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財政再建、深まる対立  東大教授・吉川洋氏/京大教授・藤井聡氏:それほど実りのある議論とは思えないが...
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/289.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 4 月 12 日 02:07:29: Mo7ApAlflbQ6s
 


 財政再建の必要性を問わないまま、財政再建の緊急度をあれこれ議論しても始まらない。
 よりわかりやすく言えば、政府債務残高がGDPの2倍超という現実は、経済社会(国民生活)にいかなる問題を引き起こす(影響を及ぼす)のかという議論から始めなければならない。

 財政赤字に問題があると言えるのは、唯一、それが悪性インフレにつながるときである。

 財政破綻が政府債務の履行不能を意味するのなら、政府の通貨発行権を持ち出すまでもなく、現在進行形の量的緩和政策を考えればそのような事態は起きないとわかる。
 国家機構の一つである日銀が、民間(金融機関)が保有する国債を毎年80兆円超レベルで日銀券に戻している。預金など金融機関の債務は日銀券で履行できるから、それにより金融システムは問題なく動く。
 日銀の国債購入は、民間が保有する国債の強制償還とみることができる。そして、そのために起きている金融市場の混乱は国債不足であり資金運用難である。長期金利は0.3〜0.4%であり、住宅ローンも低利で推移している。

(この対論でも話題になり何かと問題視されてもいるが、長期金利が上がったからといって財政がおかしくなるわけではない。利益増加見通しや所得増加予測がないまま借り入れが増えることはないのだが、金利が上がって困るのは、自分自身で稼いだお金で債務を履行しなければならない家計や企業(及び地方政府)であって中央政府ではない。利益や所得の増加が実現されないまま貸し出し=借り入れが増大すれば、債務不履行がはびこることになる)


 現状の問題は、政府債務残高よりも、まもなく200兆円に達する日銀当座預金残高の過大性である。
 法定準備を超える部分への付利が0.1%だから、日銀が当座預金で金融機関に支払う利息が2千億円近くに達することになるが、銀行への利益支援というだけでマクロ的な大問題ではない。
 問題は、200兆円ものベースマネーが貸し出しや運用に使われることなく日銀口座で数字として存在し続けていることである。
 財政問題に引きつけると、このような状況だからこそ赤字国債を発行し歳出を増大させなければならない(=政府債務残高の増加)のである。

 財政危機=政府債務過剰の外見的理由は、赤字国債の膨大な積み上げである。だとすれば、なにゆえ毎年度30兆円を超える赤字国債が発行されているのかという問題になる。

 ここでは簡単な答えで済ますが、事業者(企業)が借り入れをしないからである。
 銀行など金融機関が保有するお金が思うように(不良債権にならように)貸し出しできないからこそ、中央政府が身代わりで借り入れを行っているのである。(地方交付税を中心に消化しきれない予算が15兆円レベルにまで達しても、赤字国債を発行し続ける姿がその象徴)
 企業部門が内部留保を膨らませていく経済状況で政府が借り入れをしなければ、銀行の経営はともかく、国民経済が“縮小再生産”に陥ってしまう。
 それは、税収のさらなる減少を招くとともに、民主国家として逃げられない社会保障関連の歳出増加を引き起こし、財政も否応なく悪化することを意味する。
(貸し出し=借り入れこそが経済成長の牽引力であり、貸し出しの低迷は、即、国民経済活動の沈滞を意味する)

 対論のなかで吉川東大教授は、「財政赤字の原因がデフレだというのは間違いだ。社会保障歳出に歯止めがかからない構造的な問題こそが原因」と述べている。
 しかし、歴史的現在においては需要インフレの最大要因である社会保障関連歳出(供給活動を直接的には増加させない)を膨大な赤字国債で賄ってもなおデフレ基調であったことこそが問題なのである。30兆円を超える赤字財政を続けてもデフレ基調が続くほど、供給活動が低迷していた(いる)ことを意味する。
 供給活動が増加すれば(デフレは供給活動の低迷を引き起こす)、賃金水準もアップし、非正規雇用よりも正規雇用が選択されやすくなり、生活扶助対象者が減る一方社会保険料収入が増加する。

 吉川教授は、同じ箇所で、「目指すべきは民需主導の持続成長だ。日本経済は企業が家計をしのぐ貯蓄主体になっていることが問題であって、公共投資が足りないからという話ではない」と説明しているが、これこそが、デフレ基調に陥った要因であり、政府の債務残高が増加していった主因である。

 お二人の共通認識であるが、民間(企業部門)が牽引するかたちの持続的成長をどう実現するかが課題であり、財政政策はその呼び水として機能しなければならない。

 最後に、具体的な支出先はともかく、財政経済政策の方向性としては藤井教授のほうが合理的である。

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財政再建、深まる対立
東大教授・吉川洋氏/京大教授・藤井聡氏

