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消費増税から1年 景気回復「ゆったり型」:前回97年と違い、賃金・円安効果に制約:17年4月の増税実施は困難
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投稿者 あっしら 日時 2015 年 4 月 04 日 15:33:02: Mo7ApAlflbQ6s
 


[エコノフォーカス]消費増税から1年 景気回復「ゆったり型」
前回97年と違い、賃金・円安効果に制約


 消費税率が5%から8%に上がった昨年4月1日から約1年。2014年度の日本経済はマイナス成長になりそうだが、足元は上向きつつある。前に消費税率を上げた1997年度はプラス成長となった後、98年度から長期停滞に入った。今回は増税後の回復は遅れた一方、1年経った時点では前回より明るい。背景には、日本経済の構造と環境の違いが浮かび上がる。(加藤修平)


 97年度の実質成長率は0.1%とプラスだった。成長率の内訳を見ると公共投資が国内総生産(GDP)を0.6ポイントも押し下げるほど減ったのにプラスを維持した。対照的に14年度は財政支出を増やしたのに成長率は97年度より下がった。家計の買い控えが前回より幅広く起こったためだ。

 ニッセイ基礎研究所の試算によると、増税前の駆け込み購入の規模は今回も前回もほぼ同じ。だが、人口減で市場が縮み前回の半分強の駆け込みにとどまった住宅を除くと、13年度の駆け込み消費は2兆4千億円と96年度の2倍もあった。

 背景には賃金の動きがある。賃金の伸びから物価の伸びを引いた実質賃金は12年度から前年を割り込んでいた。購買力が落ちた局面での増税に家計は節約に走った。

 対照的に、前回は96年度まで実質賃金は3年続けて前年比でプラスだった。名目の賃金の伸びが物価上昇率を上回っていたためだ。家計に余力があり、増税後も消費は今回ほど落ちなかった。


海外生産が増加

 日本経済の構造が変わり、今回の増税後の景気回復の足取りを重くした。14年度(2月までの平均)の対ドルの円相場は前年度比8.7%下落。97年度も同8.9%下落しており、増税後の円安幅はほぼ同じ。だが、円安が実質GDPを押し上げる効果は異なる。

 内閣府による98年の試算では、当時は10%の円安が実質GDPを年0.4%押し上げる効果があった。内閣府の最新の試算では同じ10%の円安が実質GDPを押し上げる効果は0.08%しかない。リーマン・ショック後、海外に生産拠点を移す動きが加速し、円安でも輸出が伸びにくくなった。円安が効きにくくなった分だけ、14年度の成長は抑えられた。

 金融面の逆風は今回よりも97年の方が強かった。夏からアジア通貨危機が始まり、秋には大手証券の経営破綻などが起こった。金融不安が重荷になった輸出減と株安は、実質GDPを0.5%ほど押し下げている。

 97年は消費増税後の7〜9月はプラス成長へ回復したが、金融不安が深まった10〜12月期からは3四半期続けてマイナス成長に陥った。98年度は実質で1.5%のマイナス成長となり、日本は長いデフレに入っていく。


プラス成長予測

 一方、14年は4〜6月期から2四半期続けてマイナス成長になった後、10〜12月期は実質の年率換算で1.5%のプラス成長に戻った。働き手が増えたため、働く人が受け取る報酬の総額は7四半期続けて前年を上回っている。民間予測の平均では、15年度は1.83%のプラス成長だ。

 今回は消費増税直後のダメージは大きかったが、増税から2年目の消費を巡る環境は正反対でもある。15年度の日本経済は追い風が多い。

 3月の原油価格は14年度平均と比べて4割近く低い水準にある。原油が仮に今の価格で推移すれば、ガソリンなどの購入負担が減る家計の購買力は上がる。

 今年の春季労使交渉では大企業を中心に昨年を上回るベースアップの回答が相次いだ。98年度の1人あたり賃金は前年度比1.6%減と、統計を比べられる71年度以降で初めて賃金が減った。

 今回は株高の資産効果も増税の傷を癒やしてきた。3月27日の日経平均株価は14年初と比べると21%高い水準だ。98年3月末の株価は97年初に比べると15%も下落していた。株価が今の水準を保てば、15年度の個人消費には追い風となる。
 ただ、円安の恩恵は生産の海外移転で薄れている。景気が一段と回復ピッチを速めるには、経済の構造変化に目を向けた政策や企業戦略の立案が欠かせない。

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次回増税に向け、潜在成長力の強化必要

 次の消費増税は2年後の17年4月。日本経済はどうすれば増税を乗り越えられるのか。ニッセイ基礎研の斎藤太郎経済調査室長は「低下した潜在成長率を引き上げる必要がある」と指摘する。目先だけでなく将来も成長が続く見通しを持てなければ、企業も個人も増税の向かい風を進む足腰は定まらない。

 人材や設備を平均的に使う場合の潜在成長率は、今は0%台後半にとどまる。97年ごろには2%を超えるとされていた。97年度はアジア通貨危機など日本のGDP全体に2%もの押し下げ効果が働いた。
 それでもプラス成長になったのは、潜在成長力が向かい風に何とか勝ったからだ。

 大和総研によると金融危機が起こった97年も銀行の実質貸出残高は前年より増えた。伸び率は14年よりも高い。大手銀行が貸し渋りに走った当時、国内には今より多くの資金需要があった。

 遡って3%の消費税を導入した89年度を見ると、実質成長率は4.6%。バブル経済で1人あたりの賃金が前年より4.2%増え、増税による負担増を乗り越えた。消費増税しても景気を腰折れさせないためには、賃金が継続して伸びる環境が前提になる。

 安倍晋三首相は17年4月に消費税率を10%に上げると断言している。残り2年間に法人減税や規制改革を一段と進め、個人や企業の間に将来の成長力への期待を定着させることができるか。消費増税の成否もそこにかかっている。

[日経新聞3月30日朝刊P.3]

 

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