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中国主導のアジアインフラ投資銀行は成功するのか。日本は浮き足立ってはいけない(写真は2014年10月、代表撮影/ロイター/アフロ)
中国主導のインフラ銀行に無理に参加するな 「バスに乗り遅れるな」は、本当に正しいのか
http://toyokeizai.net/articles/-/65582
2015年04月08日 中村 繁夫 :アドバンストマテリアルジャパン代表取締役社長 東洋経済
中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への日本の参加をめぐって、議論がかまびすしい。3月末で創設メンバーとなるための申請は締め切られ、6月末が参加の最終期限の見通しだが、ここへ来て欧州諸国や豪州が参加を表明したため、「中国の外交の勝利だ」「日本はいったいどうするんだ」などと浮足立った反応も目立つ。今回は、レアメタルビジネスで中国と渡り合ってきた国際ビジネスマンの立場から、ひとこと言わせていただきたい。
■中国は本当に「公正な運営」ができるのか
AIIBは、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)に、中国が対抗して創設する金融機関だ。中国が今回、「世界のルール」をわざと無視して、金融分野での「支配」を強化しようとしているのかどうかは不明だが、私に言わせれば、AIIBについては、「中国的な運用」をしていれば、いずれ行き詰まることが予見される。
現在、日本と中国は、この6月、約3年2か月ぶりに開かれるとされる日中財務対話の中でAIIBについても話し合うとされている。
その前に日米首脳会談もある。だが、もしAIIBに日本が出資したとして、運用に際して何の権利もなく責任と義務だけを押しつけられるのなら、日本は無理をせず「外部から見ているだけ」の方が賢明だ。国連の安全保障理事会で日本が常任理事国でないことと少し似ているが、あまり無理する必要はないと私は考える。
では、なぜ「無理はしない方がいい」と言えるのだろうか。ひとことで言うと、私は、レアメタル市場を通じて中国の政策や外交面での傲慢な対応を見てきたからだ。断っておくが、私は30年余にわたり「中国ビジネス」をしているわけで、中国の良いところも悪いところも、それなりに知っているつもりだ。
そのうえで言わせてもらうと、中国の「無定見」な進め方や、その方法論のメカニズムについて、日本だけでなく、他の世界もまだまだ理解できていない。そのことに、私は常々危惧を感じてきた。この連載でも、「中国バブル崩壊は、レアメタル暴落が引き金に?」などで、折に触れて指摘してきたところだ。
私は金融の専門家ではないので、深くは立ち入らないが、そもそも中国の金融システムは進化してきているとはいっても、まだまだ未熟で国際的金融システムのレベルに達しているとはお世辞にも言えない。金利の完全自由化さえ、まだの国である。本当に単独でAIIBの運営ができるか、といったら、かなり無理があると考えるのが自然ではないか。そもそも国際インフラ投資に関わる金融機関は、世界銀行と、欧州復興開発銀行、そしてアジア開発銀行(ADB)があれば、わざわざ今回のようなアジアインフラ投資銀行がなくても、困るらないだろうと私は見ている。
■いざ銀行が動きはじめたら、傍若無人になる?
私は一連の「AIIBのドタバタ劇」をみていて、レアメタルの中国雲南省にある「泛亜(ファンヤ)有色金属取引所」の運用の失敗と同様になるのではないか、と危惧している。
専門的な話は割愛するが、中国はレアメタル市場の国際ルールを無視して雲南省の同市場を利用して、レアメタルの国際価格を支配しようとした。結果は、インジウムというレアメタルが大暴落し、国際市場は大混乱に陥った。
確かに、中国はレアメタル大国で32種類ものレアメタル元素で最大の生産を誇る。だが、市場の価格は、正常な需給バランスで決定されるべきである。それなのに、中国では、政府が市場に介入したりするのは日常的であるため、市場に秩序を求めるのは不可能と言っても過言ではない。
暴落にみまわれたくだんの雲南省のレアメタル市場は現在閉鎖している。だが、何と新たに福建省の廈門に、似たようなレアメタル市場を開設するというニュースが入ってきて、海外は唖然としている。わかりやすく言うと、投機や価格操作がうまく行かなければ、場所を変え、ローカルルールも変えて、別の賭場を開帳するような話である。
この無秩序ぶりは、中国独特の論理である。彼らは「悪意はない」、とうそぶいている。もちろん、いま挙げた「商品市場の話」と、今回のAIIBの運営とは別ものである。だが、中国は、時として自分勝手で「国際的ルール」に馴染まないことを押し付けてくるということを私はいいたいのだ。そのことをあらかじめ理解しておかないと、大変なことになる。WTO違反がその良い例であるが、中国のルール違反は、全て確信犯であるから、タチが悪いのである。
今回のAIIBの設立にあたっては、アメリカでも賛否両論あるようだ。だが、アメリカは世界の秩序を中国にかき混ぜられたくないから、基本的にはAIIBの運営について快く思うはずはない。
