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株式市場と住宅市場は、いずれ反落する 債券市場はどのように反応するのか
http://toyokeizai.net/articles/-/64796
2015年04月04日 ロバート・J・シラー :米イェール大学経済学部教授 東洋経済
長期国債の利回りは近年、非常に低水準で推移してきた。米国30年債利回りは1月30日に1972年以来最低の2.25%をつけた。英国30年債利回りは同日2.04%に下がった。日本の20年国債利回りは1月20日、わずか0.87%だった。
人々が各中央銀行の年間インフレ率目標の2%以下か、それをわずかに上回る利子を稼ぐのに20〜30年もおカネを預けておくのは不可解だし、持続不可能だ。
■長期債市場からほかの市場へ影響は及ぶか
セミナーや会議で繰り返し聞かれる質問がある。住宅市場や株式市場の参加者は結局、債券市場の価格を視野に入れて相場を形成するのだから、長期債市場からほかの市場へ影響が及ぶと考えるのが現実的と思うが、というものだ。
私は債券市場について長い間考察してきた。長期債市場は1972年の私の博士論文と翌年の学術誌初掲載論文(共著)のテーマだった。1952〜71年のデータを分析したところ、当時の長期債市場は説明が容易だった。ある日の長期金利は、過去18四半期のインフレ率と、同じ期間の短期実質金利の一定の加重平均によって、かなりうまく説明できた。インフレ率か短期実質金利のどちらかが上昇したときに、長期金利は上昇した。またどちらかが下落したとき、長期金利も下落した。
今はさらに40年分以上のデータがある。その後のデータを当てはめると、当時の計算方法は論文掲載後20年間、長期金利を極めてうまく予測した。が、1990年代中盤にこの理論は行き過ぎた予測を示し始めた。
インフレ率と短期実質金利は実質ゼロかマイナスなので、このモデルに従えば米長期金利は現行水準よりももっと低いはずだ。2008年以来の量的緩和の影響を考慮に入れても、長期金利は予想よりも高水準となっている。
が、随分と昔に考え出したこの理論は今も当てはまっており、中銀が(短期金利を引き上げることによって)金融政策を急激に引き締めたり、インフレが大幅に高進したりしなければ、債券市場の暴落はないとの見方が強まる。
債券市場の急落はあまり例がなく、あっても下落は穏やかだ。米国で、30年物社債のムーディーズ月間総収益率指数のグローバル・ファイナンシャル・データ(GFD)版で、1年間の最大の下げは(1957年までさかのぼって)1980年2月までの12カ月間のマイナス12.5%だった。
一方、株式では、GFDの月間S&P500総収益率指数によれば、大恐慌時代の1931年5月までの1年間に67.8%の下げがあり、1900年以来、年間の下げが12.5%を超える事例が23回を数えた。
どのような出来事が長期債市場の12.5%(ほど大きい)の暴落を引き起こすかに気づくことにも価値がある。1980年2月までの1年間の下げは、ボルカー氏が1979年に米国連邦準備制度理事会(FRB)議長になった直後に始まった。
同年のギャラップ世論調査によれば、米国民の62%がインフレを「米国が直面する最重要の問題」と見なしていた。ボルカー議長はこれに対処するために短期金利を引き上げすぎて深刻な景気後退を引き起こした。彼は敵を作り、殺害の脅迫さえ受けた。国民はボルカー氏が政治的に逃げ切れるのか弾劾されるのかと気をもんだ。
■債券の暴落と株式、住宅の反落はほとんど関係しない
株式市場と住宅市場については、いつか大幅な反落があるだろう。だが、おそらくそれは債券市場の暴落とほとんど関係しないだろう。このことが当てはまっていたのは、過去1世紀(1907年、29年、73年、2000年、07年の各年以降)の米株式市場の大幅な反落と、これまで(1979年、89年、2006年の各年以降)の米住宅市場の大幅な反落だ。
長期債利回りが尋常ならざる低水準となり、歴史的な経験の範囲外だというのは本当だ。が、突然の債券市場の暴落が株式相場と住宅相場を押し下げるシナリオについても同様なのだ。一度も起こったことがない出来事について、自信があるそぶりで予測することはできない。
(週刊東洋経済2015年4月4日号)
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