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日本が外国人労働者に見捨てられる日 ――丹野清人・首都大学東京 都市教養学部教授に聞く(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/15/hasan95/msg/235.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 4 月 10 日 00:13:15: igsppGRN/E9PQ
 

日本が外国人労働者に見捨てられる日――丹野清人・首都大学東京 都市教養学部教授に聞く
http://diamond.jp/articles/-/69904
2015年4月10日 ダイヤモンド・オンライン編集部


安く使え、必要なくなれば切り離せばいいという発想で企業に受け入れられてきた外国人労働者。しかし、日本を取り巻く環境は様変わりし、これまでのような安直な発想では、いずれ外国人労働者から見向きされない国になってしまうかもしれない。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)


■日系人に代わって増える技能実習生 名目ばかりの「国際貢献」の弊害とは



かつて、日本の自動車産業を支えていた日系人は今や半分以下に。日本は外国人労働者にとって、本当に行きたくなる国なのか?
Photo:ndoeljindoel-Fotolia.com


――人口減少が本格化してくるなか、外国人労働者を受け入れて労働力を確保しようという動きが再び活発化しています。バブル期や2000年代のミニバブル時など、外国人労働者は長らく、雇用の調整弁としての役割を期待されてきました。


 まず、明確にしておかなければならないのは、日本はまだ「外国人労働者を受け入れていない」というスタンスを崩していないということです。しかし、現実に彼らは存在している。

 どういうことなのかというと、まずは日系人に関しては、1990年の入国管理法改正を契機として、ブラジルを中心に、ペルーやアルゼンチンといった国から、大勢やってきました。彼らの多くが業務請負の、いわゆる派遣労働者として、自動車産業などを支えてきた。しかし、入管法改正は、あくまでも「定住者として認める」というスタンスで、「外国人の労働を認めます」とは言っていない。ただ、「定住するのだから、働くのも当然アリでしょう」というような、いわば黙認のかたちを取ったのです。



たんの・きよと
1966年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科社会問題社会政策専攻博士課程単位習得退学。日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、東京都立大学人文学部社会学科講師に就任。東京都立大学の首都大学東京への改組転換により、現在は首都大学東京の都市教養学部教授。


 2008年のリーマンショック後、大量の派遣切りが行われ、多くの日系人が母国へ帰りました。ブラジル人については、08年には約32万人が日本にいたのに、昨年末は18万人弱に減りました。激減した日系人に代わって増えているのが、技能実習生です。


 彼らは3年間、単身で日本にやってきて、指定された対象業務(農業、漁業、建設業など71職種130作業)に従事します。日系人と違って定住はできず、同じ業務での再入国も認められていません。最近、3年を5年に延長することなどが閣議決定され、人手不足解消に役立つのではないかと期待されていますが、そもそも、この「技能実習制度」というのは、「国際貢献」という名目なのです。


 つまり、日本の技術を実習生たちに教えて、自国で活躍してもらおうというのが、本来の趣旨なのです。にもかかわらず、いつの間にか人手不足解消のためといって、実習制度が濫用されている。これは、実習生たちにとってのみならず、実は日本企業にとっても深刻な弊害があるのです。


――どういうことでしょうか?


 たとえば、造船業界は今や、韓国や中国と熾烈な競争をしていますよね。これは、日本で技術を学んだ人たちが、自国の造船業を発展させたからなのです。米国のように、製造業を捨てて金融に力を入れる、というような流れになっているのならまだしも、日本はいまだに製造業で外貨を稼いでいる。人手不足だといって安易に実習生に頼れば、あちこちで造船業界のようなことが起きるのです。


 また、企業からすれば、同じ仕事を3年かけて教えて送り出し、次に来た人に、またイチから教えなければならない。これは非常に効率の悪いことなのではないでしょうか。


 本来、技能実習生は短期的に活用すべきものだと思います。しかし現状は、ある労働組合の幹部が言っていましたが「頼りすぎてやめられない、麻薬のようなもの」となってしまっています。今、三大都市圏の野菜のほとんどは、中国人実習生が収穫しています。彼らがいっせいに日本からいなくなれば、われわれは明日から弁当も食べられないのです。


 さらに、実習生たちは現行制度なら3年、延長されても5年で帰国しますし、家族も伴わない単身勤務です。つまり、労働力としては一定の機能をしますが、日本の人口は増えない。人口減少に対応したいのなら、日系人型、つまり移民受け入れ型の政策を考えていかなければなりません。


