01. 2015年4月10日 18:40:50
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インタビュー:物価の基調不変なら追加緩和は不要=中曽日銀副総裁 2015年 04月 10日 17:21 JST [東京 10日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁はロイターとのインタビューに応じ、今後、消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)の見通しが下振れても需給ギャップやインフレ期待など物価の基調が変化しない限り、「追加緩和は不要」との認識を示した。 日本経済は企業や家計の前向きな行動の変化が生じており、デフレマインドは「払しょくされつつある」と表明。量的・質的金融緩和(QQE)に伴う大規模な国債買い入れを今後も続けていくことは「十分に可能」と語った。インタビューは9日に行った。 <デフレ心理「払しょくされつつある」、リスクは海外動向> 日銀が2年程度で2%の物価目標を達成すると宣言し、2013年4月にQQEを導入してから2年が経過したが、足元のコアCPI上昇率は消費税率引き上げの影響を除くベースで前年比ゼロ%まで伸び率が縮小している。 中曽副総裁は物価動向について「(2%の)物価安定目標との隔たりが残っている」ことを認めながら、鈍化の原因は原油価格など「エネルギー価格の下落」によるものと説明。日銀が重視している需給ギャップやインフレ期待などを反映した「物価の基調」は「着実に改善している」と語った。 そのうえで、日本経済は「企業、家計部門とも所得から支出への前向きな循環メカニズムが作用し、景気は緩やかに回復している」とし、QQEの効果もあって企業や家計の「前向きな行動の変化が起きている」と強調した。 具体的には企業の賃金設定において、今年の春季労使交渉(春闘)で昨年を上回る水準のベースアップ(ベア)が実現する見通しなど「賃金の上昇傾向が続いており、企業の予想物価上昇率の上昇を示唆しているものとして非常に心強い」と歓迎。賃上げの内容も「中小企業や非正規労働者に広がっており、雇用・所得環境の質的改善を示すもの」と評価した。 企業や家計のデフレマインドは「払しょくされつつある」と表明。「この点は隔世の感がある」とし、日本経済はデフレ脱却へ着実に前進しているとの認識を示した。 日本経済の好循環が「中断する」リスクについて、「海外動向により目を向けていく必要がある」と言及。特に、深刻な債務問題に直面しているギリシャが「仮にユーロ圏から離脱するようなことになれば、国際金融資本市場の混乱などを通じて日本の市場、経済にも影響があり得る」とし、ギリシャ問題の行方に注視が必要とした。 <2年程度の目標期限は変えない、政策効果の起点> 物価2%達成に向けた道筋は、原油価格が日銀の想定通り先行き緩やかに上昇していくことを前提にすれば、コアCPIの前年比は「原油価格下落の影響がはく落するにつれて伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%に達する」と展望。もっとも、原油価格の動向によっては達成時期が「多少前後する可能性はある」との見方を示した。 日銀がQQE導入当初に約束した2年程度を念頭とした目標達成期限についても「(期限の)コミットメントは政策効果の起点であり、この方針を変える考えはない」と強調した。2年程度での目標達成が困難になれば追加緩和を迫られることになるが、仮にコアCPIの見通しが下振れても「物価の基調的な動きに変化が生じない限り、追加緩和は不要」と断言。一方で、物価の基調に変化が生じた場合は「物価安定目標の早期実現に必要となれば、ちゅうちょなく調整を行う」とも語った。 QQEからの出口政策については、物価目標実現の途上にある中で「早い段階から具体的なイメージを持って話すことは適当ではない。市場との対話の観点からも、かえって混乱を招く」とし、議論は時期尚早と指摘。そのうえで、日銀は超過準備への付利や、資金吸収手段として国債売り現先、手形売出という「実用可能な手段を有している」と述べ、出口に対応することは「十分に可能だ」と自信を示した。 <大規模な国債買入継続「十分可能」、市場の流動性維持は重要> QQEに伴って長期国債の保有残高を年間80兆円増加させる大規模な国債買い入れを日銀が続ける中、国債市場では市場機能や流動性への懸念が一段と強まっている。 中曽副総裁はQQE導入が国債市場の需給や価格形成に影響を与えることは「当初から不可避と思っていた」としたが、これまでのところは「国債市場の機能度、流動性が通常取引が困難になるほど著しく低下しているわけでない」との見方を示した。 一方で「私自身は流動性の維持がとても重要であることを十分に認識している」と強調し、これまで以上に市場参加者と密接な意見交換に努めるとともに、「新しい分析手法なども活用しながら、市場の流動性や機能度について包括的、丁寧にフォローしていきたい」と語った。 