http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/309.html
Tweet |
中国のファーウェイ(華為技術)が特許出願件数世界1位を奪取。一方前年に1位だったパナソニックは4位に後退した。写真はファーウェイ本社
中国企業“特許出願件数世界1位”の脅威
http://diamond.jp/articles/-/69954
2015年4月13日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■中国が国際特許出願件数で3位に 2位のわが国を急速に追い上げ
3月中旬、国連の専門機関の一つである世界知的所有権機関(WIPO=World Intellectual Property Organization)は、2014年の国際特許出願件数を発表した。
それによると、中国の大手通信機器メーカーであるファーウェイ(華為技術:Huawei Technologies)が、3422件の出願でランキングトップの座を獲得した。2位には2409件の米国クアルコム(QUALCOMM)が入り、3位は中国のZTEだった。ランキングのトップスリーを、中国・米国の大手通信機器メーカーが占める結果となった。
一方、2013年に首位であった、わが国のパナソニックは1682件で4位に落ちた。三菱電機が1593件で5位となった。また、国別の出願件数を見ると、トップは米国、2位はわが国になったものの、3位には中国が入り急ピッチで追い上げる構図が鮮明になった。
特許出願件数は、企業が持っている技術力を表す一つの目安と言われてきた。そのため、わが国をはじめ多くの企業が、積極的に出願件数を増やす政策を取ってきた。企業とすれば、それによって高い技術力を誇示することができた。
今回の出願件数を見ると、いくつかの現象が鮮明化していることが分かる。一つは、中国企業の技術力の台頭が明確になっていることだ。また、欧州諸国の件数が大幅に増加している。そうした状況下、わが国企業の出願件数が前年対比マイナス3%であったことが気になる。
■米国の強さと欧州の復権 熾烈さを増す技術の囲い込み競争
世界の特許出願件数に関して、目に付くのは米国企業の技術力の強さだ。2014年、米国企業は前年比7.1%増の61492件の出願を行い、世界全体の件数の28.7%と圧倒的なシェアを誇っている。
個別企業で見ても、クアルコムはファーウェイに次いで2位のポジションを占めた。その他にも、インテルが6位、マイクロソフトが8位でベストテンに入っている。米国企業全体で6万件を超える出願である。それは、特定の大手企業だけではなく、広い範囲の企業がおしなべて高い技術水準を持っている証拠と言えるだろう。
特許出願件数が企業の技術力のすべてを表しているわけではないが、技術的に新しいものを生み出していかなければ特許の出願はできない。米国企業は技術力に関して、依然として世界の中で高い地位を維持していると言える。
一方、欧州諸国の出願件数が大きく増えている。欧州経済はリーマンショック以降の厳しい経済環境の中で苦戦が続いていたものの、2014年はドイツ・フランス・英国などが特許件数を大幅に増加させた。
国別ランキングでもドイツが4位、フランスが6位、英国が7位、オランダ8位、スイス9位、スウェーデンが10位とベストテンの中に6ヵ国が滑り込んだ。そうした状況を見ていると、欧州企業復権の兆候が表れているように見える。
特許権の出願によって、新技術等がパテントという形で保護されることは、当該技術が出願企業によって囲い込まれることを意味する。今後、知的財産権に対する意識は世界レベルで強くなると見られ、特許権は世界市場の熾烈な競争の中でさらに重要性が高まるだろう。
■目覚ましい中国企業の躍進 国ぐるみの巨大な新技術開発システム
特許出願件数の過去の推移を見ると、最も注目されるのは中国企業の躍進だ。個別企業ベースでベストテンの1位と3位を占め、国別ランキングでは、米国、わが国に次いで2万5000件で第3位の地位に上り詰めた。
出願件数は前年対比18.7%と大幅に伸びている。増加率が2桁になったのは世界で唯一、中国だけだった。米国の同プラス7.1%増、わが国のマイナス3%と比較すると、中国企業の出願件数増のマグニチュードが分かる。
この伸び率を見ると、中国企業の技術力がかなりの速度で、米国やわが国などの技術大国を追いかけている姿が鮮明化する。これまで中国企業は安価で豊富な労働力を使って、低コストで製品を作るイメージが強かったが、そうした産業構造から脱皮しつつあることが見て取れる。
その背景には、政府が国を挙げて、高付加価値の製品や技術を開発すべく精力的に取り組む姿勢がある。ここ数年で人件費の上昇が顕著になっていることを考えると、共産党政権は、企業の技術力を高めて高付加価値を生み出す産業構造へと進むことが必須の条件であるのを十分に理解している。
そうした認識に基づき、中国政府は大学などのアカデミズムの研究者と実際の企業とを結び付けて、「大学城」と呼ばれる巨大な新技術開発のシステムを構築している。研究開発分野で1万人を超える人員を有することもあるという。その物量は、日本人の感覚をはるかに超えるものがある。
中国経済は不動産バブルや経済格差などの問題を抱えており、今後、共産党政権がそうした経済問題に対応できるか否かに疑問の余地はある。しかも、一人っ子政策の影響で、労働力人口が減少することを考えると、成長力の鈍化は避けられない。しかし、中国の企業部門が持つダイナミズムを過小評価することはできない。
■否定できないわが国企業の後退 このままでは世界と太刀打ちできない
国際的な特許出願件数の推移を見ると、わが国企業の後退傾向は否めない。2013年に3年ぶりに出願件数でトップに返り咲いたパナソニックは、昨年は4位に落ち込んだ。前年6位だったシャープは14位にランクを下げ、同じく8位だったトヨタ自動車は12位となった。
それだけを見て、企業の技術力が大きく低下しているとの指摘は適切ではないかもしれない。しかし、台頭著しい中国企業の技術力の向上と比較して、わが国企業の技術面における勢いが低下していることは否定できない。
大手企業の技術開発部門の責任者にヒアリングしてみた。彼は、「中国企業の研究開発部門の物量と比べて、わが国企業が劣勢にあることは否めない」と指摘していた。企業の規模は主要海外企業と比較して相対的に小ぶりで、体力的にも世界の主要企業と太刀打ちすることは難しいという。
多くの国では、有力メーカーがM&Aなどの手法で企業統合を進めて、世界市場でメジャープレイヤーとして君臨できるグローバルメジャーとなるケースが多い。ところが、わが国の電機メーカーを考えると、相応のブランド力を持つ企業が国内に8社もある。世界の主要国を見回しても、それだけの電機メーカーが存在する国はない。
わが国メーカーは熾烈な国内市場での競争に囚われて、グローバルな世界市場でメジャーになるだけの体力を持つことが難しくなっている。海外企業の買収などによって一部企業がグローバルマーケットでの存在感を高めているものの、本当の意味で競争力を回復しているかについては疑問の余地がある。
足元で円安の追い風を受けて企業収益は回復基調を歩んでいるものの、数量ベースでの輸出量の回復は遅れ気味だ。今後、円安・ドル高の追い風に変化が出るようだと、企業の競争力に陰りが出ることが懸念される。少なくとも、特許出願件数で見る限り、中国企業のダイナミズムには脅威を感じざるを得ない。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。