では、世界のGDPの1位のアメリカと2位の中国が潜在的に敵対している場合、GDP第3位のわれわれ日本としては、どうすればいいのか。
簡単に言ってしまえば、日本は「漁夫の利」作戦で臨むことが賢い選択であると言いたい。仮に米国不在のままでAIIBがスタートした場合、中国は出資比率の多さから、好き放題に近い状況で運営をしていく可能性がある。
■なぜ「アメリカに貸しを作った」と考えられないのか
ここに中途半端に日本がコミットすればどうなるだろうか。なまじ「日本はGDP世界の3位だから」と、責任と義務だけは押しつけられる構造になりがちだ。そもそも、融資案件についても明確なルールがないとされているところで、正式な手続きも経ずに、中国主導で勝手に決めるならAIIBの運用面では必ず問題が出てくるだろう。
もちろん、今後アメリカが何らかの形で動き出すのなら、アメリカと共同歩調をとることはありうる。だが、アメリカ不在のままAIIBが動きだしても、AIIBの債券の格付けがトリプルAをとれるのかは疑問だ。もし万一とれないのなら、ADBの競争力が優先され、「支配力」を維持することになり、AIIBの意味は著しく減殺されそうだ。従来と同様、日本とアメリカの主導でプロジェクトが進むことが予見される。
なるほど、欧州各国やロシア、韓国など50カ国以上が参加することにはなったかもしれない。だが、実は日本が孤立しているのではなく、日本がはいらなければ機能しないと考えるべきである。なぜだろうか。日本が参加しないと本当に困るのは中国である。資金調達を自国中心にしなくてはならないどころか、最終的には中国だけが不良債権処理に苦しむことになりかねないからだ。
そもそも、今回の場合、今から遅れてAIIBに参加しても日本の立場は発起人でもないから、立場は弱い。ましてや呉越同舟のままその他大勢に組み入れられるわけだから、経済的合理性は霞んでしまうことになる。今回はアメリカと共同歩調をとっているのだから、むしろこの点をどうしていかせないのか、私のようなビジネスマンには不思議に思えてならない。日本では、何かと言えば、アメリカの言われる通りに従わされているという意見が幅を利かせているわけだが、そうではないだろう。今回に限っては、逆にアメリカに追従したと考えずに、「アメリカに貸しを作った」と考えるべきだ。
世界の経済はアジア圏(中国やASEANなど)が主導して行く中で、アメリカの影響力は相対的に薄れている。アメリカが欧州などと共同で現在ロシアに経済制裁をしているのは、中国が力をつけて、その上ロシアも力をつけてくることに焦りを感じているからだと私は考える。
ウクライナをけしかけて紛争状態にしてもメリットはないが、クリミア問題を持ち出してロシアを孤立させようと考えるのはアメリカが焦っている証拠ではないか。いずれにしても、今後は世界のバランスが政治的にも経済的にも不安定になる可能性が極めて高い。
■下手に中国が動けば、大損をしかねない
日本は、中国とアメリカとロシアの闘いを冷静な立場で観察し、今は下手に動かないことが、が一番良いのではないかと考える次第だ。現在のところ、麻生太郎財務相も「公平なガバナンスの確保を(言い訳に態度を)留保すべきとの見解を表明しているが、これは国益に資すると考える。
ましてや日本からの問題提起を無視している中国の態度を見直させるためにも、今は下手に動かないのが最良の策ではないか。
日本と米国が主導するADBは67カ国が加盟している。一方、AIIBは今や50カ国以上が参加を表明している。日本としては、ADBがあるのだから、何もAIIBを積極的に後押しする必要もない。通常の国際金融機関のルールを理解できているかどうか怪しい中国にはくみせず、アメリカとの議論を戦わせれば良いだけの話である。
もう一度最後に繰り返すが、中国は不安定であることが当たり前なので、今回のAIIBのよう取り組みは、先進国には馴染まない。しかも、市場経済と社会主義経済は矛盾しているはずだが、中国では「良い所取り」である。下手に中国が動くと、今度はそのツケは中国国内だけには止まらないということになる。
最も怖いのは、AIIBの運用に関して、中国のトップが政治的な枠組みをもってインフラ投資に口出しをし始めた時である。国際ルールが適用されるか不透明なまま、なし崩しに採算度外視で融資が決定されたらどうなるのか。
金融のプロに言わせれば現在の中国は約4兆ドル(約480兆円)の外貨準備があるとされるが、5年後には2兆ドル(約240兆円)の外貨が流出するとの予測さえあるくらいだ。今のままなら、単独ではAIIBの運営などできないと考えるほうが自然ではないか。
とすると、結局は中国の外貨の流出リスクを補完してくれる国家は、アジアでは日本以外にはないと言っても過言ではないから、中国は今後も日本の加盟をあの手この手で求めてくることは確実だと私は思う。AIIBについては、引き続き今後の中国の出方を注目して行きたい。
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