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ひとりの男が大企業優遇の日本を変える!外務省も後援、世界中の中小製造巻き込みに成功!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150328-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 3月28日(土)6時0分配信
日経平均株価が1万9000円を超え、2万円にも達する勢いとなっている。大企業のベースアップが過去最高水準になるというニュースが続々届くようになった。今年に入り景気の良い話題が増えてきているが、中小企業には、まだその実感がないところも多い。
日本の企業数の99.7%は中小企業であり、労働者の7割が中小企業で働いている。中小企業が元気になってこそ、日本経済の真の復活といえる。
マスコミに取り上げられなくても、世界屈指の技術を持ち、日本の産業を陰で支えている名もなき中小企業は無数にある。
こんなことがあった。今から10年以上前のある日、筆者の知人が経営する従業員数名の小さな町工場に大手電力会社の幹部が訪問してきた。経営者に深々と頭を下げ“ある道具”を製作してほしいと言うのだ。
某原子力発電所内で異物が落下してしまい、放置すれば大事故になりかねない。その異物を取り除くには既存の道具では不可能で、極めて特殊な道具を使わなければならない。その道具を製作できる会社を探したが、世界中でその技術を持っているのは、この町工場しかないことがわかったというのが成り行きだ。
知人はその申し出を承諾し、短期間でその道具を作り上げ、見事にその異物を取り除くことに成功した。しかし、この出来事がニュースになることはなかった。重大事故を回避し、ヒーローとなってもおかしくなかった町工場は、表舞台に出ることもなく、世間から賞賛を浴びることもなかった。
大企業を支えてきた中小企業は、いつも大企業の陰に隠されてきた。マスコミは耳目を集める派手なITベンチャー企業は取り上げても、地味だが高い技術を持った中小企業や町工場を取り上げることはほとんどなかった。
●中小企業に革命を起こす?
ところが、そんな時代を打ち破る規格外の男が現れた。神奈川県横浜市にあるミナロ社長の緑川賢司氏である。
2月15日、「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」の大ホールで、テレビ局や大手新聞社などのマスコミ36社や一般来場者約6000名が訪れた大きなイベント「全日本製造業 世界コマ大戦2015」(以下、世界コマ大戦)が開催された。この世界コマ大戦を仕掛けたのが、緑川氏だ。
世界コマ大戦は、直径25センチの円形土俵の上で、直径2センチ以内の小さなコマ同士が、“長く回り続ける”ことを競う大会だ。
会場はまるで人気の格闘技会場のようだ。対戦するチームの紹介VTRが流れ、煽るような実況の声が会場に鳴り響く。小さな土俵の周りを無数のマスコミのカメラが囲み、行司のかけ声で2つのコマが対決する。各チームの代表が自分の手でコマを回す。強く回しすぎて土俵から出てしまう失投もある。何が起こるかわからないのが、この競技の面白さだ。
相手のコマをはじき飛ばし、勝負が一瞬で決まることもあれば、コマ同士がぶつかり合いながら土俵上で回り続け、どちらかが倒れるまで数分かかることもある。勝負がつくと会場の観客がどっと沸く。コマの戦いとは思えない雰囲気だ。
この日は、国内予選を勝ち抜いた18チームと、東南アジアや南米など7カ国11チームの計29チームがトーナメント方式で戦った。2連勝すると勝ち上がる方式で決勝に進んだのは、愛知県のチームとインドネシアのチームだった。
世界コマ大戦の名前の通り、2カ国による決勝となったが、ジャイロスコープを内蔵したユニークなコマで勝負した愛知県のチームが接戦の末、初優勝した。
●着想からわずか3年で世界大会へ成長
