレ率と失業率の関係がどのように変化しているかの判断は、米国よりも難しいかもしれない。であれば、FRBのように失業率の下限について、柔軟に想定して対応する必要がでてくるのではないか。
日本銀行は、2%のインフレ目標を掲げている。この目標実現へのコミットを続ける中で、失業率が1990年代年央以前の水準である2%台まで低下させる余地があることを認識しながら、今後金融政策運営が行われる可能性がある。
3月に就任した原田日銀審議委員は、「2.5%くらいが完全雇用の失業率ではないかと思っています」と、就任記者会見で言及している。
こうした認識を持って、日本銀行の政策運営が行われることは何を意味するか。かつてデフレ脱却に失敗した2000年や2006年のような尚早な金融引き締めを教訓と捉え、当時よりは、日本銀行による金融緩和が徹底され、かつ長期化するということだろう。
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