02. 2015年3月31日 01:14:53
: hmRPH0FN6o
USD円は戻し中だが、円安ではなく、ドル高米2月の消費支出は0.1%増、予想下回る 貯蓄率2年ぶり高水準 2015年 03月 31日 00:29 JST [ワシントン 30日 ロイター] - 米商務省が30日発表した2月の個人所得・消費支出統計は、消費支出が前月比0.1%増と、市場予想の0.2%増を下回った。自動車など大きな支出が手控えられる一方、厳冬の影響で光熱費は増えた。貯蓄率は2年超ぶりの高い水準となった。1月の数字は0.2%減で修正はなかった。 インフレ調整後の消費支出は0.1%減と、前月の0.2%増からマイナスへ転じた。消費支出は昨年第4・四半期に8年超ぶりの大幅な伸びとなって以来、鈍化傾向にある。 個人所得は前月比0.4%増え、前月の伸び率を維持した。 貯蓄は5.8%増の7686億ドルで、貯蓄率、貯蓄額ともに2012年12月以来の高水準となった。1月は7287億ドルだった。 厳しい冬の気候やドル高、西海岸の主要港湾で続いていた労働争議、ヨーロッパやアジアの需要が弱含んでいることなどで、第1・四半期の米国の経済成長の勢いをそいでいるが、こうした減速傾向は一時的なものと考えられている。 消費者はガソリン安で可処分所得が増えた分を貯蓄やローンの支払いへまわしたとみられるが、家計は改善しており、労働市場も引き締まってきていることから、エコノミストたちは今年の消費支出は増えるとみている。 物価は小幅に上昇し、最近のディスインフレ傾向が終わったことを示唆した。個人消費支出(PCE)価格指数は前月比0.2%の上昇。1月は0.4%の低下だった。前年同月比は0.3%の上昇だった。連邦準備制度理事会(FRB)が物価安定の目安とする2%は依然大幅に下回っている。 食品やエネルギーを除くコアPCE物価指数は前月比0.1%増と、前月と変わらなかった。前年同月比は1.4%の上昇だった。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MQ1P620150330 米個人消費支出:2月は予想下回る、インフレ調整後はマイナス 2015/03/30 23:22 JST (ブルームバーグ):米商務省が発表した2月の個人消費支出 (PCE)は市場予想を下回る伸びだった。 2月のPCEは前月比0.1%増加。前月は0.2%の減少だった。ブルームバーグがまとめたエコノミス ト予想中央値は0.2%増。インフレ調整後のPCEは約1年ぶりに減少した。 RBCキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、トム・ポーセリ氏(ニューヨーク在勤)は、「個人消費はここにきて軟調のようだが、その一部は天候が影響している」と述べ、消費は「第2四半期には回復するだろう」と続けた。 2月の個人所得は前月と同じ0.4%増加。前月の速報値0.3%増から修正された。ブルームバーグがまとめた予想中央値は0.3%増。 賃金・給与は0.3%増と前月の0.6%増から伸びが鈍化した。 インフレ調整後の実質PCEは0.1%減。昨年4月以降で初のマイナス。前月は0.2%増だった。 耐久財支出は調整後ベースで1.1%減。2013年12月以降で最も下げた。非耐久財支出は前月比ほぼ変わらず。 サービス支出はインフレ調整後で0.1%増と、昨年7月以来で最も小幅な伸びにとどまった。 食品とエネルギーを除くPCE価格コア指数は2月に前月比で0.1%上昇。前年比では1.4%の上昇。 統計の詳細はNSN NM0YST6N9EDQをクリックしてご覧ください。 原題:Consumer Spending in U.S. Rose Less Than Forecast in February(抜粋) 更新日時: 2015/03/30 23:22 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NM12Q96VDKHX01.html
