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「上野泰也のエコノミック・ソナー」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20150403/279579/?ST=top
ニューヨーク市や証券市場の景況に「バブルの兆候」
2015年4月7日(火) 上野 泰也
米国で住宅バブルが崩壊したことにより世界経済が被った痛手を、株価など別のバブルが膨らむのを容認することで癒そうとするかのような金融緩和を、先進各国の中央銀行が維持・強化している。
米国では主要株価指数が最高値圏で推移しており、1999〜2000年頃の「IT(情報技術)バブル」局面で主役を務めたナスダック総合指数が5000を突破し、当時記録した史上最高値に迫る場面もあった。
ウォール街がある米ニューヨーク市の経済は、金融業の盛衰によって大きな影響を受ける。株価の上昇が進んでバブルの域に達すれば、金融業以外の業種を含め、同市の経済はかなりの活況を呈することになる。
ニューヨーク地区連邦準備銀行(NY連銀)は、管轄する地区内の経済の現況を示す指標を定期的に公表しており、ニューヨーク州とニュージャージー州の指数に加えて、ニューヨーク市のみを対象にした指数もある。雇用、実質賃金、失業率、製造業における週平均労働時間に関するデータから作成された合成指標が「CEI指数(Indexes of Coincident Economic Indicators)」であり、NY連銀のホームページ上で今年1月分までが公表されている。
NY市のCEI指数は右肩上がり
ニューヨーク市のCEI指数は、基調としては右肩上がりで推移してきている(指数の上昇は景気拡大、低下は景気収縮を示す)<図1>。
■図1:ニューヨーク市のCEI指数
(出所)米ニューヨーク連銀
しかし、これをただ眺めるだけでは工夫が足りず、ほとんど何も分からないので、前年同月比を作図してみよう<図2>。すると、米国で何らかのバブルが発生していた時期(上記の「ITバブル」局面と2004〜07年頃の住宅バブル局面)に、ニューヨーク市のCEI指数が前年同月比プラス幅を拡大していたことが分かる。
■図2:同上 前年同月比
(出所)米ニューヨーク連銀資料より筆者作成
そして足元でも、2009年春から約6年の長きにわたり株価上昇局面が続いてきた中で、前年同月比プラス幅はかなり大きくなっている。今年1月分は前年同月比+6.5%で、住宅バブル局面のピークを既に上回っている。
では、やはり株価が高値圏で推移している日本の状況はどうだろうか。
ニューヨーク市のCEI指数に相当する地域経済の現況を示す指標が見当たらないことから、ここではやむなく、日銀が四半期ごとに発表している企業短期経済観測調査(日銀短観)に含まれている金融機関の業種別DI(ディフュージョンインデックス)の中から、証券会社を中心とする「金融商品取引業」の業況判断DI(回答比率「良い」−「悪い」)を取り上げたい(過去データは04年3月調査以降のみ入手可能)。それがバブルと見なし得るかどうかはともかく、株価が上昇を続ければ、「金融商品取引業」の景況感は顕著に改善する可能性が高い。
これまでの「金融商品取引業」の業況判断DIの推移を見ると、「アベノミクス」相場を背景に2013年3月調査で+60に急上昇した後、株価が調整する中で2014年6月調査では+14まで低下していた。
だが、昨年10月末に日銀が追加緩和に踏み切ったことを主因に株高・円安が再度進むと、昨年12月調査で大幅に上昇して+50を上回った。さらに、4月1日に発表された今年3月調査では、調査対象見直し後の新ベースで+55になった。先行きについてのDI(6月予測)は+61である<図3>。
■図3:日銀短観 金融機関の業況判断DI「金融商品取引業」
注:15年3月調査は調査対象見直し後の新ベース
(出所)日銀
さらに、実体経済の状況と株価などマーケットの動向にギャップが生じてそれが拡大しているかどうかを探るため、同じ日銀短観の中から全規模合計・全産業の業況判断DI(金融機関は調査対象に含まれていない)を取り出した上で、「金融商品取引業」の同DIとのかい離幅を作図した。
実感なきバブルの兆候
すると、「アベノミクス」が開始された後である13年3月調査以降の日銀短観では、「金融商品取引業」の業況判断DIから全規模合計・全産業のそれを差し引いた数値は一貫してプラス圏で推移している。今年3月調査では+48になり、プラス幅は一層拡大した<図4>。
■図4:日銀短観 業況判断DI 「金融商品取引業」から全規模合計・全産業を差し引いた数値
注:2015年3月調査は調査対象見直し後の新ベース
(出所)日銀資料より筆者作成
マスコミが実施した世論調査の結果を見ると、景気回復の実感が「ない」という有権者が依然として多数派であることが確認される。例えば、読売新聞の調査(3月6日〜8日実施)では、「安倍内閣のもとで、景気の回復を、実感していますか、実感していませんか」という質問に対し、「実感している」と回答したのはわずか16%で、79%が「実感していない」と回答した。
多くの国民や地方・中小企業が景気回復においていわば「置き去り」にされている中で、株価の先高観ばかりが広がっている現在の状況は、バランスがとれた望ましいものだとは決して言えないだろう。
このコラムについて
上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
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