http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/622.html
Tweet |
「商品見てるだけ」の客が財布の紐を緩める瞬間
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150324-00014830-president-bus_all
プレジデント 3月24日(火)11時15分配信
■なぜ、客は「自分に似た人」に心を開くか
相手との心の距離を縮めるには、まずその人物との類似点を探し出すことが必要になる。
ある晩、女性から「あなたに無料招待券が当たりました」という電話がかかってきた。
私はかつてネットの懸賞などに度々応募していたので、そのひとつかと思って話を聞くと、その女性は「招待券を送ったのですが、届いていますか? 」という。招待券? そんなものは届いていないと告げると、「念のため、住所を確認させて下さい」と言ってきた。
後に、数多くの潜入取材をして知ったのだが、これは封書を送ったことにして、こちらの住所を聞き出す手口だ。当時、それを知らなかったので正直に住所を伝えた。すると今度は「数分で終わる簡単なアンケートをお願いしたい」と言い出し、「今、関心のあることは何ですか? 」などの質問が始まった。
出身地を尋ねられたので正直に答えると、女性は「え〜本当ですか! 私の出身大学もその県にあります」。
スポーツは何かしているかと尋ねてきたので、「テニスです」と答えると、この女性も「錦織選手の打つダウン・ザ・ライン(サイドラインに沿ってストレートに打つ打球)って、すごいですよね」などと、これまた共通の話題で話に花が咲いた。
冷静になって考えればヘンな話だが、そのときは彼女との共通点が多くなればなるほど、次第に心が通じ合ったような気になっている自分がいた。
数日後、私はこの女性に誘われ食事をすることになった。だが、そこで女性は馬脚を現す。本当の目的は、私に会うことなどではなく、勧誘することだった。私と会うや否や、宝石店に連れていき、そこで、しつように100万円を超える高額なネックレスを購入するように勧めたのである。
▼アナロジー(類推)力で客を攻略
女性は電話での会話のなかから、私と接点のある部分をピックアップして話を盛り上げた。人は、相手との共通点が多くなればなるほど、その人に興味を持つようになる。その心理を利用して心の距離を縮め、最終的には、私に好意を抱かせるまでに至った。こうした恋愛感情を利用して、高額商品を売りつける商法は今もなお行われている。
読者の皆さんも仕事で知り合った人と懇意になろうとするとき、その相手との共通点を探しながら話を進めているに違いない。また、仕事上で何かしらのトラブルに見舞われた時、その事態に対処するため、過去に経験した似たような事象を思い浮かべ、今、目の前で起きている事象との共通点を探しながら、対処法を考えることもあるだろう。
こうした思考法は、アナロジー(類推)と呼ばれる。
アナロジーは病気を治療する医者の姿を思い浮かべれば、わかりやすい。医者は、問診で患者から症状を聞き、過去に同じような症例がなかったかを考えて、病気の原因を絞り込みをしつつ治療法を考える。
最近、様々な健康番組を見ながら思うのは、名医といわれる人に共通するのは、患者の病状を的確に把握し、頭の中にある数多くの症例からアナロジーして、患者にベストな治療を施す点である。これはビジネスにおいても同じで「アナロジー力」は経験量に比例している。
■なぜ、ケチなオードリー・春日俊彰は高額品を買ったか
冒頭で紹介したような詐欺や悪質業者らは次々に電話をかけ、失敗や成功を繰り返して経験値を数多く積むことで、どうすれば相手の心を最短距離で誘導できるかのアナロジー能力に長けている。違法行為を褒めることは絶対にできないが、これまで私は様々な悪質な勧誘業者の手の内にあえてのり、ルポしてきたのでそのことを痛感している。
また、私はこうしたルポの積み重ねによって、詐欺や悪質商法の手口について、人よりも多くの経験を積む機会に恵まれるとともに、おかしな話だが、知らず知らずのうちに、彼らの持つアナロジー能力も体得するようになった。
私はしばしば詐欺や悪質商法の手口で芸人や役者をドッキリでひっかけるドキュメント・バラエティ番組の監修や解説を依頼されることがある。その時にこうした経験が役立つことがある。
