http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/678.html
Tweet |
EVやFCV、そして自動運転と、車の進化はとどまるところを知らない(写真はトヨタ自動車のFCV車「MIRAI」の発表会。撮影:梅谷秀司)
自動運転の最先端、5年後トヨタの「本当の敵」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150326-00064325-shikiho-bus_all
会社四季報オンライン 3月26日(木)20時1分配信
10年後の世界人口は現在よりも15億人も増え87億人。一方、日本は人口減少に加えて超高齢社会。遅くとも2045年にはコンピュータが人間の知性を超え、多くの業務がロボットやソフトに置き換わるーー。こうしたテクノロジーが出現してくる近未来を見据えた投資術として、第3回は「自動運転」について。
■ 900キロメートルの自動運転を成功させたアウディ
毎年1月に米国ラスベガスで開かれるコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)。世界最大級の家電見本市として例年注目を集めているが、今年の目玉は自動運転車だった。
独アウディは米国西海岸のカリフォルニア州シリコンバレーからネバダ州ラスベガスのCES会場まで900キロメートルの道のりを自動運転で車を走らせた。開発チームにより親しみを込めて“ジャック”と名付けられたこの車は、米国人ジャーナリスト5人を乗せ、最高速度時速110キロメートルを出して、自動的に車線変更や追い越しを行い、2日間かけて目的地のCES会場にたどり着いた。この模様はYouTubeにアップされ、2万回以上が再生されている。
米国カリフォルニア州やネバダ州ではすでに自動運転に関する法律が制定されている。ネバダ州では2011年に法律を制定、12年にはグーグルが所有する自動運転車に対して赤地に無限大のマークを左端に添えた自動運転車専用のナンバープレートを発行している。
両州の自動運転に関する法律では、必要な場合には車をコントロールできる「経験あるテスト・ドライバー」の乗務などが義務づけられている。しかし“ジャック”と名付けられたアウディの自動運転車は、高速道路を走る際には人間の手助けを必要としなかったという(同乗者が写真を撮りたいから走行レーンを変えてほしいといった「理にかなっていない要求」をした際には、人の手を必要としたし、街中では人間の手助けを求めることもあった)。
公道での900キロメートルにも及ぶ公開走行のノウハウ蓄積を生かし、独アウディは3月10日に「今から2年後の17年には自動運転車を市販する」と発表した。
■ メルセデスのコンセプトカー
ラスベガスのCESではメルセデスが発表したコンセプトカーも注目を集めた。この車の車内はまるでリビングルームのようであった。対面式シートでゆっくりくつろげるようになっていて、会話を楽しんだり、メールをして仕事をしたり、あるいは寝ている間に目的地にたどり着く。メルセデス技術陣は「本来、自動運転車とはこういうものだ」とのコンセプトを示した。
BMWも負けてはいない。彼らの全自動パーキングシステムは駐車場で車を降りると、車が勝手に空いている駐車スペースを見つけ、自分で駐車し、エンジンを停止する。オーナーが用事を終えて駐車場に帰ってくると、車は自動でエンジンを始動、迎えに来てくれる。オーナーは手首のスマートウォッチで指示するだけ。高級ホテルのバレーパーキング並みのサービスを自分の車が自らやってのけてくれる。
■ かつて先行していた日本企業
自動運転では欧州勢の動向が最近注目を集めているが、日本企業も決して遅れているわけではない。そもそもこの分野は日本が得意としていた分野であり、かつては世界の先陣を切っていた。
今をさかのぼること12年前の03年、デンソー <6902> は、トヨタ自動車 <7203> と共同で、ミリ波レーダーセンサーで前方車両や障害物との衝突を予測し、衝突前にシートベルトの巻き取りやブレーキ制御を行うシステムを開発。同年2月発売のトヨタ・ハリアー向けに世界で初めて搭載した。ただこのシステムは完全に車を止めるまでには至らなかった。自動停止機能は当時の日本の規制で禁じられていたからである。
その後09年、スウェーデンのボルボが日本の規制当局と18カ月間交渉した末に、自動ブレーキシステム搭載の車の発売にこぎ着けた。そして10年、富士重工業 <7270> が、日立製作所 <6501> 、日立オートモティブシステムズと提携して開発したアイサイトを進化させた「アイサイト(ver.2)」をスバル・レガシィに搭載。テレビCMが話題を呼び、自動ブレーキは日本で瞬く間に普及していった。
トヨタ自動車やホンダ <7267> は、昨年9月の「第21回ITS世界会議デトロイト2014」(ITSはIntelligent Transport Systems(高度道路交通システム)の略)に出展。ミリ波レーダーやカメラなどによる先行車との距離確保、レーン(走行車線)コントロールなどの「高度運転支援システム」((注)ホンダでは「先進安全運転支援システム」という)の公道でのデモ体験を参加者に対して提供した。デトロイトでのデモ走行の模様は両社のケースともYouTubeにアップされている。