■外国人労働者を捨てた日本が逆に見捨てられる日がくる


――実習生たちにとっても、劣悪な環境で働かされることが問題になっていますよね。


 劣悪な労働環境がしばしば社会問題となってきました。しかし、多くの日本人は「それでも彼らは自国で働くよりは、日本に来て外貨を稼ぎたいのだ」と理解しているのではないでしょうか。以前はその通りでした。しかし現在、状況は急速に変わり始めています。


 技能実習生の国籍トップ3は中国、ベトナム、インドネシア。次にフィリピン、タイと続きますが、いずれも急速に経済発展を遂げています。80年代なら、日本との賃金格差は30倍にも及びましたが、今はせいぜい10倍程度でしょう。それに加えて、昨年から急速に円安が進みました。日本で得られる仕事は、最低賃金レベルのものばかりですから、彼らにとって賃金面の魅力は色あせてきているのです。


 加えて、イメージも落ちてきています。かつて、日本メーカーの家電製品や自動車がアジア各国でナンバーワンブランドとして君臨していた時代は、日本に憧れる人が大勢いました。「夢の国・日本で、一度でいいから働きたい」と思ってもらえていたのです。しかし、今では日立や東芝は家電製品を縮小して重電分野に経営資源を特化し、代わりにサムスンやLGがアジアで活躍する時代となりました。“日本ブランド”の力も急速に衰えているのです。


 憧れも抱けず、カネも稼げないのなら、見向きされるはずもありません。日本人の多くは「外国人をこき使い、いらなくなったら見捨ててきた」と考えているでしょうが、実は、「われわれが外国人労働者から見捨てられる」時代がすぐそこまで来ているのです。


■受け入れ制度の充実度で日本の先を行く韓国と台湾


――同じく少子化が進んでいる韓国や台湾も、外国人労働者の受け入れに力を入れています。


 技能実習制度は、人集め、いわゆるリクルーティングは現地の民間企業や政府系機関が担っており、来日後しか日本政府はタッチしません。一方、介護職は技能実習制度ではなく、2国間協定のEPAによって実施されているので、日本政府がリクルーティングにもからめます。


 韓国や台湾は、日本でいうところの介護職の方式、つまり政府がリクルーティングに関与する方式で進めています。こちらの方が、労働者にかかる負担は少なくて済みます。というのも、現地でのリクルーティングにかかる費用は結局、労働者が負担することになる。民間企業などがあいだに入ると、その分イニシャルコストが跳ね上がるのです。また、滞在できる年数が日本より長いことも、労働者からすれば魅力でしょう。


 もっとも、政府が直接関与する方式は、現地との調整もあり、簡単にできるものではありません。韓国のケースでも、時間をかけてここまでの体制を作ったのです。いずれにしても、かつては圧倒的魅力を誇っていた日本ですが、現在は韓国や台湾に競り負ける状況になりつつあるということです。


■人材使い捨ての業界にはいずれ外国人すら来なくなる


――日本は技能実習制度を改めるべきなのでしょうか?


 人口減少への対応という観点からは、やはり移民型を議論すべき時にきていると思います。ただ、労働力確保といった特定の問題解決ばかりにフォーカスすると、対応を誤るでしょう。


 これだけグローバル化が進んでいるなか、人を「人的資源」と考え、人が移動をした際、その人も受け入れた社会も双方がトクをする、という体制を考えなければならない。ここをおざなりにすると、必ず失敗します。誰も、子育てもロクにできないような国には、行きたくないでしょう。これまでのような「使い捨て」の発想ではダメです。


 たとえば現在、人手不足が厳しい業種の1つに建設業界があります。建設業界は、ゼネコンをトップに重層下請け構造となっており、下請けの労働者たちは社会保険すら入れていない人が大勢いる、というような状況がいまだに続いている。これでは外国人労働者うんぬん以前の問題で、業界構造そのものがおかしいと言わざるを得ない。短期的には外国人が来てくれても、しばらくすると誰も来なくなった、という事態になっても不思議ではありません。


 もちろん使い捨ては論外なのですが、だからと言って、いきなり戸籍まで与えろというのではなく、共存できる体制をつくることを念頭に、「どこまで外国人に依存するのか」「どの程度、受け入れるのか」を議論すべきなのです。


 そもそも、日系人にしても実習生にしても、「労働者を受け入れたわけではない」という建前がいまだに存在していること自体がおかしいですよね。実際に受け入れているのですから、どう受け入れるべきかという視点でこそ、真剣に議論されなければなりません。



 

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