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江東区に異変 なぜ爆発的人口増で窮地?小中学校や高齢者施設が足りない!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150326-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 3月26日(木)6時2分配信
かねてより、近い将来に日本は人口減少社会に突入すると言われ続けてきた。その前段階として少子高齢化が叫ばれ、政府のみならず基礎的自治体の市町村でもそれらの解消に努力を続けている。しかし、有効策を講じられないまま時間だけが経過した。2005年、日本の出生率は戦後最低となる1.26を記録。これは政府や地方自治体に多くの波紋が広がり、「1.26ショック」などと呼ばれた。現在、出生率はわずかに持ち直しているものの、依然として低水準にある。
政府の無策に痺れを切らしたのが、日本創成会議だった。昨年、日本創成会議は全国の896自治体が消滅するという、衝撃的なレポート(通称:増田レポート)を発表。政府の政策に警鐘を鳴らした。
日本創成会議の座長・増田寛也氏は前岩手県知事で、第一次安倍晋三内閣・福田康雄内閣において総務大臣を歴任している人物だ。それだけに、増田レポートを机上の空論と容易に受け流すことはできない。
増田レポートは地方自治体に動揺を与えた。増田レポートでは、若者で活気あふれる池袋を擁する豊島区でさえ消滅可能性のある自治体としてリストアップされているのだ。豊島区でさえ消滅する――それに恐れを抱いたのは、過疎化に悩む地方都市ばかりではなかった。現在、東京23区などの自治体が多くの人口を維持できているのは、進学や就職で地方から上京する若者がいるからだ。東京23区は地方都市よりも圧倒的に出生率が低いのだから、安穏とはしていられない。
増田レポートは政府の態度を大きく変えさせた。第二次安倍改造内閣では、地方創生担当大臣に石破茂氏を起用し、東京一極集中の是正と地方の過疎化・少子高齢化への対策に着手した。
●人口が急増する江東区
そうした人口減少に苦しんでいる自治体が多数ある中で、ここ10年間で10万人以上も人口が増えた自治体がある。それが東京都江東区だ。江東区の人口は1999年に約37万5000人だったが、10年後の2009年には45万5000人、そして最新の15年3月時点では49万3000人にまで増加している。
江東区の人口が急増した背景には、臨海部の埋め立て事業がある。50年前の地図と現在の江東区の地図を比べれば一目瞭然。同じ区とは思えないほど、区域が変貌している。埋め立てられた臨海部は大規模な開発が進められ、デベロッパーによって高層マンションの建設が相次いだ。
千代田区や港区と比べると、同じ臨海部でも江東区の不動産価格は3割ほど安い。安価な不動産価格という要因に加え、06年に豊洲に「アーバンドック ららぽーと豊洲」がオープン。これまで、江東区の湾岸エリアは工場や倉庫といった工業エリアであり、生活するには便利とは言い難かった。ところがアーバンドックが起爆剤になって、豊洲エリアには商業施設が集積。ニューファミリー層が次々と転入する人気のエリアに変貌。隣接地区にも、波及している。
「江東区の人口増加は豊洲だけが語られやすいのですが、決して豊洲だけの現象ではありません。工場跡地などが再開発されたことで、高層マンションが建設されている亀戸や有明、南砂といったエリアでも人口は急増しています」(江東区企画課)
江東区役所では今年中に人口50万人を突破すると見込んでおり、29年までの長期計画でも人口は58万5000人に増えると予測している。
●急激な人口増が生む、新たなゆがみ
ほかの自治体から見れば、江東区の人口急増現象はうらやましい限りだろう。しかし、人口が増加することを手放しで喜んでばかりはいられない。急激な人口増は新たなゆがみを生じさせた。
江東区の人口増は、出生率の上昇で起きた自然増ではない。ほかの自治体からの転入者によって人口が増加した、いわば社会増だ。江東区で暮らす夫婦のもとに子供が生まれ、その結果の人口増であるならば、それほど問題にはならない。だが、転入者となると、事は簡単ではない。
ニューファミリー層が転入してくる場合、その多くはすでに小学生や中学生を抱えている。大人と違い、子供たちは引っ越し翌日から学校に通わなければならない。これが出生率向上による人口増なら、出生から小学校の入学までには約6年の時間的余裕があるため、行政はその間に学校を整備することが可能だ。しかし転入者だと、そうはいかない。
転入者の増加を受けて、江東区は急ピッチで小中学校の新設や増設を行ったが、受け入れ体制は人口の爆発的増加に追いつかなかった。
「人口の増加は自治体の活力になるものですから、基本的には歓迎すべきことです。しかし、受け入れる行政側にもインフラ整備などの責任があります。江東区では人口の急増に対応が遅れてしまい、受け入れが困難になりました。そこで、03〜07年までの4年間、条例で人口増を抑制する『受入困難地区指定制度』を制定し、マンション建設を抑制したのです」(江東区企画課)
マンション建設が制限されたことで、江東区の人口予測は下方修正された。しかし、条例が失効した後、江東区内のマンション建設は再び活性化する。当然ながら、人口も増え続けた。
現在、江東区はマンション建設の抑制はせず、インフラ整備をスピードアップさせて対応している。
●多子高齢化に悩む
人口増加で江東区を悩ませるのは、インフラ整備の遅れだけではない。江東区が推計している24年の年齢区分別比率のデータを見ると、区全体の人口が増加しているにもかかわらず、65歳以上の高齢者の割合は微増している。
「特に75歳以上の後期高齢者の問題は深刻です。人口推計では後期高齢者は29年まで増え続けます。人口比率で見ると、29年には75歳以上の高齢者が人口全体の11.8%に達するという推計が出ていますから、江東区としては今から早急に対策を講じなければならないのです」(江東区企画課)
従来、人口ピラミッドは子供の層が厚く、上に行くに従って細くなるのが理想とされる。人口が増加している自治体ならば、理想に近いピラミッド形になる。ところが、江東区の人口ピラミッドは今後もいびつな形のまま推移する。いびつな人口ピラミッドを形成した一因は、先にも触れた転入者による人口増加だ。
子供が増えても高齢者も同じ勢いで増える江東区の現象は、一部の区議会議員から「多子高齢化」と形容される。一見すると、多子高齢化に問題はなさそうだが、そうではない。
子供の数が増加すれば、それに見合った数の保育園や小中学校を整備しなければならない。他方で高齢化が進めば、高齢者を対象にした施設を建設しなければならない。江東区は、これら両者を同時にこなさなければならない板挟みに直面している。
江東区15年度予算を見てみると、その内訳は福祉が45.7%、教育が15.0%なっており、合わせて6割超を占める。多子高齢化のために福祉や教育に予算を割かなければならず、どうしても防災対策や道路整備、地域振興、美化・緑化などの予算が手薄になってしまう。
江東区は20年の東京オリンピックのメイン会場となるために、それらの準備にも予算を割かなければならない。さらに、築地市場の移転予定地となっている豊洲新市場の整備も急務とされている。このように、江東区には行政課題が山積している。
日本全体を覆っている人口減少という苦境とは真逆の状態にある江東区は、地方消滅とは無縁だ。しかし、どこの自治体も経験したことがない多子高齢化という奇妙で新しい社会問題に直面し、必ずしもバラ色の行政運営ではないようだ。
小川裕夫/フリーランスライター
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