市場では現行の大規模な国債買い入れの持続性を疑問視する声も多いが、中曽副総裁は、今後も買い入れを続けていくことは「十分に可能」と明言。さらなる国債の買い入れに関しても「今後も買い入れに支障をきたすような特段の事情があるとは考えていない」と述べ、追加緩和を行う場合の増額余地もにじませた。 さらに、今後も国債買い入れを続けていく中で、「従来は安定的・固定的な投資家とみられていた主体が保有する国債まで掘り起こして買っていくことになる」と指摘。「こうした投資家は、より高い価格でなければ日銀に国債を売却しないかもしれない」と述べ、「その場合は、オペレーションを通じてイールドカーブの低下圧力や、ポートフォリオ・リバランスを促す効果が強まる」と、さらなる金利低下の可能性に言及した。 <マイナス金利は緩和効果の一形態、金融機関収益の厳しさ「十分認識」> また、金利低下によって短期国債市場などで異例のマイナス金利が発生しているが、「マイナス金利は金融緩和効果の一形態であり、借入コストの低下やポートフォリオ・リバランスの促進という意図するメカニズムに沿ったもの」と政策効果を主張。現段階では「マイナス金利が市場取引のインセンティブを大きく阻害したり、金融サービスの提供に持続的な負の影響が生じているとは考えていない」と語った。 超低金利環境の長期化が貸出金利ザヤの縮小などを通じ、地域金融機関を中心とした金融機関の基礎的な収益力の低下をもたらしている。 中曽副総裁は、QQE推進に伴う金利の低下によって「地域金融機関の収益環境が非常に厳しい状態に置かれていることは十分に認識している」とする一方、QQEの効果によって経済の好循環が強まれば「貸出の増加や資金利益の改善などの効果が生じ、金融機関の収益向上にもつながっていく」と期待感を示した。 一方、大規模な金融緩和を続ける中でも「現時点で資産市場や金融機関行動において、過度な期待の強気化は観察されていない」と、金融面の不均衡は生じていないとの認識を語った。 (伊藤純夫 木原麗花) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0N10N020150410 コラム:世界経済減速で日銀追加緩和の現実味=村田雅志氏 2015年 04月 10日 13:35 JST 村田雅志 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン 通貨ストラテジスト
[東京 10日] - 今年第1四半期の世界景気は減速感が広がった。消費増税後の低迷から回復が期待される日本経済も、この動きと無縁でいることは難しく、日銀は景気減速を背景に追加緩和に踏み切るだろう。 ただ、日銀が追加緩和に踏み切ったところで、2%の物価目標を今年度に達成することは難しい。為替市場での追加緩和期待は、来年度も続くことになろう。 市場関係者の間では、米国景気が第1四半期に減速したとの見方が強まっている。米雇用の拡大ペースは、昨年第4四半期の月平均32.4万人増から第1四半期には同19.7万人増と大幅に鈍化。米景気との連動性が強いことで知られる、米供給管理協会(ISM)発表の製造業景況指数も、3月には51.5と昨年10月の57.9から5カ月連続で低下した。 市場関係者による第1四半期の米成長率見通しは1%台後半と3月時点の2%台前半から下方修正され、昨年第4四半期(2.2%増)からさらに鈍化する格好となっている。 第1四半期の景気減速は米国だけでなく世界的な現象である。新興国の製造業購買担当者景気指数(PMI)をみると、昨年第4四半期から第1四半期に低下した国は14カ国中8カ国。改善を示した6カ国のうち韓国、台湾、メキシコ、ポーランドの4カ国は2月から3月にPMIが低下しており、米国と同様に3月になって減速感を強めている。 3月の貿易統計のうち、すでに発表されている韓国、ブラジル、台湾の輸出はいずれも前年割れ。国別にみると、中国や日本を含めアジア向けの落ち込みが大きく、堅調に推移した米国だけでは輸出全体をカバーしきれない構図となった。 3月調査の日銀短観でも、海外での製商品需給判断(製造業)は、大企業、中小企業ともに悪化。業況の先行きに関する判断指数(DI)をみても、自動車など輸出業種で大きく悪化しており、日本企業も世界景気の減速を認識していると推察される。 こうした状況を踏まえると、日本の輸出は2月に続き3月も数量ベースで減少が続くことになりそうだ。内閣府によると、輸出数量は1月に前月比プラス5.7%と大きく上昇したが、2月は同マイナス7.6%と昨年8月以来の水準に大きく低下。3月もアジア向けの落ち込みを主因に前月比マイナスとなる可能性があり、第1四半期の国内総生産(GDP)成長率を押し下げると予想される。 国内景気は、外需だけでなく内需も拡大が期待しにくくなっている。特に個人消費は伸び悩む状況が続くだろう。2月の現金給与総額は、前年比0.5%増と市場予想を大きく下回り、1月分も同1.3%増から同0.6%増に大きく下方修正された。今年の春闘でのベースアップ(ベア)は、3月31日時点で平均0.7%程度と昨年(0.4%)から伸びが加速したが、その一方で非正規雇用の拡大は続いている。 