この世界コマ大戦は、2012年2月に開かれた「第一回全日本製造業コマ大戦」から数えて3回目の大きな大会となる。第一回目は中小企業の展示会の小さなブースで行った。国内の21チームが戦う企画だった。そこからわずか3年で、大ホールを貸し切り、世界7カ国から400チームが参戦し、総務省・外務省が後援する世界大会へと大成長した。
14年には地方予選や全国大会をはじめ、イベント会場で行う特別場所、海外で行う海外場所など合計72大会が開かれ、参加数も国内外合わせると1444チームを数えた。中小企業が技術を競い合うメジャー大会となった世界コマ大戦だが、これは緑川氏のひらめきから始まったのだ。
08年に結成された、製造業に関わる経営者集団「心技隊」の隊長だった緑川氏は、中小企業の展示会のブースに人を集めるための企画を考えていた。11年に「ものづくり流行語大賞」を発案し、表彰式を行うなどして話題を集めたが、もっと多くの人を集める企画はないかと模索していた。
仲間の飲み会で、ある企業が作った小さな金属製コマの存在を知った。1円玉よりも小さなコマが3分以上も回り続けると聞き、緑川氏は直感的に「これはいける」と感じたという。
「小さなコマなら、旋盤で簡単に作れる。旋盤は製造業ならほとんどが持っており、材料も端材を使えるため、費用面で負担にもならず誰でも参加できる。コマ同士を戦わせる企画は盛り上がると思いました」(緑川氏)
飲み会での何気ない会話からコマ大戦を着想したのだ。緑川氏はすぐに概要をまとめて翌日にはFacebookで公開し、4カ月後に行われる中小企業の展示会で大会を開催すると宣言した。すると、すぐに同業者から参加表明があり、しかも地方の製造業からも手が挙がったのだ。想像以上の反応に、緑川氏は手応えを感じたという。
ミナロは、木型や模型の製造を手がける町工場である。コマ大戦に使用する直径25センチの土俵は、ミナロが手がけているケミカルウッド(人工木材)を使用することにした。それは、金属の土俵ではコマを傷つけるが、ケミカルウッドは柔らかくコマを傷つけない。さらに、コマの回転によってわずかに削られていくので、競技が進むにつれ、コマに予想外の動きを生み出すことになる。それによって競技としての面白さを演出することができるのだ。
さらに緑川氏は知恵を巡らした。中小企業の出展ブースで人を集めたとしても、その時だけの盛り上がりで終わってしまうのは明らかで、もっと大きなムーブメントにするためにマスコミを巻き込むことを画策したのだ。知人の日刊工業新聞の記者に声をかけ、さらにNHKにも声をかけた。どちらも興味を示し、特にNHKの取材班は大会だけでなくコマの製造段階から密着取材をしてくれることになった。
NHKでの放送が決まったことで、スポンサーも集めやすくなった。Facebookでスポンサーを募集すると、すぐに集まった。土俵にスポンサーのロゴを入れ、さながらプロ格闘技のリングの雰囲気となった。
●創造性豊かなコマが誕生
12年2月2日、パシフィコ横浜で開催された工業技術見本市「テクニカルショウヨコハマ」のブースの一角で、記念すべき第1回大会が行われた。緑川氏の読み通り、多くの見学者が訪れ、大盛況となった。
オープン参加制としたので、参加した21チームは多彩だった。全国から集まった製造業の中小企業だけでなく、専門学校のチームや日刊工業新聞のチームも参加した。コマも多種多彩で、材質はチタン製もあればレアメタルのモリブデンを使用した高価なコマもあった。形も丸形をはじめ、対戦相手を弾き飛ばす突起がある異形コマ、さらに芯を振り回すように回転する暴れコマなど、もの作りのプロの威信をかけた自信作が集まった。この伝統は今回の世界コマ大戦にも受け継がれ、ジャイロスコープと電子制御を内蔵したコマや、回転することで変形する変身コマなど、既成概念を打ち破るコマが誕生し続けている。「直径2センチ、高さ6センチ以内なら、素材・重さ・形の制限はない」という緑川氏の自由なルール設定が、この創造性を引き出したといえるだろう。
第1回大会は、緑川氏が仕掛けた通り、当日夜にはNHKのニュース番組で取り上げられた。その後、新聞や雑誌、インターネットニュースでも次々に取り上げられ、瞬く間に全国に知れ渡るようになった。そしてついには、今年の世界コマ大戦へとつながっていったのだ。