コラム:ドル下落は「円売り・外貨買い」の好機か=亀岡裕次氏 2015年 03月 30日 19:34 JST 亀岡裕次 大和証券 チーフ為替アナリスト [東京 30日] - 3月17―18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)直後に為替市場では二つの変化が起きた。一つはドル高からドル安への転換、もう一つは円高から円安への転換である。 FOMC声明から「(低金利政策に)忍耐強くいられる」との文言が削除されて6月利上げへの道が開かれたことよりも、米国の景況判断、先行きの成長率、インフレ率、政策金利見通しがいずれも下方修正されたことが、早期利上げ期待の後退とドル安を招いた。また、そのことが米国や新興国などの経済への懸念を和らげると同時に、世界的な株高、商品高や円安を招いた。 ただし、円安よりもドル安が優勢だったため、ドル円は121円程度から一時118.33円まで下落した(3月30日現在では119円台)。 <実効為替のドル安傾向は当面継続へ> FOMC前は6月利上げと9月利上げの見方で、市場が二分された状態に近かったが、FOMC後は最初の利上げが9月に行われるとの見方が中心となった。当局者のフェデラルファンド(FF)金利見通しが2015年末時点で0.625%であったことから、年内に2回の利上げが行われる可能性が高いとみているからでもあろう。ひとまずは利上げ期待の後退が落ち着くことで、短めの金利は低下が止まり、長めの金利も下げにくくなるのではないか。 しかし、実効為替でみたドル相場は、今後もしばらくは下げ基調となる可能性が高い。その理由は、ドル高が進むと原油などの商品安を伴って米国のインフレ率やインフレ見通しが押し下げられ、利上げが遠のくことがわかったため、市場ではドルを買いにくくなったからだ。 米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、ドル高は純輸出を抑制し、原油安は原油の掘削活動を縮小させていると述べており、米国経済に逆風となる働きがあるとの見解を示している。インフレ見通しが高まり、利上げが近い将来に現実的なものとして視野に入るまでは、ドルが売られやすいだろう。ドルが下落すると商品価格は上昇しやすい。 しかも、米国では最近、ガソリンや留出油など石油製品の生産や在庫の増加に鈍化の兆しが出てきたので、原油の生産や在庫の増加も鈍化するタイミングは近いものとみられる。そうなれば、なおさら原油などの商品価格は上昇しやすくなる。ドル安と商品高が米国の期待インフレ率を押し上げることで、実質金利が押し下げられやすくなり、名目金利が低下しなくてもドルが売られることも考えられる。 <「ドル安=ドル円下落」にはならない> ただし、実効為替でドル安が進むと必ずしもドル円が下落するわけではない。今のところは円安よりもドル安が優勢なためにドル円が下落しているが、次第にドル安よりも円安が優勢となってドル円が上昇するようになる可能性は十分にある。 現状で円安が勢いを欠く理由は、米金利低下やドル安が進んでも米国の株価が伸び悩むなど、リスクオンの高まりが鈍いことにある。その背景には、足元で米国景気の回復ペースがやや減速したために、先行きの景気見通しが悪化したことがあるだろう。 過去を振り返っても、米国のイールドスプレッド(国債利回り−株式益回り)は景気指標と連動しており、景気指標が改善方向にないと長期金利や予想1株当たり利益(EPS)との裁定関係において株価が上昇しにくい。しかし、ドル高が多少なりとも是正されたことで、今後の米国経済指標にはプラスの圧力がかかるはずである。 <ドル安による米景気回復とリスクオン> S&P500種企業の予想EPSは2014年10月以降、減少が続いていたが、2015年3月には増加に転じている。原油安がエネルギー企業に与えていた悪影響が薄れつつあることに加え、ドル高がグローバル企業に与えていた悪影響も薄れることで、さらなる予想利益の増加が見込まれる。 今年に入り市場予想を下回る傾向が強まってきたマクロの米国経済指標も今後は改善に転じる可能性が高く、そうなれば、米国株価は上昇しやすくなるだろうし、リスクオンの高まりとともに円安が顕著に進むようになるだろう。リスクオンのドル安で実効為替のドル相場が下落しても、リスクオンの円安はドル安を上回り、ドル円は上昇することになるだろう。 3月FOMC直後の通貨先物(対ドル)は、豪ドル、円の売り越しにほぼ変化がなく、ユーロは売り越しが拡大するなど、ドル売りは強まっていない。ユーロは、欧州中央銀行(ECB)が国債買い入れなどによる量的緩和を進めることに起因した先安観があり、ユーロ高・ドル安が進んだところで先物のユーロ売り・ドル買いが増えたようだ。 