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「AIIBの傍観者」になったのは、米国の失態だ クローニン氏、オバマ政権の問題点を斬る(東洋経済)
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/296.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 4 月 12 日 07:56:05: igsppGRN/E9PQ
 

台頭する中国。今こそ米国の指導力が求められるが、現実には同盟関係にヒビが入りつつある(写真:photoman / Imasia)


「AIIBの傍観者」になったのは、米国の失態だ クローニン氏、オバマ政権の問題点を斬る
http://toyokeizai.net/articles/-/66144
2015年04月12日 ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク) 東洋経済



パトリック・クローニン(Patrick M. Cronin)博士は、新アメリカ安全保障センター (CNAS) アジア太平洋安全保障プログラムの上級顧問兼専務理事を務めている。それ以前には米国ナショナル・ディフェンス大学の国家戦略研究機関 (INSS) の専務理事を務めていた。


クローニン氏は、アジア太平洋地域における安全保障とアメリカ国防・外交・開発方針の両方について豊富な知識と経歴を持っており、現政権にも大きな影響力を持っている。同氏に米国の通商戦略からみた、日本との関係の行方について、環太平洋経済提携協定(TPP)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの懸案に焦点を当て、見解を聞いた。


後編は中国が主導して設立するAIIBの懸念点、米韓関係、米日関係の課題について聞く。


前編=「アメリカはハリボテの大国になりつつある」http://toyokeizai.net/articles/-/65920

■米国は、なぜAIIBに対して傍観者となったのか


──東アジアに対する我々のグローバル政策を再調整するためにTPPを推進するとのことだった。しかし、そうした中にあって、中国が提案する地域のインフラ銀行、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、米国は傍観者だった。


良かれ悪しかれ、米国はアフガニスタンとイラクにおける主要な安全保障のイニシアティブを重視してきた。我々の国際安全保障政策は、かつては慎重に行動しながらも、他国の戦力不足を補うのが一般的だった。


しかし、現在はこれを抑制しようとしている。国防費を削減し、外国への援助も削減してきた。つまり、予算の削減と経済の悪化のために、アジア太平洋地域から支持を得られるような、より包括的な行動を起こせないでいた。


我々はアジアの同盟国に対し、インフラ整備のために必要なお金を、我々が投資したものでない限り、削減するように求めるという愚かしい立場に自らを追いやってしまった。


米国は、進歩、問題解決、 そして誰もが従うことのできるルールを推し進めていかなければならないのに、我々はTPPという重要なイニシアティブに過度に依存し、さらなる貿易・投資・開発プログラムの推進に失敗してきた。米国はAIIBに関与し、ブレトン・ウッズ体制の改革に取り組むこともできたはずだ。


我々は中国のイニシアティブを導くことにより、この地域で70年間有効に働いてきたグローバルなルールに従わせるよう、努力しなければならなかった。もちろん中国が提案するインフラ銀行に、我々の同盟国が参加することを妨げてはならなかったのは確かなことだ。


むしろ、米国も参加するべきであり、そうすることで、インフラ投資を管理するルールについての発言権を求めるべきだった。具体的には、この地域において重要な問題である労働、環境などに関するルール・規制の制定を助けることのできる地位が得るべきだった。


ところが実際には、中国による銀行設立に対する米国の反応は、過剰に防衛的なものだ。米国は中国の計画を阻止しようとしている。確かに、中国のインフラ投資の実績はあまり良くないものであり、これは事実。しかし、我々はそこに参加し、内側から影響力を行使するべきなのだ。


■米国は気まぐれな国だと思われている


──オバマ政権内の誰が、中国のAIIB案に対する判断を誤ったのか。


特定の誰ということではなく、結局のところ、ホワイトハウスの責任だ。この政権からこれまでに発せられたメッセージはひどいものだった。


とはいえ、私が政権批判をしているとは取らないでほしい。広い範囲で聞かれる意見を述べているのだ。例え、今の政権がAIIBについての明言を避けたいと考えていたとしても、例えばこんな言い方もできただろう。「AIIBの設立に反対することも、地域内の友好国や同盟国の参加を妨げることもしない。しかし、議論されるべき多数の疑問点がある。それがしかるべく議論されることを望む」。


そうした姿勢であれば、妥当な立ち位置だ。こうしたメッセージの伝達は、一貫して、繰り返し行われなければならない。朝令暮改でないことが分かってこそ、我々の原則は意味のあるものとなりうる。現時点で、米国の友好国は我々を気まぐれな国と捉えており、そうした立場は米国にとって非常に不健全だ。


──THAAD(終末高高度防衛ミサイルシステム)とAIIBに関する見解の相違に見られるように、韓国との関係は昨今、波乱含みだ。


パク・クネ大統領は国内において多くの問題に直面している。そのため、彼女は中国との関係改善に多くの可能性を求めてきた。そこには経済的なインセンティブがあるだけでなく、北朝鮮へのある種の影響力をもたらす。また、パク大統領は日米関係に対して揺さぶりをかけている。歴史問題についての補償を行わせると同時に、防衛問題でソウルに不都合なことが起きないよう、米国が日本に圧力を掛けることを望んでいるのだ。


今でも米国と韓国の同盟は強力だが、以前の方が良好だった。現在は、ソウルとの間に、本来あるべき高次元の、深い信頼関係がない。この原因の一端はワシントンにもあるが、非常に小規模な側近グループに依存するパク大統領の政治スタイルの悪弊でもある。


──THAADに対してソウルが及び腰な理由は?