また、所定外給与(いわゆる残業代)は前年並みに伸び悩み。昨年(2014年)春闘でのベアが平均0.4%だったにもかかわらず、所定内給与はサンプル入れ替えの影響もあって前年比0.0%から同0.4%減に下方修正された。こうしたことから考えても、今年も賃金の伸びは限定的となりそうだ。 <原油安効果は貯蓄増か> 原油安によって家計の購買力が強まるとの期待もあるが、過度な期待は持たない方がいいだろう。小売業販売額は1月、2月ともに前年割れ。原油安は昨年11月から続いているが、消費を押し上げる形にはなっていない。 家計調査で平均消費性向が若干ではあるが低下しているように、原油安によって生じた余剰資金の多くは貯蓄に回っている可能性もある。家計貯蓄率が2013年度にマイナス1.3%と史上初めてのマイナスを記録したことも考慮すると、消費者は原油安を消費拡大ではなく貯蓄回復の好機とみなしているのかもしれない。 アベノミクス「第2の矢」として持てはやされた大規模な財政支出も、今後は目にすることができないだろう。公共投資の先行指標である公共工事請負額は2014年8月以降、前年比で減少基調が続いており、第1四半期以降は成長率の押し下げ要因となる見込みだ。その後も、2014年度補正予算による経済対策が、過去2度の対策と比較すると小規模であることから、政府支出は今年度いっぱい成長率を押し下げることになる。 政府は景気減速が目立ってくると、追加経済対策を検討する可能性があるが、安倍首相が2020年度に基礎的財政収支の赤字解消を公約として掲げていることもあって対策の大規模化は期待できない。そもそも建設業では人手不足が慢性化しており、対策規模を大きくしたところで公共事業が成長率を短期に押し上げることは難しい。 内需、外需ともに軟調な動きとなれば、日本も第1四半期の成長率が1%台半ば程度と、昨年第4四半期から伸び悩む可能性が高まる。こうなると黒田日銀総裁が重視する需給ギャップの改善が一服することになり、(同総裁のこれまでの発言との整合性が保たれると想定していいのなら)、追加緩和を検討することになる。 ただ、追加緩和の内容が、2度目の大規模緩和のように、長期国債の買い入れペースの拡大が中心だと、為替市場は大きな円売りの反応を示さないだろう。保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するとした現時点での長期債買い入れペースですら、円債市場関係者を中心に実現可能性が疑問視されている。これ以上、長期債買い入れペースを拡大すれば、金融政策の実現可能性に対する疑義がさらに強まることになる。 一部市場関係者から提案されているように、日銀が追加緩和として長期国債の代わりに、財投機関債や地方債の買い入れを開始したとしても同じことだ。買い入れ余地が狭まっている長期国債に比べれば、日銀のオペは容易となるだろうが、円債のイールドカーブが、さらにフラットニングするとは考えにくい。 財投機関債や地方債のスプレッドが縮小したところで、政府関係機関や地方自治体が短期間で予算規模を拡大させるわけではなく、象徴的な意味合いばかりが目立つ。買い入れペースの拡大幅によるところもあるが、円売りの動きが持続的なものになるとは期待しにくい。 <ETF買い入れが効果的> 一般の人々のインフレ期待を醸成し、総需要を下支えするという点では、長期国債などの公債買い入れよりも、上場投資信託(ETF)の買い入れ規模を拡大させた方が効果的だろう。日本株の上昇は資産効果を通じ個人消費を押し上げることが期待できる。 また、日本株の上昇で市場のリスク選好姿勢が強まれば、円売りの動きが加速することも考えられる。市場の公的関与が強くなるとして、日銀によるETFの買い入れ拡大を批判的にとらえる見方が強まるかもしれないが、2%物価目標に強いコミットメントを示す黒田総裁にとっては意味のある批判とならない。 ただ、このような追加緩和が実施されたとしても、今年度中に内需が拡大することでインフレ圧力が強まり、2%物価目標が達成されることは考えにくい。2度目の大規模緩和で示されたように、日銀がマネタリーベースの拡大ペースを加速させても、需給ギャップが目立って縮小したわけでもなければ、予想物価上昇率(インフレ期待)が高まったわけでもない。 黒田総裁は、物価が事実上のゼロ%になっているのは原油価格の下落が主因で、物価の基調は着実に改善していると抗弁するが、原油価格との連動性が弱い家賃は前年割れが常態化したままだ。耐久消費財にいたっては、消費税率の引き上げ効果を除くと前年割れとなっている。 政府が基礎的財政収支の黒字化という公約に縛られている以上、日銀が2%物価目標を今年度中に達成できるとすれば、為替市場が円安方向に動き、輸入物価の上昇を通じて外生的に物価を押し上げる経路に限られる。2013年半ば頃と同じように円を20%ほど減価(ドル円を140円超に上昇)させることができれば、ゼロ%に落ち込んだコア消費者物価指数(CPI)を2%程度に押し上げることも期待できるだろう。 しかし、すでに円は実質実効ベースで1973年以降、最も低い水準に下落。