ただし、主要6通貨に対するドル実効為替指数先物の買い越しはFOMC前に記録したピークに比べて縮小しており、やはりドルに先安観が浮上しつつあるものとみられる。今後、2012年10―12月のようにドルに対する円の売り越しが拡大し、他通貨の売り越しが縮小するリスクオンのパターンになるかが注目される。 FOMC直後は、米国の名目金利低下とドル安・商品高が進む一方で、米国景気への懸念からリスクオンの株高・円安は鈍く、ドル円は下落した。しかし、今後は緩やかな実質金利低下とドル安が進む一方で、ドル安による米国景気の回復期待からリスクオンの株高・円安が進みやすくなるだろう。 FRBのハト派的姿勢は、クロス円だけでなくドル円の上昇をもたらすと予想される。米利上げ期待が後退してドル高の勢いが衰えたときこそ、幅広い通貨に対する円安進行をにらんで「円売り・外貨買い」をすべきではなかろうか。 *亀岡裕次氏は、大和証券の金融市場調査部部長・チーフ為替アナリスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MQ0JW20150330 コラム:日銀追加緩和を招く円高シナリオの現実味=河野龍太郎氏 2015年 03月 30日 23:46 JST 河野龍太郎 BNPパリバ証券 経済調査本部長
[東京 30日] - 「2年程度で2%」のインフレ目標を掲げる黒田日銀体制がスタートして2年が経過した。やはり現実は厳しい。原油安もあって、2月の消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下CPIコア)は、消費増税の影響を除いたベースで、前年比0.0%となった。 筆者の見通しでは、4月は一時的にマイナスとなる可能性もあり、夏までゼロ前後で推移する。しかし、日銀は原油安がもたらすゼロインフレに対して追加緩和を行わない。これが筆者の金融政策の基本シナリオだ。 日銀が動かない理由の一つは、日本政府が円安の悪影響を懸念し、現段階では追加緩和を必ずしも歓迎していないことである。閣議決定の対象である月例経済報告は、昨年12月まで「日銀には、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することを期待する」としていたが、今年1月以降は「日銀には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待する」と、スタンスを大きく変えている。4月の地方統一選挙を控え、せっかくの原油安効果を追加緩和がもたらす円安で損なっては元も子もないという判断なのだろう。もはや安倍政権は2%のインフレ達成を急いではいない。 問題は、こうした日銀に対する安倍政権のスタンスの変化に海外の投資家はあまり気が付いていないことである。先日、ロンドンに出張し、多くの投資家と面談したが、インフレ低下に対し日銀が追加緩和を行うという観測が根強い。だとすると、安倍政権や日銀のデフレ脱却へのコミットメントに疑念が生じ、円高が進むことはないだろうか。 筆者は、米連邦準備理事会(FRB)が年後半にも利上げを開始する一方で、日銀は公的債務への配慮から相当期間にわたってゼロ金利政策や長期国債の大量購入政策を継続せざるを得ないことなどから、円安トレンドは変わらないと基本的には考えている。円高が進むリスクシナリオの実現には、いくつかの条件がそろうことが必要だ。しかし、検討して改めて感じたのは、それらはいずれも現実性が低いわけではないことである。 <「期待のチャネル」を通じた円高リスク> リスクシナリオの前に、念のため基本シナリオから説明しておく。前述した通り、政府が円安の悪影響を懸念し、追加緩和に対し消極的であるというのが、日銀が追加緩和を行わない第一の理由だが、残り二つの理由は、日銀サイドの要因である。 昨年10月末に追加緩和を行った際、黒田総裁は原油安がもたらすインフレ期待低下の懸念を掲げていたが、より重要なのは、インフレを左右する需給ギャップの動向だったと思われる。消費増税で2014年第2四半期の需給ギャップが想定通り悪化しただけでなく、当初改善が始まると考えていた第3四半期も悪化が継続していることが10月末段階で明らかになってきたため、追加緩和を行ったというのが最大の理由であろう。 しかし、昨年第4四半期には緩やかながらも需給ギャップ改善の再開が確認され、今年第1四半期からは原油安のプラス効果が広がり、改善継続が見込まれている。