民間主導のオープンな企画が、日本全国のみならず世界の製造業を巻き込む大会となったのは、長い日本の製造業でも史上初の出来事ではないだろうか。役所や既存組織主導の企画は数多くあるが、予算が削られたり、補助金がなくなって自然消滅するものが多い。参加する側も「どうせそんなものだろう」と、付き合い程度で参加するので、どうしても意欲も低下する。
しかし世界コマ大戦は、そんな雰囲気がまるでない。参加企業は本業のかたわら寝る時間も惜しんでコマを研究し、試作品も何十と製作し、改良に改良を加えた自信作で本大会に臨む。技術とプライドをかけた真剣勝負である。
●コマ大戦開催の真の目的
そんな世界コマ大戦を開催する目的について、緑川氏は次のように語る。
「中小企業はどうしても下請け意識から抜け出ることができません。この大会を通じて、積極的に自ら情報発信を行い、全国の製造業同士が交流を行うことで、中小企業全体を盛り上げることが最大の目的なのです」
実際、参加した企業には仕事の依頼が舞い込むことが少なくないという。参加企業にとっては、自社の技術力を披露する格好の場となっているのだ。さらに製造業同士の横のつながりができることで、新しいチャンスが生まれるという副産物もある。下請けでは自社製品がどのように使われているかわからないことも多い。しかし、世界コマ大戦では、目の前で自社製品が使われているのを目にするため、現場の製造意欲も向上するという。これは既存の展示会では実現できないことだ。
第1回から今回の世界大会まで、関係者はずっと手弁当で運営している。今では多くの協賛金が集まるようになったが、今大会では1500万円の経費がかかっており、利益は出ていないという。それでもやり続けるのは、緑川氏の熱い思い=志があるからだ。
「中小企業が主役になる時代を作りたいのです。これまでは、中小企業から出される政策提言のほとんどが採用されることなく終わっています。労働者の7割が中小企業で働いているのに、大企業優先の政策だけがまかり通り、このままでは中小企業、国民が報われる時代が来ません。そこで、中小企業からの情報発信を増やし、マスコミを動かし、行政も動かざるを得ないようにしたいのです。ゆくゆくは中小企業庁を中小企業省に格上げしてもらい、中小企業大臣を輩出したいと考えています。たとえ、それが20年かかろうとも、私は決してあきらめません」(緑川氏)
13年2月、全国の大会経験者58名が集まり「特定非営利活動団体 全日本製造業コマ大戦協会」を発足し、全国の製造業をつなぐネットワークを確立させた。14年には、「平成25年度 地域づくり総務大臣表彰」を受賞し、国からも注目される活動となった。今年の世界コマ大戦によって、海外でも「KOMATAISEN」という言葉が浸透しつつあるという。
ミナロも大変ユニークな会社として注目されている。今では数少ない木型の模型製作ができる会社として、大手自動車会社や造船会社からの模型製作依頼が絶えず、有名なアニメ作家から依頼を受けたこともあるという。その活動内容は、2月に発売され話題となっている『実践 ワーク・ライフ・ハピネス2』(著:阿部重利、榎本恵一、監修:藤原直哉/万来舎)において詳細なレポートが書かれているので、ぜひ参照してほしい。
本当の意味での中小企業の幸せ=「ハピネス」を追い続ける緑川氏の不屈の精神が、コマ大戦の奇跡を生み出したといえるだろう。その意欲は衰えることなく、夢はますます膨らんでいる。緑川氏は今、近未来の新しい構想を描いているという。
「20年の東京オリンピックと同じ時期に、世界コマ大戦を東京で開催し、世界中に日本の中小企業のすごさを発信したい」(同)
もはや国に頼る時代ではない。一民間人でも世界を動かすことができるのだ。
緑川氏の志は日本だけでなく、世界をも動かす時が来るだろう。筆者は今回の取材を通じて、そう確信した。
鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネス・プロデューサー
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