さらなる円安は、米国も含め世界各国から非難の対象となるほか、国内からはコストプッシュ型インフレに対する批判も強まるため、日銀の意に反して政府が円安に歯止めをかける可能性もある。円安だけで2%物価目標を達成するのは現実味に乏しい。 黒田総裁にとって幸いなことは、いわゆる異次元緩和から2年が経ったことで、2%物価目標を慌てて達成する必要がなくなったことだ。黒田総裁はすでに、2%物価目標を達成する時期を「2015年度を中心とする期間」と、以前の「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期」から変更済み。量的・質的金融緩和が始まった2013年度を開始時点とし、2015年度(2013年度から2年後)を中心とすれば、2%物価目標は中心からさらに2年後の2017年度までに達成すればよいことになる。 2015年度はようやく始まったばかりで、黒田総裁には3年もの猶予がある。その間には、政府の財政再建姿勢が変わる可能性もあれば、国際経済がさらなる円安を容認する可能性もある。 もしかしたら日本のインフレ期待が、理由はともかく、5%くらいに上昇するかもしれない。黒田総裁が現時点で慌てる必要はない。2%物価目標が達成されるまで、為替市場は追加緩和観測を抱き続けることになるのだろう。 *村田雅志氏は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト。三和総合研究所、GCIキャピタルを経て2010年より現職。 http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0N104T20150410 緩和マネーが押上げた日経2万円、ドル/円や金利とギャップ 2015年 04月 10日 17:14 JST [東京 10日 ロイター] - 日経平均.N225が15年ぶりに2万円を回復したが、ドル/円JPY=EBSや日本の長期金利は落ち着いた動きを続けている。一段の円安が増益期待を高めたり、インフレ期待が強まっていることによる株高ではないようだ。
実体経済がさえないなかで、世界的な金融緩和が株価を急激に押し上げている構図の中に日本株もあり、経済や各市場間とのギャップには警戒感も広がりつつある。 <バーナンキ前FRB議長のブログ> バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長がブログを始め、市場関係者の間で話題になっている。そのなかで注目されている指摘の1つが、世界で広がる低金利についての記述だ。 中央銀行(FRB)が、政策金利を低くしているから、世の中の金利が低くなっているわけではなく、世の中の金利(均衡する実質金利)の水準が低いから、政策金利が低くなるのだと指摘している。つまり景気や物価が上がらないから、もしくは近い将来上がるという期待が小さいから政策金利も自然と低くなるというわけだ。 日本の低金利は、日銀が「異次元緩和」によって国債を大量に購入し、金利を人為的に低くしているからという見方は多い。しかし、それを可能にしているのが、バーナンキ前議長が言うように、低い均衡実質金利の水準、つまり日本の低成長や低物価が長引くとの予想であるとすれば、高値を更新し続ける日経平均には「違和感」が否めないことになる。 低金利はビジネスや投資活動を活発化させるほか、利回りの相対的な比較でも株高をもたらす材料になる。いわゆる不景気の株高だ。しかし、歴史的な金融緩和が、歴史的な低金利と歴史的な株高を「同居」させている現在の状況が、いつまでも続くと考えるにはリスクもある。 「ドイツでは景気に過熱感も出始めている。経済が弱い国のために、ECB(欧州中央銀行)は緩和をやめることができないでいるが、今の金融緩和環境がいつまでも続かないリスクも考慮に入れておくべきだ」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。 <見えない日本企業の「実力」> 株価を大きく構造分解すれば、企業業績とPER(株価収益率)だ。日本全体の景気が悪かろうと企業業績さえ良ければ株高は正当化される。日本企業のガバナンス改善や株主還元への積極的姿勢、ROE(株主資本収益率)の向上も好材料として、海外の長期投資家は日本株を買い続けている。 NNインベストメント・パートナーズ(旧:アイエヌジー投信)のマルチアセットブティック統括責任者のヴァレンタイン・ファン・ニューウェンハウゼン氏は「株価は直接的にはGDPではなく企業業績で決まる。日本企業の利益は伸びているし、日本株のPERはそれほど高いわけではない」と話す。 しかし、日本企業の持続的な増益基調が見えたわけではない。2014年度の平均ドル/円レートは110円程度であり、120円程度の水準が15年度も続けば、10─15%増益程度は期待できる。 しかし、16年度も円安が続くとは限らない。「円安効果を除いて本当に稼ぐ力を付けているかは、企業経営者自身もよくわかっていないようだ」とニッセイ基礎研究所・チーフエコノミストの矢嶋康次氏は指摘する。 日経平均の予想PERはバブル期まではいかないが、歴史的に見てレンジの上限に近い17倍後半まで上昇。