http://www.asyura2.com/15/hasan94/msg/543.html
Tweet |
中国主導で設立を進めるインフラ投資銀行。2014年10月にアジアを中心とする21ヵ国で政府間覚書が調印された(写真:新華社/アフロ)
中国主導で設立、「インフラ投資銀行」の磁力 日米が距離置くも欧州諸国は続々と参加
http://toyokeizai.net/articles/-/63931
2015年03月21日 西村 豪太:週刊東洋経済 記者
”ドミノ倒し”は3月12日、英国政府による発表から始まった。この日、同国は主要7カ国(G7)では初めて、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明。オズボーン財務相は声明文の中で英国企業へのメリットの大きさを強調した。
かねてAIIB構想に批判的だった米国政府は不快感を示したが、3月17日には仏独伊も参加を表明。AIIBをめぐってG7が真っ二つに分断される形となった。
アジア向けの開発金融機関としては日米が主導するアジア開発銀行(ADB)がある。日本ではAIIBの運営方針の不透明さへの懸念、審査能力に対する疑問を繰り返し表明してきた。だが、豪州も参加するとの報道が流れた3月20日には、麻生太郎・財務相が融資審査の透明性確保を条件に、参加の可能性を示唆。米国と比べても際立っていた厳しいトーンの修正を図っているように見える。
■ADBだけでは対応できない?
AIIBの構想は中国の習近平国家主席が2013年10月の東南アジア歴訪時に発表したもので、アジア諸国のインフラ整備を支援するための新しい国際金融機関という触れ込みである。ADBではアジアのインフラ整備需要は今後10年で8兆j(約1000兆円)に及ぶと試算。ただ、審査基準が厳しく資金量も限られるADBだけでは、巨大なインフラ需要に対応しきれないというのが中国の言い分である。
そこで中国はアジアにおけるインフラ整備を目的に、資本金1000億jで国際金融機関を新設する。2014年10月には北京で中国を含むアジア・中東の21カ国がAIIB設立に向けた政府間覚書に署名した。中国は今年中にAIIBの業務開始を見込んでおり、6月には規約をまとめる予定だ。
銀行設立の指揮を執る楼継偉・財政部長(財務相)は3月6日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の記者会見で、「3月31日までに参加した国は創始メンバーになれる」としており、参加表明のデッドラインが近づいていた。これが現在、”ドミノ倒し”が起きている理由だ。
AIIBの設立構想をめぐっては、米国主導の戦後の国際金融秩序に対する中国からの挑戦という文脈で語られることが多い。だがそれは、隣接する国々との経済関係強化のために中国が準備する、「シルクロード経済ベルト」「21世紀海のシルクロード」開発という全体構想の一部でしかない。「一帯一路」と称されるこの開発構想こそ、習政権の経済・外交政策の目玉だ。
2014年12月には外貨準備や政府系銀行などによる共同出資で、「シルクロード基金」を400億jで設立している。設立を主導したのは、中央銀行である中国人民銀行。アジアでのインフラ建設・資源開発のための国家ファンドだ。
■発破をかける習主席
習主席は2月10日に党内の会議で、シルクロード基金に関しては「できるだけ早くプロジェクト投資を展開せねばならない」、AIIBについて「急いで設立せねばらならない」と話し、担当部門に発破をかけている。この2つの機関は、シルクロード開発という習政権の経済政策を資金面で支えることを期待されている。
中国経済にとって最大の問題の一つが、国内で鉄鋼やセメントといった分野の生産能力が過剰になっていることだ。習主席は就任直後から、その解消を繰り返し唱えてきた。
市場原理による淘汰と内需拡大こそがその本道であることは言うまでもない。だが、いずれも時間がかかる政策であるため、海外需要の開拓に活路を見いだした。「この30年、国内でインフラ建設を大々的にやってきただけに、能力的にもコスト的にも中国企業には競争力がある」(総合商社の中国法人幹部)。
貿易黒字の拡大に伴い、中国の外貨準備高は4兆jに迫る世界最大の規模を誇るようになった。しかし、国内ではその運用利回りの低さが問題視されており、インフラ開発への投資による収益向上が期待されている。同時に、途上国に設備を売る際に人民元で決済することや、ローンを人民元建てにすることで人民元の国際化を進める狙いもある。
「AIIBの構想は、4年以上前から検討されていた」と中国政府系シンクタンクの関係者は明かす。当時はまだ胡錦濤政権の時代だ。だが、当時はケ小平時代から引き継がれてきた「韜光養晦」(目立つことをせず、力を蓄える)という外交思想が強かった。前政権は、西側への挑戦ととられかねない試みには慎重だったが、「大国」としての自信をつけた習政権は一歩を踏み出した。
■日本が迎えた難局
そればかりでなく、南シナ海での領有権問題を抱えるベトナムやフィリピンなど、周辺諸国との摩擦の高まりを沈静化させる狙いもある。習主席がAIIB構想を打ち上げた2013年10月は、周辺諸国との外交立て直しを目指した「周辺外交工作会議」が開かれた時期でもある。今回のAIIB構想にはフィリピン、ベトナムを含むASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国すべてが参加しており、中国は政治面でも手応えを感じていることだろう。
中国経済専門家の有志とともにインフラ投資銀行への参加を日本政府に呼びかけている現代中国研究家の津上俊哉氏は、「AIIBをめぐる中国国内での議論が自国の利益ばかりを強調しているのは確かに気がかり。だが、参加したうえで問題は中から変えていくというスタンスのほうが日本にとって得策だ」と話す。中国と比べて資金力が見劣りする日本が、この”ゲーム”にどう関与していくか、難しい局面を迎えている。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。