一方、日産自動車 <7201> は昨年7月、自動運転技術の投入スケジュールを発表。16年末までに、混雑した高速道路上で、自動でハンドルやアクセルなどを操作して走行するトラフィック・ジャム・パイロットを市場に投入、さらにほぼ同時期に、運転操作が不要な自動駐車システムも幅広いモデルに投入するとしている。
■ 人工知能からのアプローチ
自動運転の世界で日本企業にとって脅威となるのは、メルセデスのような同業のドイツ勢ではない。実は、まったく別のアプローチを取って、この分野に進出してくるグーグルやアップルなどのIT企業こそが脅威なのだ。
日本企業が「運転者を支援するシステム」といった形で自動運転の技術開発に取り組んでいるのに対して、グーグルは最初から人工知能を搭載した車をつくり、人工知能に車の運転技術を「学習させ成長させる」との発想である。
事実、グーグルが昨年5月に発表した自動運転車にはハンドルやアクセル、ブレーキペダルがなかった。プロジェクトリーダーのクリス・アームソン氏は「なぜならそれらは必要ないからだ。われわれが開発したソフトウエアとセンサーがすべての操作を行う」とグーグルの公式ブログで説明した。
可愛らしいコアラのような顔をしたこの試作車に乗ったグーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は、「乗ってすぐに私は電子メールを始めて、そこにいることを忘れていた。スキーリフトに乗っているような感覚だった」と語った。
現在のカリフォルニア州の自動運転に関する法律では、グーグルのこの自動運転車は公道を走れない。そこでグーグルが昨年12月に発表した公道実験用の自動運転車では、規制に従って、ハンドルやアクセル、ブレーキなどが装着されたものとなった。
しかしグーグルの狙いはこれらの装置を取り外して自動運転車が公道を走ることだろう。クリス・アームソン氏は「グーグルは半自動機能の開発には関心がなく、完全な自動走行を望んでいる」と語っている。
■ 「最も重要なのはカーナビのログデータ」
自動運転の技術はハードとソフトから成り立つ。ハードは、GPS、ミリ波レーダー、ビデオカメラ、レーザー・レンジ・ファインダー(ライダー)などのセンサー。これらセンサーから入ってくる情報を処理し、自分やほかの車の位置を確認し、障害物の回避を行うのが、ソフトである。
日本企業はハードの開発を起点とし、これに沿ったソフトの開発といったアプローチを得意とする。しかしながら人工知能の開発を進めるグーグルの視点はソフトを出発点とするものだ。
携帯端末の市場では、かつてノキア、エリクソン、ソニー <6758> といった会社が市場を席巻していた。これに対してグーグルは「アンドロイド」、アップルは「iOS」というモバイルOSを押さえることで、スマホ市場の主導権を握るようになった。これと同じことが将来の車の市場でも起こるかもしれない。政府系研究開発機関のある幹部は「これからの車を考えた場合、最も重要なのはエンジンやモーターではなくて、カーナビのログデータかもしれない」と語っている。
■ トヨタのディープラーニング研究
少なくともこれから先の4〜5年は日本やドイツ、米国などのカーメーカーが自動車市場の中心的プレーヤーであり続けるだろう。自動運転技術の進化で運転者はより高度で先進的な支援を車から受け、快適なドライブを楽しむことができるようになるはずだ。
しかし5年以上先を見据えた場合、グーグルやアップルのような発想で開発された自動運転車が市場で存在感を増すようになっているかもしれない。いずれはタクシーやハイヤーの運転手やトラック輸送の運転手がいない世界が到来するかもしれないのだ。
日本の自動車会社はグーグルのようなIT企業が進出してくるのをどう迎え撃つのだろうか。あまり知られていないことなのだが、トヨタ自動車の社会貢献活動の一環として設立された豊田工業大学。ここのシカゴ校であるToyota Technological Institute at Chicagoという大学院大学は人工知能「ディープラーニング」の分野で先端の研究を行い、世界的な注目を集めている。
携帯端末では市場競争のゲームチェンジを引き起こすようなパラダイムシフトが起きた。自動車でもそういったことが起きる可能性があるが、今度こそは「日本企業が手をこまねいてみている」といった状況に陥るわけにはいくまい。
■ ポルシェ博士の予言
自動運転車が支配するという近未来の社会を考えるうえで見逃せないポイントが一つある。かつてポルシェ博士は「仮に人類がたった1台しか車を持つことが許されないとしたら、それはスポーツカーになるだろう」と語ったといわれている。
ディズニーランドでゴーカートを楽しむ子供の無邪気な顔を見ればわかるように、「自分で車を運転する」というのは人間の本能的欲望に近いものだ。自動運転車が行き交う世の中になったからといって、運転を楽しむ人たちの車がなくなることにはつながらない。
もちろん、だからといって、「自動運転をめぐる開発レースの手綱を緩めていい」というわけではないのだけれども。
いわさき・ひでとし●プライベート・エクイティ投資と経営コンサルティングを手掛けるインフィニティ代表。22年間の日本興業銀行勤務の後、JPモルガン、メリルリンチ、リーマンブラザーズの各投資銀行を経て現職。日経CNBCテレビでコメンテーターも務める。近著に『残酷な20年後の世界を見据えて働くということ』(SBクリエイティブ刊)。
※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
岩崎 日出俊
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。