増益をかなり織り込んだ水準にある。 また、一段の円安による企業利益の上積みは、期待しにくい状況だ。ドル/円も120円台半ばに上昇してきているものの、高値3月10日に付けた122.40円には及ばない。 さらに07年6月22日に付けた124.14円や02年1月31日に付けた135.20円にはまだ遠い。 米利上げ期待が後退していることもあるが、日本のインフレ期待が一向に強まらないことも、ドル/円の上値を押さえている。2年2%の物価目標に届かないことは日銀の追加緩和期待も高めるものの、「インフレがイメージできず、インフレを前提にしたポジションは組みにくい」(三井住友信託銀行・為替セールスチーム長の細川陽介氏)という。 <「歪み」もみえる日本株> さらに日本株もしくは日経平均にも「歪み」が目立つ。特に「官製相場」といわれるように公的マネーの買いが日本株の需給に大きな影響を与えている。 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2014年12月末時点の国内株式の運用比率は19.80%と、9月末の17.79%から2ポイント上昇。運用資産額と収益額を用いて試算した買い入れ額は3カ月間で約1兆7000億円に上った。日銀も年間3兆円のETF(上場投資信託)買いを予定している。 今年に入っては再び海外勢が買いの主役に戻ってきたが、海外勢も「日銀やGPIFの公的マネーの買いへの期待が大きい」(外資系証券エコノミスト)という。公的マネーを「売らない主体」と目した思惑が相場を歪めている可能性は小さくない。 またTOPIXに対する日経平均の「独走」ぶりも目立つ。日経平均は15年ぶりの水準に達したが、TOPIXはまだ約8年前の水準を回復したにすぎない。 日経平均とTOPIXの比率であるNT倍率.NTIDXは10日、一時12.55倍まで上昇し、昨年2度止められた節目水準を突破し、2013年12月以来の高水準となってきた。当時は過去最高の12.74倍まで上昇したが、その後は、日経平均が約2300円下げる大きな調整が待っていた。 日経平均の大台突破で達成感も出ている。こうした「歪み」の修正には十分注意が必要だろう。 (伊賀大記 編集:田巻一彦) 日経平均が一時15年ぶり2万円乗せ、利益確定で終値は4日ぶり反落 2015年 04月 10日 15:41 JST [東京 10日 ロイター] - 東京株式市場で日経平均は、一時15年ぶりに2万円を回復する場面があった。外部環境の改善に加え、根強い先高観から買いが先行。SQ(特別清算指数)算出に絡む売買が買い越しと観測されたうえ、好決算を発表したファーストリテ(9983.T)の株価上昇も指数を押し上げた。もっとも利益確定売りや週末要因から上値は重く、終値では4日ぶりに反落した。 日経平均の大台回復に対し、甘利明経済再生相は「市場が景気回復を実感し始め、先行き、企業収益の拡大が好循環に影響を与えるとの期待値」の表れだと評価した。日経平均は前日の米株高や円下落を受けて、寄り付き後に一時2万0006円00銭まで上昇。ザラバベースでは2000年4月17日以来となる高値水準を付けた。 市場関係者からも評価する声が相次いだ。緩和マネーに加え、余剰資金を有効活用し始めた国内企業の姿勢変化が株高の原動力という。三井住友アセットマネジメント・シニアストラテジストの市川雅浩氏は「グローバルな過剰流動性と日本企業の姿勢の変化、2つの要素がかみ合ったことが大きい」と述べた。 ロイターが10日午前に実施した日経2万円緊急インタビューでは、年内の日経平均の上値めどとして2万1000円─2万3000円を挙げる声が出ており、日経平均2万円は通過点との見方が多い。 この日はファーストリテが指数を押し上げた側面も強かった。9日に発表した2015年8月期業績見通し(IFRS)の上方修正が評価され、株価は一時4.4%高と年初来高値を更新。1銘柄で日経平均を約46円押し上げた。指数寄与度の大きいソフトバンク(9984.T)や京セラ(6971.T)も堅調だった。 もっとも日経平均が2万円台に乗せていたのは2分程度にとどまり、買い一巡後は利益確定売りが優勢だった。大台回復の達成感などから利益確定売りが優勢だったほか、週末を控え様子見ムードが広がったという。市場では「米金融引き締めが消えたわけではなく、ここからは過度に楽観的にはなりにくい」(大手証券)との慎重な見方もあった。 日本取引所グループによれば、4月限日経平均オプションの最終決済に関わる日経平均のSQ(特別清算指数)値は2万0008円47銭となった。SQ算出に絡む売買は市場推計値で約2900億円となった。 個別銘柄では、イオン(8267.T)が続伸し、連日で年初来高値を更新。9日、2016年2月期の連結営業利益を前年比23.8%増の1750億円とする計画を発表し、材料視された。 半面、ローソン(2651.T)は大幅安。同社は9日、2016年2月期の連結営業利益が前年比0.7%増の710億円になりそうだと発表。13年連続の過去最高となるが、市場予想を下回ることが嫌気された。 東証1部騰落数は、値上がり751銘柄に対し、値下がりが969銘柄、変わらずが159銘柄だった。 