需給ギャップが改善を続けるのなら、原油安でインフレが低下しても、追加緩和は必要ない。 もう一つの理由は、年率80兆円の現在の長期国債購入ターゲットの継続そのものが難しいということだ。今年は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が長期国債を大量売却するため目標達成は何とか可能だが、来年には現状ペースでの購入も難しくなり、追加緩和どころではなくなる。 もちろん、マイナスの金利で長期国債を買えば済むことだが、もし長期金利の引き下げが目的なら、そもそも無理をして購入量を増やす必要はない。後述する通り、筆者は、技術的な問題に対応するため、いずれ日銀はマネタリーベース・ターゲットから長期金利ターゲット、すなわち長期金利のペギング(pegging、固定政策)に移行するのではないかと考えている。 以上が筆者の金融政策に関する基本シナリオである。要は、家計や内需セクターへの円安の悪影響を懸念し、政府がスタンスを変え、不本意かもしれないが、日銀も機械的なインフレ・ターゲットから、フレキシブル・インフレーション・ターゲットに結果的に移行するということである。しかし、こうした政府、日銀の変化に対し、円高が進展するリスクはないのか。 期待に働きかける政策がもし機能するのなら、極めて不確実な波及経路ではあるが、政府、日銀のデフレ脱却へのコミットメントを人々が強く信認するから、円安などを通じ、それが自己実現的に達成される。それゆえ、その政策を遂行する場合、政策当局者、とりわけ中央銀行総裁は狂信的かつ厳格なインフレ・ターゲット論者でなければならない(せめて、そのふりをしなければならない)。しかし、コミットメントへの疑念が広がると、期待の経路から反対に円高が進展し、今度は自己実現的にインフレ予想が低下する。これが、筆者の考えるリスクシナリオのメカニズムである。 筆者自身は、量的質的緩和政策の「期待のチャネル」を重視していないが、黒田総裁は、信念が失われたと疑われることで、市場参加者の期待が変わり、円高が進展することを恐れているようだ。だからこそ、「2年程度で2%」の旗を降ろさないのだろう。ただ、金融市場は政府と日銀を一体として捉えている。仮に「期待のチャネル」仮説が正しく、そして黒田総裁が奮闘を続けるとしても、安倍首相のデフレ脱却へのコミットメントに疑念が生じれば、「期待のチャネル」を通じ、円高が生じるリスクがある。 原油安はインフレ低下以外にも、為替レートに影響をもたらすリスクがある。貿易収支の改善という経路である。2014年の貿易赤字は通関ベースで12.8兆円だったが、原油安の影響で2015年は7兆円強の改善が見込まれる。さらに、超円安の結果、2015年は輸出もある程度は回復が見込まれる。 筆者自身は、日本経済が完全雇用の領域にあることから、原油安による減税効果で支出が増えても、国内生産で全てを賄うことができないため、一部は輸入増や価格上昇につながり、貿易黒字は定着しないと予想している。しかし、一時的にせよ貿易収支が黒字化すれば、対外収支に対する見方ががらりと変わり、円高が進むリスクはないか。 <米利上げ観測後退とドル高政策修正リスク> リスクシナリオの検討を続けよう。今春、CPIコア前年比がゼロないしマイナスに低下しても日銀は追加緩和に踏み切らず、貿易赤字も想定外に黒字化する。政府・日銀のデフレ脱却へのコミットメントに疑念が広がると同時に、対外収支への見通しも大きく修正されれば、円高進展リスクが高まるのではないのか。ただ、それでも円安シナリオの大きなアンカーがある。 米利上げ観測がドル高トレンドをサポートするはずである。3月17―18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも、年後半以降の利上げシナリオは維持されていた。確かに、第1四半期の米景気にはもたつきも見られるが、これは、東海岸の悪天候や西海岸の港湾ストによる一時的な影響であって、今後は原油安のプラス効果がより強まってくる。 しかし、米国では過去数年、春先に景気後退とまではいかないまでも、何度か景気の中弛み(ソフトパッチ)に陥ることがあった。今回は原油安のおかげでインフレが落ち着いているため、景気の持ち直しが明確になるまで、利上げを先送りするシナリオも考えられる。そうなれば、ドル高傾向にも変化が現れるかもしれない。 実は、3月のFOMCの声明文で、気になることがあった。