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原油安経済は、資源ブームや新興国ブームの終焉を意味するPhoto:underworld-Fotolia.com
世界の2大危機「原油暴落と金利水没」にノアの方舟は現れるか?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150401-00069364-diamond-bus_all
ダイヤモンド・オンライン 4月1日(水)8時0分配信
● 病巣は想像以上に根強い――。 世界の二大現象が原油暴落と金利「水没」に
今日の異例な世界経済の状況を象徴する2大現象は、原油価格暴落と世界の金利「水没」という状況ではないか。
原油安経済は、資源ブームの終焉や新興国ブームの見直しをもたらしているだけでない。金融面で、原油安にともなう物価の下落に対処すべく各国中央銀行は異例の金融緩和に踏み切って、有史以来のマイナス金利(金利水没)をもたらしている。
それは、事実上の通貨戦争であり、原油安経済は「金利水没競争」をもたらした。しかし、原油価格下落からの道筋も、世界の「金利水没」からの出口もまだ見つかってはいない。それは、世界経済全体の病巣が予想以上に根強いことを示すものと言える。
図表1で示されるように、先進国の需給ギャップは2007年を大きな転換点とし、その後、足元に至るまで大幅なマイナスを抱えた状況が続いている。その背景には、日本が1990年代から続くバランスシート調整にあるなか、欧米も2007年のサブプライム問題、翌年のリーマンショック以降、日米欧の先進国が同時にバランスシート調整に陥る大恐慌以来の局面を迎えたことにある。
米国はその調整から出口を見つけつつあるが、依然世界全体では大きな後遺症を抱えた状況が、今日の世界経済の真実だ。
● 世界最大の経常収支地域の欧州が 財政緊縮になる「近隣窮乏化」
図表2は世界の経常収支の地域別推移である。今日、欧州は世界最大の経常収支黒字地域である。2013年以降、これまで大幅な赤字が続いた南部ユーロ圏の赤字が緊縮財政の結果大きく改善し、足元は黒字に転じる状況にある。もともと黒字であるドイツは、依然頑なに緊縮財政姿勢を続けている。
今日の欧州の状況は、経常収支の面からはユーロ高になるべき状況を、「金利水没」の捨て身戦略で無理やりユーロ安誘導を行うようなものだ。単一通貨のユーロ制度を守るべく、南欧の赤字是正を行うがために財政政策を封印し、他国からの需要(外需)に依存すべく、自国通貨安誘導を行う「近隣窮乏化」にある。
世界各国は、「金利水没競争」による自国通貨安の近隣窮乏化策で脱出をしようとしている。それらの施策は各国にとっては「正常化」であるが、全体としては「合成の誤謬」として世界に原油安経済と異例な金融環境をもたらしている。
● 世界金利「水没競争」にお墨付き、 2月のG20は最大の失敗だった?
従来日本を中心に、経常収支の黒字地域は主に財政支出によって内需拡大を迫られた。しかも今日、世界的環境は前述の図表1のように需要不足に伴う長期停滞不安が顕現化している。
しかし実際には、今年2月10日にイスタンブールで開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の声明では、ECBの「金利水没」を促す異例の金融緩和対応が、物価安定のための措置としてお墨付きを与えられてしまっただけに、各国の量的緩和で「金利水没競争」の流れは継続する見通しである。
2月のG20は、各国の近隣窮乏化を容認したという観点から、将来に禍根を残すものとなったのではないか。結局、ECBを含め各国の金融緩和を追認するだけで、財政政策による自律的な成長の回復シナリオは示されていない。
しかも、今回は2008年以降の世界の危機を「4兆元の公共投資」で救った中国でさえも、金利引き下げの外需に依存する状況だ。まさに「中国よ、お前もか」の状況だ。世界中が財政の緊縮と金融緩和のポリシーミックスに依存した状況だ。
● 各国が独自に需要をつくり上げる 「21世紀版マーシャルプラン」が必要だ
以上のような世界経済の危機に対しては、本来世界各国が財政拡大を含め、各国独自に需要をつくり上げる「21世紀のマーシャルプラン」、「21世紀版ノアの方舟」が必要だ。しかし、そうした世界的合意が実現するまでに至らない軋みを、世界各地に抱え出している。こうした世界の不安のなかでは、原油価格下落、金利水没は予想以上に長く続くかもしれない。
高田 創
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