日経平均.N225 終値 19907.63 -30.09 寄り付き 19989.55 安値/高値 19845.31─20006 TOPIX.TOPX 終値 1589.54 -4.65 寄り付き 1596.52 安値/高値 1584.33─1596.81 東証出来高(万株) 204579 東証売買代金(億円) 27469.32 (杉山容俊) 日経2万円:一段高には家計の変化が必須=岡三証石黒氏 2015年 04月 10日 12:46 JST [東京 10日 ロイター] - 日経平均.N225が15年ぶりに2万円の大台を回復した背景について、岡三証券・日本株式戦略グループ長の石黒英之氏は、国内企業の姿勢変化があるとの見方を示す。 緩和マネーの流入に加え、余剰資金を有効活用し始めた企業への評価が高まっているという。ただ、更なる長期株価上昇のためには家計に眠る資金の変化が必要と述べた。 10日午前、ロイターのインタビューに答えた。 ──日経平均が2万円を回復した。原動力は。 「足元では企業姿勢の変化が大きい。米利上げ時期の後退など金余り相場という外的要因はあるが、デフレ下で現預金を溜め込んできた日本企業が、ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)による新たな助言方針などをきっかけに、M&A(合併・買収)や設備投資、株主還元、賃上げなど余剰資金を有効に活用する動きを強めている。次の決算では資本効率を重視する企業が増えるとみられ、一段と評価が高まるだろう」 ──今後の株価見通しは。 「年内の日経平均の上値めどは2万3000円とみている。12カ月先の予想PERでみると、米国の18倍、欧州の17倍に比べ、日本は16倍と先進国では最も割安圏にある。需給面では、公的年金に加え、今後はゆうちょやかんぽなどの新たなプレーヤーの台頭も期待され、上昇基調は続く公算が大きい」 「もっとも目先的にはITバブル時の高値2万0800円台が意識されるだろう。時価総額でみても同水準を超えると過去最高を更新する見込みで、めどとなりやすい」 ──長期上昇トレンドが続く条件は。 「眠っている個人マネーの変化だ。2012年には政権が交代、13年に日銀が異次元緩和の導入を決定し、14年には年金の運用改革があった。15年は企業のガバナンス強化がある。来年以降も上昇トレンドを描くためには、890兆円に上る家計の現預金が投資の果実を得るようにならなければならない。そうすれば日経平均3万円も夢ではないだろう」 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0N10GO20150410?sp=true 焦点:中国のインフラ建設ブームが生み出す「無用の長物」 2015年 04月 10日 17:55 JST [大長山島(中国) 10日 ロイター] - 中国北東部の黄海に浮かぶ大長山島。同島の東端に位置する大連長海空港は、2008年に約600万ドルをかけて改修工事が行われ、2010年に4万2000人、2015年には7万8000人の利用客が見込まれていた。
しかし民間航空当局の統計によると、2013年の利用者数は計4000人にも満たなかった。1日にわずか10人程度しか利用していない計算になる。 昨年2月以降、中国政府は景気浮揚策の一環として、少なくとも1兆8000億元(約34兆9300億円)に上る新たなインフラ計画を承認した。しかし、先の財政出動で建てられた空港や高速道路やスタジアムには、十分に使われていないものもあり、その代償が今になって重くのしかかりつつある。 建設ブームで建設会社が利益をあげた一方、地方政府は約3兆ドル(約361兆円)相当の債務を抱えることになり、地方経済の悪化を招いた。 大長山島のある遼寧省は2014年の経済成長率が5.8%となり、目標の9%を大幅に下回り、中国国内で最も成長が減速した省の1つとなった。 中国科学院の陸大道氏は「大規模建設事業の経済的合理性を真剣に議論する必要がある」と指摘。「われわれはここまで多くの高速道路や空港を本当に必要としているのか」と疑問を呈した。 政府当局者とエコノミストによる昨年11月の推計では、2009年以降の5年間で約42兆元が「非効果的な投資」によって無駄となったという。 <飛行機が飛ばない空港> 現代的な大連長海空港だが、定期便の唯一の目的地となる大連周水子国際空港の職員は、過去6カ月間運航を停止していると語った。 大連長海空港の発券カウンターは8日朝、空港職員の女性がいるのを除けば閑散としていた。それでも大理石の床は清掃員によってきれいに磨かれ、トイレも汚れ1つなかった。 女性職員はロイターに対し、飛行機は整備中だとし、「フライトがあるかどうか2─3日電話してみて」と話した。手荷物検査係の男性は居眠りをしているようだった。 この小さな空港が、人口約3万人のこの島に大きな影響を与えているようには見えない。空港周辺には小売店や飲食店ではなく、漁師の家が建ち並ぶ。住民たちは大連市への交通手段は主にフェリーだと話した。 