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[スクランブル]海外M&Aブームの罠
価格高騰、収益貢献には時間
20日の日経平均株価は約15年ぶりの高値水準を付け、2万円乗せが視野に入ってきた。自社株買いや増配が好感されているが、一方で市場が消化し切れていない材料もある。企業が成長戦略の切り札として打ち出す海外企業のM&A(合併・買収)だ。世界的な株高で買収価格が高騰し、投資額に見合う収益が見込めるか気迷いムードも漂う。
20日では楽天株が約4%高と続伸した。前日に電子図書館事業の米オーバードライブの買収を発表し、「米国の公共図書館でも電子書籍の普及率はまだ低く、旺盛な成長が見込める」(みずほ証券)との見方が広がった。
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もっとも、朝方は前日比マイナスになった。買収の相乗効果を見極めたいとして、売り買いが交錯する場面も目立った。
株式市場は今、空前の買収ブームにある。M&A助言のレコフによると、今年1〜3月の日本企業による海外M&Aは19日時点で約4兆3000億円。前年の1〜3月期のほぼ倍で、四半期ベースで過去最高だ。「水面下で交渉中の案件はまだまだある。今年はすごい一年になるよ」。投資銀行業界ではこんな威勢のいい言葉が漏れる。
表情がさえないのは投資家の方だ。いちごアセットマネジメントのスコット・キャロン社長は「企業に最も大事なのは、株主配分よりも成長投資」と語ってきた。
しかし、最近のM&Aになると「海外市場の競争の激しさを理解したうえで買収を決めたのか、確証が持てない」と歯切れが悪い。その不安の根っこには「M&Aに高いお金を払いすぎていないか」という思いがある。
M&A助言会社GCAサヴィアンが集計した興味深いデータがある。日本企業が海外企業の買収で投じた資金をEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)で割った倍率を見ると、買収対象が米国企業、欧州企業とも今年は平均で15倍を超えている。
一般に10倍未満が適正水準とされることが多い。GCAの名倉英雄氏は「買収価格が高くなっているのは事実だが、いい会社を買えばそれ以上の収益貢献が見込める」と語る。12年に米社を買収した当時は割高といわれながら、北米の空調需要の拡大の追い風を受けて高い成長を続けるダイキン工業が好例だという。
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市場は半信半疑の域を出ていない。欧州で鉄道車両事業を取得する日立製作所、英産業用印刷機メーカーの買収を決めたブラザー工業。今年の大型M&Aについて、買収公表後の株価を見ると大半が市場平均を下回っている。
買収価格の高騰を巡る市場の懸念を払拭し、M&Aを通じて「稼ぐ力」の向上につなげられるのか。日経平均が2万円を超えて上昇していくには、日本企業の海外M&Aの成功例を積み重ねていくことが必要だ。
(川上穣)
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EBITDAとは
▼EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益) 企業の利益をはかるものさしの一つ。税引き前利益に支払利息や減価償却費を加えて算出する。日本と税率が異なる海外企業の収益分析などに利用される。
[日経新聞3月21日朝刊P.16]
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