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15年、20数年ぶりの明るい経済指標が続出し、景気は好循環へ
http://diamond.jp/articles/-/68885
2015年3月24日 宅森昭吉 [三井住友アセットマネジメント理事・チーフエコノミスト] ダイヤモンド・オンライン
春の訪れとともに、経済指標の内容も段々と明るくなってきた。代表例としては、2月・3月発表分連続で、景気動向指数の判断が、それまでの弱めの判断から「改善」になっていることが挙げられよう。
春闘での賃上げ実施のニュースなどがプラスに作用し、消費者のマインド指標にも改善の動きがみられる。身近なデータでは、ほどほどに多い花粉飛散数が医療費中心に今春の個人消費をサポートしそうだ。
最近は、「15〜17年ぶり」、あるいは「22〜23年ぶり」といった金融危機、バブル崩壊といった過去の問題を克服したことを示唆する明るいデータが散見される。景気は2015年度を迎え、経済の好循環が回り始めていると思われる。
■今年の花粉飛散数は個人消費をサポートか
春闘での賃上げのニュースなどがプラスに作用し、消費者の景況感が少しずつ明るくなってきた。
「消費動向調査」の消費者態度指数(一般世帯・季節調整値)は2月分で40.7と昨年8月分以来半年ぶりに40台まで戻ってきた。「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI・季節調整値は2月分で50.7へ回復、消費税率引き上げ直前の昨年3月分の53.4以来11ヵ月ぶりに景気判断の分岐点である50を上回った。
身近なデータではこの春は花粉の飛散数が医療費の面から、個人消費にプラスに働きそうだ。今年の東京・大田区の花粉飛散数予想値(最大・最小の平均)は、85年〜2014年の30年間の実績平均値を100とした指数で122。飛び始めから約1ヵ月の3月15日現在で60である。一昨年は132で歴代第9位、昨年は100で歴代11位であった。今年は両者の間で歴代第10位程度に相当しそうだ。
05年のように369とあまりに多く花粉が飛ぶ年は、人々が外出を控えることから個人消費にはマイナスに寄与するが、100の前半台程度でほどほどに飛ぶ年は消費にプラスに働く。今年3月分の家計調査の前年同月比は、昨年の駆け込み需要の反動でマイナスにはなってしまうが、花粉飛散数はマイナス幅縮小要因になりそうだ。
■15〜17年ぶりに金融危機以来の落ち込みを克服する明るい指標
日経平均株価は、景気ウォッチャー調査・現状判断DIが上昇トレンドに転じ、1ポイント以上前月差で改善するという買いサインが1月13日に点灯したことを受け、その日の終値1万7087円71銭から上昇し、終値ベースで3月13日以降直近19日まで連続して1万9000円台に乗せている。
日経平均株価の1万9000円台は、2000年4月以来約15年ぶりの水準だ。つまり、98年頃の金融危機とそれに続くIT景気以来ということになる。金融危機以来の落ち込みをやっと克服したことにつながる節目の数字と言えよう。
2000年4月中旬の日経平均株価の終値をみると、週末の14日に2万0434円68銭と最後の2万円台をつけた。4月15日土曜日には日経平均株価採用銘柄のうち、30銘柄を24日から入れ替えることが発表された。日経平均株価は週明けに急落し、17日に1万9008円64銭、18日1万8969円52銭、そして19日に一旦1万9086円62銭に戻したが、それが当時、最後の1万9000円台になった。今回はそれ以来の1万9000円台である。
約15〜17年ぶりに見る良い数字というデータは、他にも結構ある。
例えば完全失業率は14年12月分で3.4%まで下がったが(15年1月分は3.6%)、これは97年8月の3.4%以来、約17年ぶりのことである。
年間自殺者数は98年に初めて3万人を超え、03年には過去最悪の3万4427人を記録した。10年からは減少基調になり、12年に2万7858人と15年ぶりに3万人割れとなった。その後14年の2万5427人まで3年連続3万人割れ、今年も1〜2月平均で前年比▲4%の減少なっている。
中央競馬の売上(売得金)の前年比は、98年から11年まで14年間連続してマイナスだったが、これも15年ぶりに12年にプラスとなり、その後12年から14年まで3年連続プラス、今年も3月15日現在1.4%増のプラスとなっている(表1)。
前回述べたようにプロ野球セ・リーグで、広島のチーム成績とその年の名目GDP成長率の間には相関関係がある。広島Aクラスは山一證券、北海道拓殖銀行の経営破たんが起こった97年11月直前の97年シーズンまでで、その後2013年にAクラスに戻るまで、15年間連続Bクラスであった。
■約22年ぶりの明るいデータも出現
さらに約22〜23年ぶりの明るいデータものも多い。22年ぶりというとバブルが崩壊した91年直後の92〜93年以来の水準ということになる。これはバブルのピークに近いところまで戻ってきたということを示唆する。
日銀短観の中小企業・非製造業・業況判断DIは、2013年12月調査でバブル崩壊直後の92年2月調査以来、約22年ぶりにプラスになった。ただし14年12月調査では▲1になった。しかし、3月2日に日銀が発表した調査対象企業定例見直し後の新ベースでは、14年12月調査は+1のプラスである。
雇用吸収力がある業種が多い非製造業の景況が持ち直したことで、14年12月分、15年1月分の有効求人倍率が1.14倍に上昇し、92年4月の1.14倍以来約23年ぶり高水準に戻っている。バブルの時に近いところまで雇用環境が回復していることを示すデータである(表2)。なおこうした雇用面の改善基調が、今年の春闘での賃金引き上げの背景であろう。
実質賃金は15年3月末まで21ヵ月連続前年同月比マイナスになろう。ただし、4月には消費者物価の前年同月比増減率は消費税率引き上げの影響が一巡してゼロ近傍になるのに加えて、春闘の賃上げ効果が出てくるので、4月分以降はいつ実質賃金が前年同月比プラスに転じてもおかしくない。実質賃金前年同月比プラス化は消費者マインドを明るくしよう。
■新しい局面示唆する史上初というデータも
史上初、過去最高というデータも多数ある。
ひとつ例を挙げると、訪日外国人旅行者である。外国人観光客増加を目指す「ビジット・ジャパン」が始まった03年には521万人にすぎなかったが、14年には史上初めて1300万人を超えた。観光庁によると訪日外国人旅行消費額は2兆305億円と推計されている。
GDP統計では、14年の実質ベースの非居住者家計の国内での直接購入、つまり外国人旅行者の国内消費は1兆5892億円で、初めて居住者家計の海外での直接購入(日本人旅行者の海外での消費額)1兆2956億円を上回った。インバウンド消費が日本経済を下支えする効果が大きくなってきていることがわかる数字のひとつである。
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