しかし、地元メディアの報道によると大連市は今年、景気刺激策と観光促進策の一環として同空港の拡張に14億8000万元を投じ、2020年までに年間25万人が利用できるようにする計画だという。 大連市長海県の広報担当者は、空港拡張は島の発展に沿ったものであり、昨年には110万人の観光客が当地を訪れたと語った。 2012年から中国のインフラ建設をウオッチしているJキャピタル・リサーチのアナリスト、スザンナ・クローバー氏は「GDPの観点から言えば、これは決して悪いことではない」としたうえで、「ただリソースを効果的に使っているかと言えば、それは明らかに違う」と述べた。 <世界一長い海上橋> 中国の地方政府は大規模なインフラ建設や不動産開発の融資を得る際には、企業を設立する場合が多い。積み上がった債務は現在、中国経済の主要リスクと見られている。 山東省青島市には世界一長い海上橋である青島膠州湾大橋が建てられ、青海チベット高原に高速鉄道が走るようになった。中国の高速道路の利用者数に関する公式な情報はほとんどないが、2013年は通行料不足で多額の損失が出た。世界最長の鉄道網を監督する中国鉄路総公司は昨年9月、3.4兆元の債務を抱えていることを明らかにした。 ただ、当局の過剰な建設熱を鎮めるのは困難だと指摘する声もある。とりわけ、承認済みインフラ計画の約40%が位置する内陸の西部地域で、建設が加速する兆しが表れているからだ。 政府発表のデータによれば、同国で最も貧しい省の2つである貴州省と雲南省などでは、セメント生産がこれまでにない速いペースで拡大しているという。 一方、地方政府が建設ブーム後の鉄鋼とセメントの過剰生産に対処している北部では、「建設し尽くした後で何が起きるか垣間見ることができる」と、前述のJキャピタル・リサーチのクローバー氏は語る。同氏によれば、こうした傾向の初期段階が、現在は他の地域でも見られ始めたという。 (Brenda Goh記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0N10PA20150410
アングル:ドル強気派債券ファンドが方針転換、米利上げ先送りを懸念 2015年 04月 10日 17:15 JST [ボストン 9日 ロイター] - 世界的な債券ファンドのうち幾つかのドル強気派が、ここ数週間で方針を転換した。これらのファンドは米連邦準備理事会(FRB)が利上げを先送りするのではないかとの懸念から、ドル資産比率を縮小しているのだ。
ファンドマネジャーやアナリストによると、方針転換の背景には、弱い米経済指標に加えて、欧州中央銀行(ECB)によるテコ入れで欧州の景気が持ち直してきていることで、12年ぶりの高値をつけたドルの上昇に息切れの気配が漂っていることがある。 グローバル債券ファンドのマネジャーは国ごとの経済パフォーマンスの差に注目している。彼ら自身の成績は各国中央銀行の動き次第ですぐに急変動しかねない。 こうした中でレッグ・メーソンBWグローバル・オポチュニティーズ債券ファンド(GOBSX.O)(資産額39億ドル)のジャック・マッキンタイア氏は、ドルはこれまで米国と他の国の経済格差から多大な恩恵を受けたが、そうした構図が今後も続くとは考えにくいと指摘した。 マッキンタイア氏は、このファンドのドル資産比率を3月初めの43%から通貨ヘッジを外すことで37%まで下げたと説明。「ドルはごく短期間で未曾有の値動きを見せた。ドル高ペースは鈍化していかなければならない。現状は持続不可能だ。極めて大幅に、極めて急速に動いてしまった」と話した。 トムソン・ロイター傘下のリッパーの調査で2014年にドル資産比率を最も高めた10人のファンドマネジャーのうち、4人はロイターに対してそれ以降ポジションを縮小したと答えた。ドル資産比率を高めたのは1人だけで、残る5人はコメントしなかった。 ドル最強気派の一角を占めていたプルデンシャル・グローバル・トータル・リターン・ファンド(資産額3億9800万ドル)(GTRAX.O)は、14年末で58%だったドル資産比率を2月末時点で54%に引き下げた。 運用担当者のマイケル・コリンズ氏は「われわれはドル高について、米国の輸出品を割高にすることから、米国経済にとっての『逆風』とみなしている」と語った。またドルは上値が重くなる気配を示していると分析し、「ドル買いはみんなが殺到する取引なので、いつも少し不安を覚える」と打ち明けた。 プルデンシャルの13年末時点のドル資産比率は27%にすぎなかったという。 そのほかドル資産比率を下げたのは、エリック・ワイスマン氏のMFSグローバル債券ファンド(6億4700万ドル)(MGBAX.O)や、クリストファー・ディアス氏が率いるジャナス・グローバル債券ファンド(3億6100万ドル)(JGBAX.O)。ディアス氏は、米利上げまでこれまで予想されたよりも長い時間をかける可能性があるという「ハト派的」なシグナルがFRBから最近発せられたとの理由で、ドル資産比率を縮小したという。 ジャナスのドル資産比率は14年末の76%が2月末に57%となった。 