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月21日、築地市場の豊洲への移転反対を訴えるパレードが新宿で行われた。元日弁連会長・宇都宮けんじ氏らが先頭に立った
Photo:DOL
築地移転に約9割反対!終わらぬ東京都との攻防
http://diamond.jp/articles/-/68804
2015年3月23日 ダイヤモンド・オンライン
移転問題に揺れる築地市場の関係者らは3月21日、移転反対を訴えるパレードを新宿で行った。その名も『3.21 築地で、ええじゃないか!in新宿』だ。
主催したのは、日本消費者連盟などの団体でつくる「守ろう!築地市場パレード実行委員会」で、パレードは今回で6回目。冒頭に新宿東口のアルタ前で行われた街頭宣伝リレートークには、元日弁連会長の宇都宮けんじ氏らが登場し、問題山積の豊洲市場の建設工事凍結を強く訴えた。
最大の問題とされているのが、東京ガスのガス製造工場跡地である豊洲新市場の土壌汚染問題だ。リレートークにも登場した一級建築士で、移転に反対する水谷和子氏は「実際は汚染除去が済んでいない状態であり、東京都は汚染対策費を圧縮するためにデータをねつ造しているのでは?」と指摘した。
また、食品流通の専門家である広島大学名誉教授の三國英實氏は、「豊洲新市場は一般客の立ち入りが厳しく規制され、完全密閉型・大手流通資本向けに作られ、単なる『物流倉庫』に過ぎず、東京都の主張する”新たな賑わいの創出”とは程遠い」と実態を語った。
■アンケートで明らかになった東京都と仲卸業者との確執
パレートに先立って「守ろう!築地市場パレード実行委員会」と東京中央市場労働組合らが水産仲卸事業者を対象に行ったアンケート調査では、衝撃的な結果が明らかになった。
築地市場移転問題に際し、「あなたは築地と豊洲、どちらで営業を続けたいですか?」という質問をしたところ、「当然、築地」と回答した人が49%、「できれば築地」が37%となり、回答者の計86%が築地での営業を希望。すなわち、約9割が豊洲への移転に反対していることがわかった。
都は、築地市場の移転先として、豊洲(江東区)の新市場を2016年11月上旬に開場することを発表している。
豊洲の新市場予定地は、ガス製造工場跡地だったことから、土壌や地下水には、発がん性物質のベンゼンやシアン化合物などの残る汚染の実態が次々に明るみになり、報告が後手に回り続けた都の対応への不信感も重なって、食料品を扱う築地市場の移転問題をここまでこじらせた。
豊洲移転か築地再整備かを巡り、15年以上にわたって市場を大きく揺るがしながら、いまだに現場では、これだけ多くの業者たちの納得が十分得られておらず、都の新市場移行のプロセスの進め方に問題があったことを改めて浮き彫りにした格好だ。
アンケートは、今年2月19日から20日にかけて、組合員ら12人が、築地市場の水産仲卸業者約640社の経営者にアンケート用紙を配布して実施。翌日、糊付けできる封筒に封印する方法で回収したところ、約4割の254の仲卸業者から回答を得た。
新市場には、土壌汚染のほか、施設設計、物流計画、交通アクセス、引っ越し・移転後の費用などの問題も山積みされている。
アンケートでは、こうした問題について、「東京都から十分な説明があったとお考えですか?」との設問に、「ほとんど説明されていない」「まったく説明されていない」を合わせると、55%(141社)になり、回答者の半数を超えた。
また、建設中の施設に「事業者の皆さんの意見が十分に反映されているとお考えですか?」に対しては、なんと回答者の88%(226社)が「反映されていない」と答えた。
■2020年東京五輪が移転の背景に「1ヵ月のために大金を使うのか?」
東京都が移転を急ぐ背景には、2020年の東京五輪開催を受け、現在の築地市場の上を突っ切る環状2号線の建設工事に着手したいという事情がある。都は昨年12月、業界団体代表らに対し、「2020年の東京五輪の開催に間に合うよう、環状2号線の工事を終えるためには、17年4月までに築地市場の解体を終える必要がある」などと理由を説明していた。
この五輪問題について「どう思われますか?」との設問には、
「オリンピックは国家的事業であり、何をおいても協力すべき」は、わずか10%(25社)。一方、「オリンピックのために移転の強行など本末転倒である」は、73%(185社)に上った。
「その他」の中にも、「1ヵ月足らずのオリンピックに、なぜ大金を使うのか」「市場はこれから50年〜100年と続くものであり、急ぐ必要はないし、確実に行うほうが良い」「(環状2号線工事に間に合わせるため)11月移転なら、12月年末の商いが心配です」など、市場よりも五輪の都合を優先させる移転計画に否定的な思いを綴るコメントが目立った。