 政府は今年夏、2020年までの財政健全化計画をつくる。主要国でも突出した債務を抱える日本の財政をどう立て直すか。増税や歳出削減による財政再建を重視する吉川洋・東大教授と、経済成長と脱デフレに向けた財政出動を説く藤井聡・京大教授(内閣官房参与)が改革の進め方や健全化目標の在り方について議論を戦わせた。(文中敬称略)


借金膨張、デフレ病が原因 藤井氏
成長だけでは解決できず 吉川氏

 ――日本のいまの財政状況をどうみますか。

 吉川 たいへん厳しい。国と地方の債務残高は1000兆円を超し国内総生産(GDP)の2倍を上回る。主要国で突出した水準だ。国は債務だけでなく資産も持っているから大丈夫という議論もあるが、将来の年金給付に備える積立金なども含まれる。実際に売れる資産は限られる。危ない危ないと言いながら日本は財政破綻していないから、財政危機論はオオカミ少年だという人もいる。重病のときに「まだ死んでいないじゃないか。だから大丈夫」と言うのと同じで愚かな議論だ。

 藤井 米国のポール・クルーグマン教授が「財政ヒポコンデリー」という言葉を紹介している。病気でもないのに病気だと思って思い悩むという意味だ。金利が極めて低い状況にあるのは、直ちには財政危機にならないという共通認識があるためだ。破綻に備える金融商品、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)も日本国債については全然売れていない。それすら知らずに「大変だ、大変だ」と語っている方にはご退場願いたいと思うぐらいだ。

 吉川 日本の国債は日本人が持っているから大丈夫という議論もある。しかし、株式を考えれば分かりやすいが、株主が日本人ならば大丈夫なのか。大切なのはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)で、国債でいえば財政の健全性だ。

 藤井 借金が深刻かどうかは、借金がどのくらいあるかと一切関係ない。1万円借りるだけで破綻するケースもあれば1兆円でも破綻しないケースもある。重要なのは、きちんと返せるかだ。確かに長期的に財政破綻が起こる懸念はゼロではないが、そのことに過度に引きずられて当面の財政政策を決めるのはいかがなものか。中長期的な議論と向こう3〜5年の議論は分けて考える必要がある。

 ――財政再建に向けた目標はどう設定すべきですか。

 藤井 経済成長と切り離して基礎的収支の黒字化などの財政再建論にこだわりすぎると、脱デフレの千載一遇のチャンスを逃してしまう。経済規模(GDP)に対する政府債務の比率を見れば、経済規模の拡大や税収増による財政改善も反映できる。こちらが財政健全化の本筋で、基礎的収支の黒字化はもともと債務残高のGDP比を減らすための二次的な目標だった。

 吉川 確かに債務残高のGDP比が大事だというのが議論の出発点だ。しかし成長率が高まればいずれ金利も上がり、国債の利払い費も増える。だから、政策経費をきちんと税収でまかなえているかを示す基礎的財政収支の黒字化が必要だ。

 藤井 財政の問題は、デフレ病だと考えている。日本経済は有効需要が足りず、デフレから脱却できていない。これが解消できれば経済が活性化し税収も増え財政の不健全さも改善できる。税収との連動性が高い名目成長率を上げるのが重要だというのが私の結論だ。アベノミクスの第1の矢である金融政策はこれ以上は現実的ではないし、第3の矢の成長戦略は時間がかかる。消去法で考えると、脱デフレには第2の矢である財政政策しかない。

 デフレから脱却し財政を健全化するには3%程度の名目成長率が必要だ。そのために政府部門がどういう投資をすべきかという発想で考えるべきだ。私が唱えているのはワイズスペンディング(賢い支出)だ。政府の成長戦略をベースに「アベノミクス投資プラン」を作ればよい。国土強靱(きょうじん)化も優先順位を決めて徹底的にやっていくことを主張している。

 ――成長と財政の関係をどう考えますか。

 吉川 財政赤字の原因がデフレだというのは間違いだ。社会保障歳出に歯止めがかからない構造的な問題こそが原因だ。成長が大切なことに異論はないが、成長すれば財政再建できるというのは間違いだ。もう一つ言えば、目指すべきは民需主導の持続成長だ。日本経済は企業が家計をしのぐ貯蓄主体になっていることが問題であって、公共投資が足りないからという話ではない。1980年代の米レーガン政権時に減税をすると経済が活性化し税収が逆に増えるという議論があったが、結局そうならなかった。公共投資を増やすとかえって財政が良くなるというのはありえない。


