自動車７社、配当総額１兆円超 今期
富士重、65円程度に増額 業績好調で積極配分

　自動車大手が北米販売好調や円安などによる業績拡大を背景に増配に動き、2015年３月期の７社合計の配当総額は１兆円を超える見通しだ。最高益のトヨタ自動車をはじめ５社が増配を計画しており、富士重工業は年間配当を現在の会社予想62円（前期53円）から65円程度に積み増す公算が大きい。従業員の賃上げとあわせ、自動車大手の積極的な利益配分が目立ち始めた。

　トヨタは大手で唯一、年間の配当予想を公表していない。ただ会社予想の１株利益（677円）と、同社が目安にする配当性向30％から計算すると年200円程度（前期は165円）まで増やす公算が大きい。配当総額は6300億円を超えそうだ。

　富士重も前期比９円の増配予想から上積みする方針で、配当総額は500億円を上回る可能性が大きい。また日産自動車やマツダも増配を見込むほか、ホンダは主力車「フィット」でのリコール（回収・無償修理）などが響き純利益は５％減益を見込むが、配当は６円増やす。

　この結果、７社の配当総額は１兆200億円と前期比16％増えそうだ。多くが最高益だったリーマン・ショック前の08年３月期と比べても約３割多い。純利益の合計は前期比11％増（３兆7230億円）の見通しだが、配当総額は16％増で増益率を上回る。

　７社平均の配当性向は27％の見通しで、前期や08年３月期当時の26％より高まり、上場企業の平均（３割弱）に近づいてきた。これまで株主還元にあまり積極的でなかった自動車大手の姿勢の変化といえる。株式市場からは「富士重や日産自などは手元資金がもう十分なはず」（英国の年金基金）という声も上がり始めている。

　15年３月期の上場企業全体の配当額は約７兆4000億円で最高になる見通し。自動車大手以外では、三大金融グループや通信、医薬などの配当額が大きい。

［日経新聞３月２０日朝刊Ｐ．１７］

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