■約9割が都の汚染対策に不満 食の安全・安心を訴える声も
一級建築士で、築地市場の豊洲への移転に反対する水谷和子氏。同氏は、「東京都が汚染対策費を圧縮するために(汚染しているという)データをねつ造しているのではないか」と指摘した Photo:DOL
都は2011年8月から、それまでの「土壌汚染対策等に関する専門家会議」の提言を受けて進めてきた土壌汚染対策工事を昨年10月末に完了した。
ところが、土壌汚染対策法(土対法)によれば、対策工事後に地下水モニタリングを2年間行って、汚染が除去されたことを確認できなければ、“安全宣言”の前提ともなる土対法上の「汚染区域」の指定が解除されない。
豊洲新市場予定地でも、土壌汚染対策法に基づき、全街区201ヵ所の観測井戸で、11月から採水を始めた。つまり、2年の経過を見て「汚染区域」の指定が解除できるのは、早くても16年の11月となる。
しかも、モニタリング中に汚染が見つかった場合、除去した後、またそこから新たに2年間のモニタリングが必要になる。
同アンケートの設問では、「東京都による土壌汚染対策について、どうお考えですか?」と尋ねている。
それに対し、「約束通り、汚染は完全に除去すべき」は、66%(166社)。「今の対策には不備がある」22%(56社)と合わせると、回答者の88%が都の汚染対策に不満を募らせていることもわかった。
また、「このまま建設工事を進めるべきだとお考えになりますか?」という設問に対して、回答者の70%(179社)が「土壌汚染の除去の確認が終わるまで、建設工事を中断すべき」だとして、食の安全・安心を優先させ、工事を急ぐ必要はないと考えていた。
この地下水モニタリング調査結果については、都が昨年11月と今年1〜2月に採取した数値をそれぞれ2月と3月、東京都中央卸売市場のホームページ上に公開。とくに第1回目の調査では、基準内ではあるものの、環境基準0.01mg/Lの83%にあたる最高0.0083mg/Lのベンゼンが、全街区の半数以上の地点で検出されている。
■汚染対策費は膨らみ849億円以上に “安全宣言”から15年でも解決せず
このまま築地で営業を続けることは可能か、それとも豊洲への移転はやむを得ないのか
今年3月9日の「土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会」でも、業界側から不安が噴出。東京都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長から、こんな質問が出た。
「土壌を全部入れ替えて、きれいにしたところが、だんだん汚染が広がってきて、ベンゼンなどが、あと僅かで規制値にきてしまうという話を聞いています。これじゃあ心配ですよね、というような話が出ました。これが噂というようなことなら、とんでもないことだし、事実であれば、これもまた大きなこと」
これに対して、都の担当者は、5街区で基準スレスレの高い値を検出された箇所は、2回目のモニタリングでは、ベンゼンが不検出だったことから「日付によって、値に変動がある。基準内で問題ない」との見解を示した。
伊藤会長は「もし、基準値を超えたら、どうするんですか?」と追及すると、都の担当者は、こう答えた。
「状況をまず、確認させていただきたい。 対策の検討についても行っていく必要がある場合には、専門家の知見をいただきながら、取り組んでいきたい。その際には、この協議会の関係者で情報を共有し、意見交換を行っていきたい」
最近の報道によれば、新市場の整備費は、当初の計画より1500億円増えて5800億円余り。汚染対策費は、849億円に上る見込みであることがわかった。
都が専門家会議から土壌汚染対策の提言を受けた08年当時、「築地での再整備に比べると、汚染対策でコストが割高になる」との批判に、石原慎太郎都知事が、「この技法なら586億円のコストで安く済む」と胸を張っていたのは、いったい何だったのか。
また、先月には、豊洲新市場の場外に施設を整備する予定だった大和ハウス工業が「来場客の安全を確保できない」などの理由で辞退し、都が施設事業の一部を凍結したと報じられている。
15年ほど前に豊洲移転計画が突然浮上。元々の新市場予定地の所有者だった東京ガスは、土対法施行以前の2001年1月、基準値を超える汚染状況を公表している。しかし、その後の状況を見ていくと、いまだに“汚染”は解消されず、都は業界に謝罪もしていない。だから、いつまでも不信感が残り続けるのだろう。
マスメディアでは、築地市場移転後の明るい話題ばかり取り上げられているが、その陰で山積みの課題はまだ残されたままだ。
(池上正樹)
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