社会保障支出、抑制を 吉川氏
公共投資、当面は拡大 藤井氏

 ――増税を含め財政健全化をどう進めるべきですか。

 吉川 夏の健全化計画は、成長、歳出改革、歳入改革の3つを組み合わせるしかない。リーマン・ショック後には、世界各国が財政出動をしたが、足元はそういう状況ではない。2015年は原油安で大変な追い風が吹く。財政出動はあり得ない。消費税はまず10%まで引き上げることを確認することだ。10%でも日本の社会保障や財政はなかなか厳しいが、そうした認識を共有しつつ、手順として当面は社会保障を中心に歳出の効率化を進めるべきではないか。

 藤井 民間主導の成長がよいに決まっているが、デフレ下では財政政策も必要だ。病気に陥った人に点滴を与え、健康に戻ってもらうようなものだ。70兆円や90兆円という話ではない。たとえば(約500兆円の)GDPの1%か2%程度のことだ。米クリントン政権は歳出を増やしながら財政を黒字化した。

 吉川 先生、しっかりしてください。1990年代の米クリントン政権時代はGDPに対する歳出の比率は下がっている。財政健全化目標も掲げていた。

 藤井 何をおっしゃる。クリントン政権は積極的な財政拡大で財政を改善したのです。IT(情報技術)の公共投資拡大がITを中心とする好景気を導いた。29年の米大恐慌後のルーズベルト政権が手掛けたニューディール政策と同じです。

 吉川 当時の米国のデフレは年10%を超す物価下落ですよ。今の日本は有効求人倍率も1倍を超え、当時の米国とは全く違う。

 藤井 物価下落率は違ってもデフレ構造は同じだ。物価も賃金もデフレ脱却を示していない。歴史的には、積極財政で経済を立て直したうえで財政も健全化した事例はあった。民間主導の成長がよいに決まっているが、デフレ下では財政政策も必要だ。
 財政再建だけを考えるなら簡単だ。政府がこの数年目標として掲げてきた2020年度の基礎的財政収支の黒字化に見合う分だけ歳出を削れば良いが、日本国民が幸福にならない。17年の消費再増税も経済の重荷だ。基礎的収支の黒字化と成長率もあわせて両にらみでやるのが安倍内閣の方針じゃないですか。
 夏の健全化計画は歳出カットも次の消費増税も含まれるでしょう。加えて、アベノミクス投資プランのさじ加減も同時に考えるべきだ。こうした意見も踏まえて安倍首相らが判断する。

 吉川 公共投資増で経済成長しようとしてもそれは一時的なんですよ。

 藤井 デフレ脱却までの一時的な財政運営の話をしているんですよ。だから点滴なんです。社会保障で絞るべきものを絞るのは合理的だ。

 ――日銀の異次元緩和もあって、足元では長期金利が極めて低く、放っておいても経済規模に対する政府債務の比率は下がっていく状況です。

 吉川 いまの日本は成長率が長期金利よりも高く、特別ボーナスがある状態だ。成長に伴い税収が増える一方、国債の利払い費負担が減る。だが、中長期的にみると成長率の方が金利よりも高いということはあり得ない。ここは譲れない。
 それに頼るのはギャンブルで、懐かしのメロディーにも聞こえる。かつての日本の金融危機でも同じ議論があった。大切なのは成長力で、不良債権問題を正面から解決する必要はない。経済が成長すればおのずと氷解するという議論だった。先送りの結果、1997〜98年に金融危機になり信用収縮が起こった。日銀が2年前に異次元緩和に踏み切った時も、副作用として財政規律が緩むという懸念があった。藤井先生の議論は規律の緩みの典型だと思う。

 藤井 何をおっしゃる。そうではない。長期的に低金利のボーナスに乗り続けるのはおかしいということには完全に同意する。ただ、この2〜3年、あるいは2020年まで低金利のボーナスがないと考えるのは不合理だということだ。今はそのボーナスを活用した積極財政によるデフレ脱却を進めたうえで財政再建を考えるべきだ。短期の議論と中長期的な議論を混同しないでほしい。デフレ脱却の問題と脱却後の経済システムをどうするかという問題を一緒くたに考えると絶対に間違う。それが日本の失われた20年をもたらしたのです。

 よしかわ・ひろし 小泉政権で経済財政諮問会議の民間議員をつとめた。財政再建と表裏一体の社会保障改革をきちんと進めるべきと説く。63歳

 ふじい・さとし 首相ブレーンで、復興と防災のための国土強靱(きょうじん)化政策の提唱者。土木工学が専門だが経済学にも造詣が深い。46歳

[日経新聞4月5日朝刊P.9]

 

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