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[スクランブル]追い込まれる空売り勢
高値圏で逆襲うかがう
急ピッチな株高の隠れたエンジンは、信用売りを出していた「空売り勢」の買い戻しだ。直近の安値である昨年10月から来月で6カ月。下落を見込んで売った投資家が損を覚悟で反対売買に追われている。短期的には実体経済を超えて株高が進む可能性も秘めている。
18日の日経平均株価は大引けにかけて上昇幅を広げた。だが、輪をかけて高くなった銘柄がある。三菱倉庫だ。上昇ピッチは加速し、最終的な上昇率は2.3%と日経平均の0.5%を大きく上回った。
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三菱倉は市場関係者の間で、株安を見込んだ信用の売り残が多い「売り方銘柄」に位置づけられる。売り残は昨年10月末以降に増えたが、株価はそこから2割近く上昇している。決済期限は6カ月後のため、株価が大きく下げない限り、多くの投資家は4月以降、損を出したまま反対売買を迫られる。傷が広がる前に損を確定したいという考えも広がるだろう。
相場全体の縮図でもある。日経平均は10月17日の1万4532円以降、同月末の日銀の追加金融緩和を経てほぼ一方的に上昇した。空売りを出していた投資家は、買い戻して利益を得る機会がないまま損を膨らませているとみられる。
「昨年10月に売った投資家の買い戻しが佳境を迎えている」。大和証券のチーフテクニカルアナリスト、木野内栄治氏は18日、いわゆる「踏み上げ」による株高効果を強調していた。
同氏は、3月末につきものの要因も指摘する。配当の権利落ちだ。株を借りて信用で売った投資家は、配当金の権利確定日をまたいだ場合、配当に当たる額を株を貸した側に払う必要がある。負担を避けるために、確定日までに買い戻して取引を終える傾向にある。
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もちろん信用取引には売りだけでなく買いもあり、追い詰められている買い方もいる。ソフトバンク株は昨年10月、株高を見込んだ信用買い残が増えた。ところが、その後株価は低迷しており、損失覚悟の売りを迫られている投資家も多いはずだ。相場全体が上昇しても、株価がさえない理由のひとつでもある。
だが、同社は例外だ。多くの銘柄は10月以降上昇しており、買い手は売って利益を得る機会に恵まれた。
買い戻しで勢いを増した株高は、慎重な投資家も買いに走らせた。先週末以来、ある有力証券では動きが鈍かった欧州の機関投資家の大量買いが話題だ。米国株が売られても、円高でも売られにくくなった日本株を、運用成果が見劣りする「持たざるリスク」を感じた投資家が買い始めた。
「株高はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の裏付けを欠いている」。UBS証券の居林通氏は先週、こんなリポートを世界の投資家に送った。企業業績の拡大や賃上げという追い風があるとはいえ、ここまで急に株高が進むのは、需給要因が伏線だ。
こんな状況に逆襲の機会をうかがっている空売り勢もいるだろう。米バンクオブアメリカ・メリルリンチの世界の投資家への調査によると、日本株への投資はすでに最高水準にある。同社は今週、逆張り投資家向けに空売りの候補を列挙した。一般消費財株、欧州株、不動産株、そして日本株――。転んでもただでは起きない投資家の姿が、背後にちらついている。
(編集委員 梶原誠)
[日経新聞3月19日朝刊P.18]
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