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異次元の緩和をボードで説明する黒田総裁 photo Getty Images
黒田日銀、異次元の緩和から2年、「2倍、2%」 を批判する前に、もっと勉強しないといけない左派新聞、左派文化人たちに告ぐ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42775
2015年04月06日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」
2年前の4月4日、黒田日銀総裁は、2年で2倍、2%を目指す異次元緩和を行った。
■左派系3新聞の社説がそっくり
この2年間の評価について、4月4日には左派系3新聞が社説を出している。
朝日新聞「黒田緩和2年 拡大続行よりやめ方を」(http://www.asahi.com/articles/DA3S11687276.html)
毎日新聞「異次元緩和2年 柔軟な政策へ転換を」(http://mainichi.jp/opinion/news/20150404k0000m070099000c.html)
東京新聞「異次元緩和2年 目標未達の説明果たせ」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015040402000156.html)
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いずれも似ている。円安を罪悪視し、インフレ目標が達成できないことや日銀が国債を買うリスクを問題視している。そして、左派系であるにもかかわらず、雇用の改善はまったく無視している。さらに、消費増税の影響も無視だ。
かつて、東京新聞は金融政策や消費税ではいい社説もあったが、今や朝日新聞や毎日新聞の補完で、安倍総理の行うこと、アベノミクス憎しなのだろうか。
異次元緩和の正確な表現は、つぎのとおりである(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf)
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日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。
2年で2倍なのはマネタリーベースの拡大であり、2%は「2年程度の期間を念頭に置いて」という程度の話だ。
■ 異次元緩和反対派の予想は完全にはずれ
そもそもインフレ目標は「ガチガチ」のルールではない。かといって「ユルユル」の裁量的なものでもない。バーナンキの言を借りれば、ルールと裁量の双方の性格をもつ「制約された裁量」である。ガチガチのルールではない。また、彼は市場とのコミュニケーションツールともいっている。
インフレ目標ではプラスマイナス1%が許容範囲といわれている。先進国のこれまでの実績では、その許容範囲に7割程度収まっておるが、それが達成できない場合には、説明責任を果たさなければいけない。
マスコミの人は、2年で2%のインフレ目標というのを、「2015年4月で消費者物価総合指数対前年同月比2%」と思い込んでいるが、「2015年4月〜2016年3月という1年間で消費者物価総合指数対前年同月比1〜3%」という程度である。
ともあれ、過去4年間で、異次元緩和の前後2年の経済パフォーマンスをみてみよう。
インフレ率を消費者物価指数総合の対前年同月比でみると、異次元緩和の前にはマイナス基調だった。その後、異次元緩和で上がりだし、消費増税前までは順調に上昇していた。量的緩和がスタートした2013年4月に▲0.7であったが、2014年5月には1.6%まで上昇した。ところが、消費増税に影響で消費が減退し、2015年2月には0.1%まで低下している(消費増税による見かけ上の影響が2.1%として計算)。(図1)
図1 CPI総合(対前年同月比)の推移
日経平均では、異次元緩和の前までは1万円にもならない横ばい傾向だったが、異次元緩和以降、かなりのペースで上昇している。(図2)
図2 日経平均(月末値)の推移
ドル円は、株価と似た動きだ。異次元緩和の前までは1ドル80円程度の円高であったが、異次元緩和以降、円安が進んでいる。(図3)
図3 ドル円(月中平均)の推移
長期金利は、異次元緩和の前まで低下し、もうそれ以上の低下はないと思われていたが、さらに低下を続けている。異次元緩和になったことは、これ以上の低下はないので、逆に金利上昇し、財政破綻もあるという批判が、異次元緩和への反対論者から出されたが、金利は低下し、そうした人たちの予想はまったく外れている。(図4)
図4 10年国債金利(月末)の推移
■ 左派系には雇用が重要なはずなのに…
雇用はどうだろうか。左派系にとって、雇用が重要なはずだ。しかし、異次元緩和を批判したいために、株価は上がるが、人々の暮らしはよくならないという。しかし、その批判は完全にそらしである。
筆者はかつて官邸勤務もある元官僚でマクロ経済政策を担当していたが、その際、最も重視したのが就業者数などの雇用関連だ。かつて安倍総理にも、就業者数がよければ、マクロ経済政策は60点以上の及第点になると説明していた。
そして、本コラムの読者であれば、金融政策は雇用政策であり、失業をなくせる有効な政策手段であることをご存じだろう。
