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危ない兆候。金融庁が地銀に圧力
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42542
2015年03月22日(日) ドクターZ 週刊現代 :現代ビジネス
金融庁が、地銀への圧力を強めそうだ。地域経済の活性化につなげるという趣旨のもと、地銀が地域の企業にきちんとリスクマネーを供給しているかどうかを点検し始めるというのだ。
金融庁が銀行の「不良債権」を検査するのはわかる。しかし、リスクマネーを供給しているかどうかまでチェックするというのは妥当だろうか。
もし、ある地銀がリスクマネーを供給していないと金融庁に判断されたとしよう。その地銀は金融庁に言われたから仕方なく、リスクマネーを供給し始める。しかし、リスクを取ったその貸し出しが不良債権になれば、金融庁はどう対応してくれるのか。不良債権の「遠因」が金融庁の点検ということになり、重要な不良債権の検査に支障が出てしまわないか・・・・・・。そんな疑問はすぐに浮かぶ。
行政のタイプには事前行政と事後行政がある。今回の事例に則していえば、地銀が行動する前に金融庁が指導するのが事前行政で、地銀が行動した結果について判断するのが事後行政だ。
リスクマネーの供給は、どちらかといえば事前行政。もちろん、リスクマネーを供給した後にチェックするので形式的には事後行政であり、実際、事後行政である金融検査の一環でリスクマネー点検が行われる。しかし、リスクの判断は将来にかかわるもので、その点検いかんによって将来の地銀の行動が事実上制約を受ける。その意味で、事前行政とほぼ同じになる。
ここに、金融庁の本質的な問題点が浮上する。というのも、不良債権の検査であれば、結果だけで判断できる。それに至った経緯なども検査では調べるが、結局は「不良債権になった」という結果がすべて。実はどんなにリスクが高い融資でも、不良債権にならなければセーフ。セーフどころか、そうした高リスク融資は高収益を生む可能性があるので、銀行経営の観点では褒められるべきものだ。要するに、銀行経営の点から言えば、高リスク融資は不良債権になって損失を大きくするか、高収益融資となって収益に貢献するか、紙一重なのだ。
これまで、こうした銀行経営の判断に金融検査が立ち入らなかったのは、金融庁の金融検査官はあくまで官僚であり、民間の銀行経営の判断にかかわる部分は評価できないという前提があったから。経営判断ができるのは、失敗の責任もとれる民間経営者であって、責任をとれない官僚に求めるのは無理がある。もし官僚が民間並みの経営判断ができるのなら、さっさと民間に転身して高給取りになっている。こうした事情があるから、金融行政は事前型から事後型に移行してきたという経緯がある。
今回の金融庁のリスクマネー点検は、この流れに完全に逆行している。まさか官僚が銀行経営までできると誤解し始めたのだとすれば、勘違いも甚だしい。
官僚は安定志向が強いので、リスクをとれない小心者が多い。銀行経営者がそういう人たちの意見を聞いていたら、かえってリスクマネーが供給されなくなるのではないか。銀行員ですら、民間の企業人からみれば官僚みたいな存在で融通がきかないと見られている。その銀行員を官僚が指導したら、事態はさらに悪くなるだけではないか。
『週刊現代』2015年3月28日号より
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