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日銀、株保有10兆円に
自己資本の3倍超、株価下支え ペース維持は不透明
日銀は13年4月の異次元緩和導入時に日本株に連動するETFを年1兆円購入すると決めた。昨年10月の追加緩和では3兆円まで増やした。保有株の帳簿上の価格(簿価)は約5.7兆円だが株高もあって時価は今月に入り10兆円を超えた。東京証券取引所全体の時価総額の2%弱にあたる。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF、27兆円)に次ぐ大株主だ。
日銀は具体的な買い入れ方法を明らかにしていないが、午前中に株価が下がった日に300億〜400億円買い入れることが多い。24日も352億円購入し、午前中から弱含んでいた株式相場を下支えした。買い入れ回数は今年に入って20回になる。「日銀が相場の下支え役となっていることで投資家の安心感がある」(SMBC日興証券の牧野潤一氏)という。
株高は景気に好影響をもたらす。家計が保有する上場株の時価はこの2年間で76兆円から100兆円以上に膨らんでおり、富裕層を中心に消費を刺激している。企業も増資やM&A(合併・買収)がしやすくなる。消費者心理の好転か景況感の改善につながり脱デフレが進みやすくなる。
今後は日銀の財務に与える影響も無視しにくくなりそうだ。日銀の自己資本は2.8兆円で保有株は簿価で2倍、時価では3.5倍になる。民間では三菱UFJフィナンシャル・グループは自己資本14兆円に対し、保有株の時価は5兆円と約3分の1にとどまる。
日銀の会計ルールは民間銀行と異なるが、株価が著しく下落した場合、損失を処理すると定めている。日銀の財務基盤が健全でないと見なされれば、通貨の信認にも響くためだ。日銀幹部は「買い入れ余地はいくらでもあるが、価格変動リスクは十分留意しないといけない」と話す。
異次元緩和に伴い日銀は国債も年80兆円のペースで買い増している。国債の価格変動は株式よりも緩やかだが保有残高は260兆円となり2年前と比べ約2倍に増えた。
リスク資産の増加に伴い、日銀は財務基盤の強化を進めている。日銀法では利益の5%を自己資本積み増しに回し残額のほぼすべてを国庫に納付することになっている。13年度は政府の承認を得て自己資本の積み増しへの配分を利益の20%(1448億円)に増やした。相場の急変で損失が発生した場合に備え、自己資本を厚くする狙いだ。
ただ、リスク資産の増加ペースに、資本増強が追いつくかは不透明だ。デフレからの脱却が進まず金融緩和が長引けば、日銀の財務面の制約が強まり政策の余地が乏しくなる可能性もある。
[日経新聞3月25日朝刊P.5]
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