その歴史を遡ると、金融政策による雇用の安定化に着目して、いち早く正統性を主張したのは、ヨーロッパの左派である。ヨーロッパの社会民主主義政党の集まりの「欧州社会党」や共産党などの集まりである「欧州左翼党」の主張を調べてもらえればいい。左派系の人が、アベノミクスを「金融右翼」とか言うが、それは金融政策に無知で、歴史も知らない左派の戯言だ。
欧州の左派政党は雇用確保のために金融政策を活用するようにいう。「欧州社会党」(ヨーロッパの社会民主主義政党の集まり)は、雇用確保のために欧州中央銀行の政策変更を要求している。
また、「欧州左翼党」(ヨーロッパの共産党などの集まり)は、金融政策と財政政策が協調して雇用を確保するために、欧州中央銀行を民主的に管理することを求めている。そして、欧州中央銀行の役割として、物価の安定のみならず、雇用の確保も必要とすべきという。
■ 雇用政策を勉強しなければいけない人たち
なお、米国では、FRB(連邦準備制度)の責務として、物価の安定とともに雇用の確保も入っている。米国の大統領選では雇用や失業は、常に大きな争点である。
しかし、日本では、左派系の人が金融政策によって雇用が増えることを知らないので、まともな政策議論ができないのは大きな不幸である。
筆者はマスコミに雇用問題でどこに取材するかと聞く。ほとんどの人は厚労省に取材するという。もし米国だったらどうだろうか、労働省ではなくFRBだ。政府は統計数字を作るだけで、雇用を拡大することができるのはFRBである。
欧米では、金融政策は雇用政策とほぼ同義であるとされている。というのは、短期的には失業率とインフレ率の間に逆相関関係(フィリップス曲線と呼ばれ、右肩下がりとなる)があり、犠牲率の概念が広く共有されている。つまり、犠牲率とは、インフレ率を低下させるためには、どの程度の失業率が上昇するかということであるが、これ以上下げられない失業率より現実の失業率が高ければ、インフレ率を少し高めて失業率を低下させられる。まして、日本はデフレなのだから、デフレ脱却してノーマルなインフレ率にすれば、同時に雇用の回復につながる。
その上で、就業者数について、異次元緩和の前後2年をみると、明暗がはっきり分かれる。異次元緩和はしかりと雇用を作り出したのだ。(図5)
図5 就業者数(万人)の推移
雇用を新たに作り出したので、その人たちの暮らしはよくなった。賃金が上がらないとか、雇用が非正規とかいうが、失業がなくなったことをまず評価しよう。経済理論が教えることは、失業がなくなるにつれて、賃金は上がりだし、非正規は正規に変わっていくということだ。つまり、金融政策を否定するのではなく、それを評価し、それを継続すればいいわけだ。
この点の理解あまりに情けないのが、左派系知識人や左派系マスコミである。もっと雇用政策が何かを勉強しないといけない人たちだ。
■ 株価と半年後の就業者数には相関関係がある
左派系知識人は、すぐに株価は上がるから資産家はいいが庶民は大変だというレトリックを用いる。これはやめたほうがいい。というのは、株価は半年先の就業者数ときわめて相関しているのだ。つまり、株価が上がると半年先の雇用が増えるのだ。(図6)
図6 日経平均(左軸、円)と6月先就業者数(右軸、万人)
断っておくが、これは株価と半年先の就業者数に因果関係があるというわけではない。景気がよくなると、株価はそれを先取りし、就業者数は半年遅れて上がり出すというわけなのだ。
雇用が増えているので、雇用者などの所得の合算ともいえるGDPも増えている。ただし、消費増税以降、GDPは大きく落ちている。GDPの動きは、インフレ率の動きと若干似ているところがあり、ともに消費増税による需要減退の影響を受けて、消費増税後はさえない。(図7)
図7 実質GDP(兆円)の推移
ちなみに、インフレ率については、マネタリーベース(対前年同月比、3ヵ月ラグ)と消費増税(6ヵ月ラグ)でよく説明できる。(図8)
図8 インフレ率(現実と予測値)の推移
むしろ問題は金融政策ではなく、消費増税であった。このように明らかに消費増税の影響があるにもかかわらず、黒田総裁は言わないのは、ちょっと理解に苦しむ。マスコミからそうした質問が出ないのも理解に苦しむ。黒田総裁もマスコミもともに、消費増税の影響が軽微であると間違ったからである。
インフレ率について、まったく目標に達していないというのではないが、今の状況の説明責任をしっかり果たせば自ずと対応策もでてくる。
もし消費増税の影響とはっきり言えば、消費増税の影響を相殺するためには、一番いいのは、消費減税である。財政策の枠内で、消費減税に似たような効果のある対策はいくらでもだせる。おそらく、年後半になれば、減税補正予算などが政治的課題になってくるはずだ。
左派系知識人、マスコミ、政党がもう少し賢ければ、金融政策ではなく、消費増税を攻めるだろう。安倍政権も金融政策はいいが、消費増税という失敗があった。そうであるにもかかわらず、左派系知識人は財務省のいいなりで財政再建のためには消費増税というまったく間違ったことをいってきた。消費増税は民主党時代に仕組まれたとはいえ、その地雷を踏んだ安倍政権を攻められない今の左派系はまったく情けない。
安倍首相が、政労使会議に乗り込んで、左派政党のお株を奪う賃上げを要請する姿を見て、民主党は悔しくないのだろうか。このままだと、経済政策で安倍政権にはまったく歯が立たないという状態がつづくだろう。
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