番組のひっかけ企画でよく採用されるのが、絵画商法だ。これは「絵を見るだけでいいから」といって、販売会場に連れ込み、一通り絵を見終わった後、気に入った絵を言わせて、なし崩し的に商談を進める手口だ。
▼相手の特徴や性格を逆手に取る
たいがいの芸能人は思いもよらない事態に購入に対して躊躇する。
そこへ悪質な販売業者になりきった役者さんが見事な話術で契約を迫るのだが、それでも相手が購入に前向きにならず、こう着状態に陥る時がある。そこで番組監修担当の私が過去の経験からアナロジーして、その事態を打開する方法をアドバイスする。
例えば、お笑い芸人・オードリーの春日俊彰さんの場合。ご存じの方も多いと思うが、彼は無類のケチである。有名人になった後も、家賃数万円の安いアパートに住んでおり、解説ブースにいた相方の若林正恭さんも、「あいつはケチだから、家賃より高いものは買わないよ」と言っていた。
実際、春日さんは最初、絵の購入には前向きではなかった。ただ私は、テーブルに置いてある飴を次々に頬張り、つがれたアイスコーヒーをすべて飲むという彼の行動に着目した。「もらえるものはすべてもらいたい」という性格なのだろう、と推測できた。
ケチは、よい表現をすれば「節約化・倹約化」である。払うお金は少なくして、堅実にお金を貯めたいタイプだ。そこで、私が思いついたのが、「絵を買ってホテルに貸し出しして、定期的に報酬を得る」というトークだった。これは過去に実際にあった詐欺事例から、アナロジーした方法である。
騙し役の役者さんに春日さんに対して、次のように言ってもらうことにした。
「最初に絵の購入代金としての数十万円を持ち出すことになりますが、ゆくゆくはホテルなどへの貸し出しでお金が入るので、最終的にはお金が増えることになりますよ」
すると、あれだけ後ろ向きだった春日さんは「それはいい話だね」という表情を浮かべ、購入に前向きになったのだった。
■なぜ「商品見るだけの客」が買ったのか
一方、ベテラン俳優の伊吹吾郎さんの場合。入室時からテレビ番組「水戸黄門」の角さんなみの威厳のある声と、「見るだけ」の姿勢を堂々と貫いており、とても絵を買うという雰囲気にはならなかった。
スタッフの間にもとても購入は難しいという雰囲気が出ていた。
しかし、私は彼の一連の行動に「男気」というキーワードを見出した。彼の言動には、面倒見の良い親分肌の性格が感じられた。そこでディレクターを通じて、役者さんに次の話をしてもらった。
「この絵を買うことで、あなたが画家を育てることにつながるのですよ」
これを聞いた伊吹さんの購買意欲が次第に前向きになっていき、最終的に、気に入った一枚の絵の購入の契約をするに至ったのである。
まず相手の一連の言動から、その人となりをできるだけ正確に分析し、余計な情報を取り除いて、シンプルなモデルパターンにした。それは、春日さんでいえば「質素・倹約化」であり、伊吹さんであれば「男気・親分肌」である。そして過去の事例と付き合わせながら、今、何をするのが効果的なのかを考えたわけである。
▼客の性格や行動パターン別の攻略法
ビジネスでも客にどんなアプローチをすればよいか迷った時は、まず相手の性格や行動パターンを見抜き、シンプルな形にしてみることだ。
例えば、「疑い深い性格」の相手であれば、信頼関係をつくりたいばかりにへりくだり過ぎて、「お世辞を言う」「プレゼントをあげる」といったあからさまなヨイショ行為をすれば、逆に「何か、裏があるな」と勘繰られて、さらなる疑念を増すだけである。
とすれば、この相手には、こちらの腹にはイチモツもないことを伝えるために、自らの失敗談など恥ずかしい情報をわざと切りだしたり、デメリット情報などを先に開示したりする必要がある。
逆に、相手が心に垣根のない人であれば、デメリット情報は先に出す必要はなく、相手の心がさらに開くようなポジティブな会話をして、何でもいえる信頼関係から築くようにすることが先決になる。
現状分析からシンプルなモデル化をして、過去にストックされた経験値からアナロジーする。これにより、相手を誘導するためのベストな対処法が見えてくるものなのだ。
ルポライター 多田文明=文
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。