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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NLSN2P6K50YZ01.html
(ブルームバーグ):
これは本当でしょうか−。日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)の対象である栄香料(中央区日本橋)に3月上旬、日銀担当者から確認の電話が入った。短観3月調査で1年後の物価全般の上昇率見通しを「5%」と回答したからだ。それでも中小企業は価格転嫁がままならない。
2013年春から「2年程度で2%」の物価目標を掲げる日銀に対し、直近2月の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI )は消費増税の影響を除き伸び率ゼロ。これとかけ離れた数値を同社の長康弘取締役が調査票に書き込んだのは、輸入物価の高騰に日々直面しているからだ。円安進行や世界的な食糧需給ひっ迫を背景に、香料の原材料である輸入品の花きや果物が「2割近く昨年よりも上がっている」と、長氏は話す。
食品や飲料、化粧品向けの香料を生産する同社は中小企業。大手のようにバーゲニングパワーがなく、まとめ買いで原料費を抑えるのは困難だという。同氏は「長谷川香料や高砂香料工業などの大手がユーザーと価格交渉に動いてくれれば、ようやくわれわれも動ける」と話し、今年こそコストアップ分に見合う値上げができればと期待をかける。
昨年10月末の日銀の追加緩和以降、円安は一段と進行し、3月には07年以来の安値となる1ドル=122円台を記録。輸入材のコスト高に直面する中小企業の多くは、価格転嫁できずに苦しんでいる。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、長氏が予想する5%の物価上昇は「難しい」とし、輸入価格を押し上げる円安デメリットは「企業業績を悪化させ、景気にネガティブな影響を及ぼす」と話す。
日銀の広報課は、短観調査への個別企業の回答についてコメントできないとしたものの、物価見通しを含め、記入ミスが生じやすい箇所について確認をすることがあると説明した。
円安
原材料コストの上昇を背景に、日本ケンタッキー・フライドチキンやダスキン運営のミスタードーナツ、日清オイリオなど大手企業が相次いで商品の値上げを発表したが、中小企業の多くは、いまだに十分な値上げを実施できていない。
東京商工会議所が1月に行った中小企業調査では、64.8%の企業が「原材料単価が上昇した」と回答したが、88.3%の企業は原料を含む事業コストを「販売価格に転嫁できていない」としている。日本商工会議所の荒井恒一理事は、激しい価格競争に直面している中小企業は「円安による仕入れコストの上昇を転嫁することは難しい」と見ている。
ブルームバーグ・データの為替予測調査によると、日米の金融政策の方向性の違いを見越して、1年後の円相場(中央値)は1ドル=127円と、現在(1日午後5時半時点で120円10銭)よりもさらに円安方向に振れると予想されている。長氏は「円安がどんどん進むと、そのたびごとに価格交渉を強いられるので、相場安定を望む」と言う。
夜明けは近い?
一方、価格転嫁の環境が整ってきたとの見方もある。ソシエテ・ジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは、コスト増を最終製品に転嫁できるかどうかは、購買力を支える「労働需給がどの程度引き締まるかが鍵」と話す。直近2月の失業率 は3.5%だが、これを「下回ってくると、転嫁しやすくなる」とし、夜明けは近いという。転嫁できれば「原油を除き平均的に1%物価が上昇するイメージ」と指摘する。
JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは、栄香料が値上げを念頭に入れていることに関連して、「中小企業も値上げを検討しているのは、インフレの実現において重要。こうした期待の変化が出てきていることは、ポジティブだと考えている」と述べた。
厚生労働省が集計する毎月勤労統計調査によると、現金給与総額 は14年3月から11ヶ月連続で上昇しており、15年1月は前年比1.3%増の27万2779円。ただ、物価変動を考慮した実質賃金は前年比1.5%減少した。
日本労働組合総連合会(連合)が3月20日発表した第1回賃上げ回答集計によると、今年の春闘での月給平均上昇率は2.43%と17年ぶりの伸び率になる見通しだ。月給平均上昇は7497円。昨年の最終集計は2.07%増の5928円で1999年以来の高水準だった。
短観
1日発表の3月短観によると、中小企業・製造業の販売価格判断DI(「上昇」から「下落」を差し引いた数値)はマイナス6に対し、仕入価格判断DIは33と、両者の差は39ポイントある。先行き見通しでは、この差が43ポイントに拡大すると予想されている。
大企業・製造業は販売価格判断DI(マイナス6)と仕入価格判断DI(11)の差が17ポイントと、中小企業の半分以下。
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記事に関する記者への問い合わせ先: Tokyo 呉太淳 toh15@bloomberg.net;東京 Finbarr Flynn fflynn3@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先: Katrina Nicholas knicholas2@bloomberg.net 持田譲二, 上野英治郎
更新日時: 2015/04/02 00:00 JST
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