ファンド・エバリュエーション・グループの調査責任者グレゴリー、ダウリング氏によると、ファンドマネジャー全般の中でも今後ドルが強くなるかどうかの見方はほぼ真っ二つに割れていて、ドル高が続くとの予想が多数派だった数カ月前とは様変わりした。 主要通貨に対するドル指数.DXYの7日終値は14年6月末比で23%上昇し、ドル資産比率が高かったファンドのリターンを押し上げた。ただ、ドル指数は3月半ばにつけた高値からはやや軟化し、3月雇用統計が低調だったことによる痛手も続いている。 それでもモルガン・スタンレー・グローバル・フィクスト・インカム・オポチュニティーズ・ファンド(2億4500万ドル)(DINAX.O) のマイケル・クシュマ氏は、ドルに最も楽観的な1人で、ファンドのドル資産比率を14年末の97%から現在は約99%まで引き上げている。 クシュマ氏は、米国の雇用トレンドの明るさと安いエネルギー価格のおかげで、FRBが来年初めまでに利上げする可能性は依然として大きい半面、他国の中銀による金融緩和の効果が実体経済に浸透するにはまだしばらくかかると主張。「米国以外で良いニュースは依然としてそれほど多くないし、米国内の悪いニュースは一過性だと、われわれは考えている」と述べた。 (Ross Kerber記者) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0N10MW20150410 アングル:中国政府、地方債のデフォルト放置は口だけか 2015年 04月 10日 17:10 JST [上海 10日 ロイター] - 中国政府は地方政府債などのデフォルト(債務不履行)を許し、投資リスクを市場価格に反映させるようにする方針を示した。しかし同時に相反するメッセージも発しているため、投資家はいざとなれば政府が今後も救済に入るとの見方を変えていない。 中国財政省は3月、推計3兆元に上る地方政府の高金利債務のうち、1兆元(1610億ドル)を低金利の地方政府債と交換する計画を発表。中央政府ではなく地方政府が返済責任を負うとした。新たな債券は「市場原則に基づき」発行されると財政省は強調した。 しかし当局は4月1日、全国社会保障基金(NSSF)の投資範囲を拡大し、地方政府債を購入できるようにする方針も示した。 国際通貨基金(IMF)のショーン・ローシュ香港常駐代表はNSSFの新方針について、地方政府債の購入層を広げ、利回りが上昇し過ぎないよう抑えるのが狙いの一部かもしれない、と見ている。同時にこれで、地方政府のデフォルトが放置される可能性が低下するともローシュ氏は指摘する。デフォルトすればNSSFに預けた納税者の資金が吹き飛ぶからだ。 厳しく管理された中国の債券市場において、社債発行を許可された企業の大半は何らかの形で国の支援を受けている。このためNSSFによる購入のニュースに反応して社債利回りは急低下した。格付けが「AA」と「AAA」の社債利回りは15ベーシス(bp)前後の低下と、2014年11月のサプライズ利下げ以来で最も大きく下げた。 7日には、投資家がデフォルトを恐れていないことを示す出来事がさらに加わった。インターネット企業、中科雲網科技集団(クラウド・ライブ・テクノロジー・グループ)がデフォルトに陥ったが、社債利回りがほとんど動かなかったのだ。これは1年前、上海超日太陽能科技がデフォルトを起こし、社債利回りが急上昇したのとは対照的だ。 同社は数カ月後に地方当局の支えで救済された。中国の金融システムがこれほど小さな企業の破綻さえ受け止められないのなら、地方政府やその関連企業の破綻が見過ごされるはずはない、と投資家は結論付けた。 NSSFによる地方政府債の購入許可というニュースが、この結論をさらに強固なものとした。 ある主要なベンチャーファンドの投資マネジャーは「政府はこれら地方政府と関連企業の債務を保証すると正式に認めた。クレジットリスクの分析という見地からすると、これは良くないことだ」と話す。 <ソブリン債と同等> その上、金融市場では中国の地方政府債がソブリン債と実質的に同等に扱われている。 債券清算会社がまとめた地方債指数の利回りは、期間5年のソブリン債(利回り3.5%)を10bp上回るにとどまっている。高格付けの商業債務の利回りが5%程度なのに比べ、はるかに低い。 政府は地方政府が債務返済の責任を負うと表明したが、これは地方政府が返済に窮するずっと前に中央政府が財政移転その他の方法で介入するという事実を覆い隠している、と専門家は指摘する。 これで地方政府債はデフォルトを起こしにくくなるだろうが、代わりに中央政府が損失を負うことになる。 これは中国ソブリン債の利回りを押し上げかねない。事実、地方政府の債務交換が発表されて以来、ソブリン債利回りは約15bp上昇した。 UBSの債券アナリスト、シー・チェン氏は8日のリポートに、「(地方政府債の)供給ショックにより国債利回りは極端なケースでは50─100bp上昇する可能性があるとみている」と記した。もっともデフレ圧力と景気減速の影響が利回りの上昇を抑えそうだという。 (Nathaniel Taplin記者) http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0N10MM20150410 |