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武田薬品に異変 なぜ業界の盟主は陥落?6年で利益8割減、成果出ない大型M&A
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150410-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 4月10日(金)6時1分配信
創業が1781年の製薬業界の盟主、武田薬品工業と、2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して発足したアステラス製薬の業績が明暗を分けている。アステラスは合併から10年、15年3月期の純利益で武田薬品を初めて上回る。
武田の15年3月期連結純利益(国際会計基準)は、前期比39%減の650億円になる見通し。従来予想を200億円下方修正した。海外で血液がん治療薬「ベルケイド」などが伸びるが、研究開発費の税務上の処理方法を見直したため、税負担が増す。武田の売上収益(売上高に相当)は2%増の1兆7250億円を据え置いた。米国で昨年発売した潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」などの新薬が好調で、主力薬の特許切れで不振の国内を海外が補う。
対するアステラスの15年3月期連結コア純利益(国際会計基準)は、前期比16%増の1540億円を見込む。売上収益は6%増の1兆2100億円の見通し。米国で前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の売り上げが2.6倍となるなど新薬の販売が伸び、後発薬の普及で減収となった国内を補った。コア利益とは無形資産の減損などを考慮しない利益を指し、減損がなければそのまま純利益となる【編註1】。
武田の純利益とアステラスのコア純利益を単純比較することはできないが、14年4〜12月期の連結純利益は武田が前年同期比40%減の794億円。一方、アステラスは37%増の1147億円と、この時点でアステラスが初めて武田を上回った。15年3月期の業績は武田が下方修正したのに対して、アステラスが上振れを予想しており、アステラスが武田を突き放すのは確実だ。
昨年10月、アステラスの時価総額が武田を逆転したと話題になった。その後、武田が再逆転したが、15年3月期の純利益でアステラスが武田に大差をつければ、再々逆転があるかもしれない。
●明暗を分けた海外M&A
リーマンショック直前の08年3月期連結純利益(当時は日本基準)は、武田が3554億円、アステラスは1774億円と2倍の差があった。15年3月期の純利益はアステラスが08年3月期の過去最高益に迫る勢いなのに対して、武田のそれは08年3月期実績の2割弱にとどまる見通しだ。8割目減りしたことになる。
両社の明暗を分けたのは海外M&Aだ。武田は08年に米ミレニアム・ファーマシューティカルズを約9000億円で買収。ミレニアムが生み出す薬をがん領域の中核と位置付け、がん領域で世界トップスリーを目指すとした。武田は11年にもスイスの製薬会社ナイコメッドを約1兆1000億円で買収した。
大型買収が相次いだのは、糖尿病治療薬「アクトス」や高血圧治療薬「ブロプレス」などの大型薬が11年以降、特許切れを迎えるためだった。だが、期待した大型新薬はこれまでのところ出ていない。
一方のアステラスはがん領域に特化したM&A戦略を採った。09年、米製薬ベンチャーから前立腺がん治療薬「イクスタンジ」の開発・販売権を、まず約100億円で獲得。続く10年に抗がん剤に強い米OSIファーマシューティカルズを約3700億円で買収した。イクスタンジは12年に米国で発売。15年3月期は同治療薬が欧米で伸び、収益が急拡大した。M&Aの成果の違いが両社の収益力の差になって表れ、最終利益の大逆転につながった。
(文=編集部)
【編註1】コア利益
営業利益から無形資産の減損など一時的要因を除いたビジネスベースの利益を指す。決算短信などで開示する正式な利益項目ではないが、本業の成績を表す経営指標として、国際会計基準(IFRS)を導入した企業が開示を始めた。IFRSには特別利益という項目がなく、一時的な損益も営業利益に反映する。営業利益が本業の利益の実態を映しづらくなるため、コア利益の開示によって企業の生きた姿を投資家に伝えるという狙いがある。営業利益から企業買収によって発生するのれん代など、無形資産の減損した部分を削除する。
編集部
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