ミサイル防衛は、韓国の国家安全、また在韓米軍の保護のために、非常に大きな意味を持つ。平壌がミサイル、潜在的には核兵器保有量を増大させているという現状を踏まえると、その重要性は高まっている。


4度目の核実験、または迎撃の非常に困難な移動式ミサイルを含む更なるミサイル発射といった北朝鮮による深刻な挑発行為が予想される。種類と量との両面で拡大する北朝鮮のミサイル能力を勘案すれば、多層的なミサイル防衛が必要だ。究極的には、パトリオットPAC-3防空システムのようなシステムと比較して、より高高度で、より広範囲の防衛が可能なTHAADシステムは適切なものだ。


■THAADは中国の脅威ではない


これはいかなる形においても中国に対する脅威となるものではないが、中国がどう捉えるかはまた別の問題になる。継続的に、声高に、THAADが中国と無関係であることを主張していく必要がある。狙いは、あくまで北朝鮮の能力に対する抑止である、と。


しかし、現実的には、中国に接近中のパク大統領は、次の危機が訪れるまでは米国のTHAAD配備を受け入れないだろう。この件について、韓国政府は話題にしたがらず、THAADについて検討を行っていることすら認めようとしないだろう。非常に扱いづらい問題だ。


──その一方で、ソウルはAIIBに対して多大な関心を示している。


この件で、韓国はオーストラリアや英国と同様、米国を非難している。しかし、こうした国々は一様に、米国との緊張を高めるリスクを負わずにこの重要な構想に参画できるか否かについて、確信が持てていない。ワシントンからのメッセージは、現状は混乱したものだ。


こうした国がAIIBに参加することに対し、米国側からの返答は、確固たる「イエス」であるべきだ。我々は、そうした国々がAIIBへの参加により恩恵を受けることを望んでいる。同時に、G20経済の繁栄へとつながった類の制度的ルールを強く求めていくようにも望んでいる。


──現状のソウルとの困難な関係を背景とした場合、連邦議会での演説に安倍首相を招くことの「メリット」と「デメリット」をどう考えるか。


米国にとって日本は、地域における最も重要な同盟国だ。日本なくしては、現在、地域内で米国が維持しているような形での米軍駐留はなし得なかった。日本は民主主義国家であり、世界第3位の経済大国だ。過去70年間の日本がそうであったように、安倍首相は平和に対する貢献を行うことに熱心に取り組んでいる。


その姿勢は、第二次世界大戦前の日本のそれとは全く異なるものであり、そこを見誤ってはならない。連邦議会での演説のために首相を招待するのは、非常にいいタイミングだ。


──タイミングは本当にベストだろうか。日米防衛協力のための指針の見直しの最中に演説を行うのはベストなタイミングといえないのでは?


たしかに、首相が連邦議会で演説を行うのに理想的なタイミングは来年だったかもしれない。現在、ホワイトハウスはTPPについて連邦議会に圧力をかけている最中というタイミングだ。このタイミングにおいては、首相に対してはさまざまな類の注目が集まる可能性がある。


来年まで引っ張らなくても、5月と8月の戦勝記念日の後とするオプションもありえただろう。今回の訪問では議会演説をせず、安倍首相が在任中にもう一度、ワシントンを訪問する際に演説するよう、その手配を約束する、という方法のほうがよかったかもしれない。


■敗戦70年の談話では何を話すべきか


──首相はどのように歴史問題を解決しようとしているのか。


これは本人以外には、誰も確かなことは言えない。ただ、この問題に関して首相に助言を行う懇談会の座長を務める北岡伸一教授は歴史の問題の取り扱いの難しさを熟知している。


最近、私が日本を訪れた際、北岡教授は私の提案する3つの論点について同意した。第一点は、首相は、深い尊敬と反省の念をもって、過去を償うという点を明確にすべきということ。長々としたスピーチや談話である必要はないが、首相が真摯かつ信頼できる姿勢を示すことが重要だ。第二点は、過去70年間にわたって日本が国際的な枠組みの中の秩序と安定性構築のために行ってきた貢献についての、静かでありながらも大いなる誇りについてアピールするべきだ。そして3番目に、ポジティブで、ルールに基づいた将来展望を世界に対して示すことだ。


これら3点こそが私が重要だと考えるポイントだ。北岡先生はこれを理解しており、首相にそう助言するだろう。また、首相もこうしたポイントをよく理解しているように思う。とはいえ政治的な計算がどのように働き、発言内容に影響を与えうるかについては、首相の演説が行われるその瞬間まで誰にも知り得ないことだ。


──表現のニュアンスが重要になってくる。村山談話と小泉談話で使われたものと全く同一の表現を使うべきだろうか。


誠実さを伝える上で、手段がたったひとつしかないようには考えていない。しかし、歴代首相の談話で使われた表現を含めることは、継続性を示し、新たな懸念を避ける上で最も明確な方法だ。


逆に、これまでの談話から後退すれば日本にとって何らのプラスにならず、多数の問題を引き起こす可能性がある。今は、日本が過去70年を通じて行ってきた貢献に対して称賛を受けるべき時だ。にもかかわらず、批判を巻き起こすことになるのは明白だ。



 

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