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1月27日、USTRが議会証言をする中で、傍聴席にいる男性は「TPPは仕事を減らす法律」と書かれた布を拡げてみせた(写真:ロイター/アフロ)。TPPを前進させるためには、オバマ大統領が議会と誠実に向き合うことが重要になっている
「アメリカはハリボテの大国になりつつある」 クローニン氏、オバマ政権の欠点をバッサリ
http://toyokeizai.net/articles/-/65920
2015年04月11日 ピーター・エニス :東洋経済特約記者(在ニューヨーク) 東洋経済
パトリック・クローニン(Patrick M. Cronin)博士は、新アメリカ安全保障センター (CNAS) アジア太平洋安全保障プログラムの上級顧問兼専務理事を務めている。それ以前、クローニン博士は米国ナショナル・ディフェンス大学の国家戦略研究機関 (INSS) の専務理事を務め、そこでは中国軍事問題研究センターを同時に率いていた。
同氏は、アジア太平洋地域における安全保障とアメリカ国防・外交・開発方針の両方について豊富な知識と経歴を持っている。また現在も、大きな影響力を持っている。
そこで、米国の通商戦略からみた、日本との関係の行方について、環太平洋経済提携協定(TPP)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)などの懸案に焦点を当て、その見解を聞いた。前編はTPPについて、4月13日公開の後編では主にAIIBについて聞く。
■グズグズしているのは日本ではない
──米国議会は現在、TPPについて議論している。あなたは、議会に対し、「TPPは米国の安全保障にとって重要であり、TPPこそが地域において軍事面のみでの大国にすぎないというイメージを刷新する」と主張している。
現在のアジア太平洋地域において、圧倒的に重要なことは貿易と経済だ。かつての米国は、この地域において唯一の経済大国、貿易大国だったが、今ではその地位は後退している。
そこから巻き返すために、米国はTPPを構想した。私が米国の政策立案者に主張したいのは、米国が市場支配力を持っていること、また米国が、貿易に対する、さらにいえばグローバル・コモンズに対する自由なアクセスに注意を払っていることを、この地域に再認識させることが重要ということだ。
もしTPPが妥結しなければ、米国のアジア太平洋地域における支配力が揺らぎ、次期政権にも悪影響を及ぼす。次期政権が、この地域と議会から支持を得られる新しいイニシアティブを確立しようとすれば、膨大な時間が必要となるだろう。
そもそも、日本が対話・交渉をいつまでも長引かせる傾向があるからという理由で、米通商代表部 (USTR) が日本をTPPに参加させることに反対したのは、実に皮肉なことだった。TPP交渉の妥結の瀬戸際となった現時点でグズグズしているのは、安倍首相ではない。むしろ米国の方だ。米国こそが「機能不全を起こした参加国」との様相を呈している。
日本にとって、TPPが重要な戦略的利益を生むことは明らか。安倍首相は、日本が大国の座からすべり落ちることを回避しようと躍起になっている。特に、中国が急速に台頭するなかで、大国としての地位を守ろうと努力している。アベノミクスの第3の矢である構造改革は、TPPを待望しており、TPPが実現しなければ、日本にとって深刻な打撃となる。
──安倍政権はTPPをそのような戦略的観点から見ているのか。
日本はTPP交渉の過程で、自国の経済成長を模索する一方、日米同盟の強化を模索してきた。しかし、日本は十分な安心感を得られていない。尖閣諸島について日本が感じている不安を考えてみるといい。南シナ海における中国との紛争が激化しており、米国が日本に十分にコミットするのか、警戒している。
どのような同盟関係でも、たいてい不安要素があるものだが、この件に関しては、日本がきわめて強い不安を抱いている。このため、オバマ大統領は昨年、日本との安全保障条約の第5条は尖閣諸島に適用されることをはっきり明言してみせた。
──先ほどの発言について確認しておきたいのだが、米国の貿易交渉に携わる人々は、はじめ日本をTPPに参加させたくなかったのか。
USTRの法律専門家は、日本を第1の利害関係者にしたくないと考えていた。なぜならば、日本は交渉を長引かせるだけで、妥結しないだろうとの予測からだ。そのため、第1ラウンドで小グループを作った後、第2ラウンドになってから日本を参加させるというものだった。
■TPPに失敗すればヨーロッパ政策にも波及
米国は2016年に大統領選を迎える。どちらの党が勝利するにせよ、新大統領は、TPPの成立いかんによって、巨大な利益をもってスタートするか、巨大な損失をもってスタートするか、どちらかになる。
TPPは文明社会の究極目的ではない。しかし、米国政府はTPPを貿易自由化のための唯一のイニシアティブであるとしている。TPPで失敗すれば、我々はヨーロッパでイニシアティブを握ることもできないだろう。
TPPが成立しなければ、米国がアジア地域においてバランスを取り戻す戦略は、骨抜きになってしまうだろう。
──なぜでしょうか。
これまでのところ、米国のこの地域における軍事的プレゼンスは、過去の遺産でうまくやっているにすぎない。この地域におけるわが国の外交関係は、将来は大部分が忘れ去られてしまう恐れがある。米国は衰退しつつある、ハリボテの大国になるだろう。
強大な軍事力を持っていても、この地域の重大な紛争に対しては、わずかな影響力しか持てなくなるに違いない。
──つまり、オバマ政権はTPPを重視している?
オバマ政権にとって重要というだけではない。米国、またアジア太平洋地域にとっても重要なことだ。オバマ政権は明らかに妥結に向けて慎重な準備に入っている。私は最近議会に行ったが、ホワイトハウスがさらに努力しなければならないということは明白だ。
議会の職員たちは、こんな疑問を口にしていた。「ホワイトハウスはいつになったら我々に接触してくるのだろうか」。申し添えておくと、議会の雰囲気はホワイトハウスに対してそれほどオープンでもフレンドリーでもない。それでも、ホワイトハウスはさらなる努力をする必要がある。
■ホワイトハウスは誰と接するべきなのか
──たとえば?
超党派的であることが必要であり、ホワイトハウスはジョン・ハンツマン議員のような人物と接触するべきだ。彼は、大統領候補でない共和党員として、唯一注目するべき人物といえる。彼はホワイトハウスと協力してTPPを議会に通すことを提案している。ハンツマンはこの問題を知っており、しかも政治的な駆け引きも心得ている。いくらかの妥協も必要だろう。まずは大統領から歩み寄るべきだ。
ジョン・ミード・ハンツマン議員(写真)が、TPP妥結に向けたキーパーソンになるとクローニン博士は考えている
残念ながら、オバマ大統領にはモラル・ハザードがある。彼は議会を分裂させるような人物になってしまった。2016年の大統領選がヒートアップすれば、分裂状態は悪化の一途をたどるに違いない。TPPの主たる支持者がオバマ大統領ただ1人となれば、TPPの成立はますます難しくなることは明白だ。
したがって、大統領は 有力な超党派の議員たちの意見に耳を傾ける必要がある。もう1人、重要な役割を担ってくれそうなのが、ポール・ライアン議員だ。他にもうまくやってくれそうな議員が何人かいる。
大統領はTPPの成果を皆に分け与えることを目指さなければならない。議案の可決は、厳しい競争が始まること、やるべき仕事が追加されることを意味するに過ぎないからだ。
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