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商社・造船・プラントを襲う巨額損失ショック
http://diamond.jp/articles/-/69639
2015年4月7日 週刊ダイヤモンド編集部
日本を代表する重厚長大産業──、商社、造船、プラント業界の大手企業が経営危機にひんしている。原油価格の暴落に端を発する資源リスクと、ブラジルの政治リスクに晒されているからだ。忍び寄る巨額損失ショックに迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子、須賀彩子、千本木啓文)
商社に「冬の時代」が再来するのか──。3月25日、住友商事は2015年3月期の連結最終損益を下方修正し、従来の黒字見通しから一転、850億円の最終赤字となる見込みだと発表した。
昨年9月に約2400億円の減損損失の計上を発表したばかりだったが、足元の原油・鉄鉱石の資源価格の落ち込みが響き、通期で総額3250億円に上る巨額減損の計上を迫られた。
最終赤字に陥るのは、1999年3月期以来のことだ。当時、バブル崩壊後の不良債権処理と、トレードの仲介手数料で稼ぐ“口銭商売”の先細りというダブルパンチに見舞われ、商社は冬の時代を迎えていた。そして今、16年ぶりの経営危機に直面している。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、「リスクアセットと株主資本のバランスが悪化した」として、住友商事の長期会社格付けをシングルAからシングルAマイナスに引き下げた。
減損の大半を占めるのが、米テキサス州パーミアン・ベースンでのシェールオイル開発プロジェクトだ。12年に投資を決断したものだが、オイルの抽出が難しいことが判明した。当時の原油先物価格(WTI)は1バレル90ドルを超えていたが、その後の原油価格の暴落により傷口は大きく広がった。
この背景には、「三菱商事、三井物産に出遅れた資源投資への焦りから、高値つかみをした」(商社幹部)こともありそうだ。パーミアンの案件は総投資額1900億円に対して、減損計上額は1700億円。加えて、同じプロジェクトの別鉱区でも追加減損300億円が発生し、総額2000億円もの減損を計上することになった。
さらに、ブラジルの鉄鉱石事業でも、9月時点では500億円を見込んでいた減損額が650億円に膨らむ見通しとなった。
これまで住友商事は、総資産における資源権益の割合を2割にする目標を掲げていたが、「当面、資源分野に関しては、既存案件の収益向上に注力する。資源への投資は10%に抑えたい」(中村邦晴社長)と、事実上、新規案件への投資を凍結する方針を示した。
■注目は物産の減損規模
ライバル商社とて、対岸の火事ではいられない。すでに、丸紅は北海の原油・ガス開発プロジェクトなど総額1200億円(税効果後)もの減損を計上したし、三井物産、三菱商事、伊藤忠商事の3商社についても、「15年3月期までに追加の減損処理がなされる」(アナリスト)とみられている。
中でも、株式市場が最も懸念しているのが、三井物産の減損規模であろう。すでに、前期第3四半期に米シェールオイル開発プロジェクトなどで530億円の減損(税効果後)を計上し、15年3月期の業績見通しを3800億円から3200億円へ下方修正したが、「追加の減損発生は確実視されている」(商社幹部)。
まず、チリのカセロネス銅鉱山プロジェクトでは、共同出資者のJXホールディングスと三井金属が減損計上を発表しており、三井物産も前期第4四半期で減損計上することが見込まれる。
それに加えて、三井物産の実態は、14年3月期時点で当期純利益4222億円のうち8割強を資源で稼ぐ“資源会社”。あるアナリストは、「評価減が必要な資源権益を多数保有していることから、減損総額が1000億円規模に及ぶリスクも否定はできない」と、悲観的な見立てをしている。
三菱商事と伊藤忠に関しては、複数のアナリストが、「15年3月期の当期純利益の見通し(4000億円、3000億円)を死守する前提で、減損処理を行う」と推測している。
どういうことか。三菱商事には、過去に減損処理したローソン株式の戻し益600億円が、伊藤忠には、中国の食品会社・頂新への出資を直接投資に切り替えるのに伴う再評価益600億円が発生する。この金額の範囲内で資源関連の減損を吐き出してしまうのではないか、とみられているのだ。
■IHIは建造作業を中断
いずれにせよ、空前の資源投資ブームが終焉し、五大商社は試練の時を迎えている。
巨額損失の危機に直面しているのは、資源リスクにおびえる商社だけではない。造船、プラント業界には、ブラジルリスクが頭をもたげつつある。国営石油会社ペトロブラスをめぐる汚職疑惑の余波を受けて、ブラジルの造船会社に出資した日系企業が、巨額損失を被る危機にひんしているのだ。
日系連合は3陣営ある。(1)IHI、日揮、ジャパン・マリン・ユナイテッドのグループ、(2)三菱重工業、今治造船、名村造船所などのグループ、(3)川崎重工業──だ。いずれも、海底資源を掘削するためのドリルシップ(掘削船)の発注者からの支払いが滞るなどの被害が出始めている。
この汚職疑惑では、ペトロブラスがドリルシップなどをまとめて発注していた投資会社、セッチ・ブラジルが贈収賄の舞台となったとみられている。当局の捜査を受けているセッチ・ブラジルは、融資を止められ資金難に陥っている。その結果、造船所への支払いが遅れている。日系3陣営はいずれも、このセッチ・ブラジルを通じて受注していた。
いち早く、対応に着手したのがIHIだ。IHIはアトランチコスル造船所に60億円を出資しており、同時に造船所に対して220億円の債務保証を行っている。同造船所が破綻した場合、出資金と保証債務の一部を失う可能性がある。IHI愛知工場では、ドリルシップの居住区と船殻ブロックの建造作業をほぼ中断した。
川崎重工は、ブラジルの造船会社エンセアーダ・インダストリア・ナバルの資本金2億5300万レアル(約95億円)の30%を出資。エンセアーダは、造船所を建設中だったが、ドリルシップ6隻、FPSO(海洋上で石油やガスを生産・貯蔵する浮体式施設)4隻などを受注していた。造船所の稼働が延期されたり、入金が遅れたりしており、「今年6月には、霧が晴れるのではないか」(村上彰男・川崎重工常務)というが、事態は予断を許さない。
プラント大手の東洋エンジニアリングは3月25日、持分法適用会社でブラジルのTSパーティシパソエスの子会社によるFPSO建造の遅れなどから、170億円の損失が発生する可能性があると発表した。同子会社が持つFPSOなどの建造施設、固定資産額180億円も、受注減の見通しを踏まえて減損処理を行う可能性があるという。
日本の重厚長大産業を襲った資源リスクとブラジルリスク。巨額損失の連鎖が続いている。
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