そこでは、輸出が軟調と表明されていたが、記者会見でイエレンFRB議長は原因の一つがドル高であると述べている。もちろん、ドル高のプラス効果にも触れてはいるが、今後、景気やインフレに対する抑制効果がより強調されるようになれば、利上げ観測は遠のく。 さらにドル高問題は、2016年の米大統領選挙が近づくと、政治的色彩を帯びてくる。振り返ると、今回の通貨戦争は2014年10月末の日銀追加緩和が引き金を引いた。欧州中央銀行(ECB)はデフレを恐れ追加緩和で対応し、周辺国、新興国でも金融緩和による通貨切り下げ競争の様相が強まっている。その結果、唯一、引き締め方向に動いた米国の通貨高がここに来て目立っている。 実質ベースで見るなら、米ドルの増価は現在も限られているが、通貨高に対する政治的な反発は、往々にして名目為替レートの上昇が引き起こす。2009―12年の日本でも、実質ベースでは、それほどの円高ではなかったにもかかわらず、円高を解消できない日銀に対し政治的バッシングが広がった。ドル独歩高の様相になっていること、米大統領選挙という政治の季節が始まろうとしていることなどから、今後、ドル高に対するけん制や反発が米国の議会関係者や産業界から生じるリスクがある。 <長期金利ターゲットに移行か> 以上、4つの条件(日本政府のデフレ脱却へのコミットメントの揺らぎ、日本の貿易収支の黒字化、米経済のソフトパッチ入りによるゼロ金利解除観測の後退、米大統領選挙を前にしたドル高政策への反発)がそろい、昨年10月末の追加緩和前(1ドル=110円程度)の水準を超えて円高が進めば、日銀は追加緩和に踏み切るかもしれない。 因果関係はともあれ、黒田総裁はインフレ期待が上昇する過程では、それを織り込んで円安が進むと考えている。円高トレンドに変われば、インフレ期待が低下し、デフレ脱却がさらに遠のくため、追加緩和に踏み切っても不思議ではないだろう。 では、追加緩和を行うとすれば、日銀は何を買うのか。前述した通り、長期国債の買い増しは相当にきつい。地方債や政府保証債という声もあるが、発行額も限られ、それでは黒田総裁の嫌う小規模購入、逐次投入に終わる。 そこで、日銀が追加緩和に踏み切る際には、従来の量的ターゲットから事実上の長期金利ターゲットに移行するのではないかと筆者は考えている。 超過準備の付利を引き下げ、付利水準まで長期国債を購入すると表明すれば、長期金利を下げることができる。ターゲットを達成するため、事実上の無制限購入ということになるが、実際には、購入額を拡大する必要はない。現状の需給ひっ迫を考えれば、ネットで年率80兆円を大きく下回る購入額で達成は可能であろう。 近年、先進国の中央銀行が金利ターゲットから量的ターゲットへ移行した最大の理由は、政策金利がゼロ制約に直面したためだった。しかし、超過準備への付利はもちろん、長期金利もマイナスまで低下することが明らかになっている。経済や物価と金利の関係はかなり明瞭だが、中央銀行のバランスシートの規模との関係は相当に不明瞭である。もともと、中央銀行は、オーバーナイト金利を操作して長期金利に働きかけ、総需要の刺激を図ってきたのであるから、長期金利をゼロやマイナスまで下げることが可能なら、量的ターゲットより長期金利ターゲットの方が政策運営は容易だろう。将来、振り返れば、量的ターゲットは「時代の従(あだ)花」ということになりはしないだろうか。 もちろん、操作変数を短期間で変更することは信認問題もあって容易ではない。しかし、操作目標の引き上げが技術的問題で不能となり、2%のインフレ目標を断念するよりは信認問題をはるかにクリアーしやすいのではないか。長期金利を下げるための事実上の無制限購入政策であることが認識されれば、量的ターゲットのバージョンアップと人々の目には映るであろう。 筆者自身は、追加緩和に踏み切るかどうかにかかわらず、玉不足に対応するため、2016年にも現在の量的ターゲットから長期金利ターゲットに移行すると考えている。追加緩和なら、付利引き下げと現状よりも低い水準での長期金利のペギング、追加緩和でない場合は、付利は現状のまま、現状と同水準で長期金利のペギングということである。念のために繰り返すが、「追加緩和」はリスクシナリオであって、基本シナリオは「追加緩和なし」である。 *河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MN0YA20150330 |