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ジム・ロジャーズ氏〔PHOTO〕gettyimages
ジム・ロジャーズ独占インタビュー「私もしばらくは日本株を買い続ける」 世界3大投資家には、その先まで見えていた ついに来た!「株価2万円超えのこれから
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42501
2015年03月20日(金) 週刊現代 :現代ビジネス
■いまが儲けのチャンス
ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロスと並ぶ世界3大投資家の一人、ジム・ロジャーズ氏(72歳)が本誌の独占インタビューに応じた。長年厳しく市場を見つめてきた目には、現在の日本株の動きと市場の先行きはどう映っているのだろうか?
2月に日本株が今世紀最高値を更新しました。しかしそれ自体に、なんら驚くことはありません。日本株の上昇には極めてはっきりとした理由があるからです。
アメリカや日本、英国を含むヨーロッパの中央銀行が量的金融緩和でおカネを刷りまくっているのがその理由です。刷ったおカネはどこかに行きつくものです。そこに円安が重なって輸出産業の業績も絶好調ですから、トヨタやファナックといった株が高値になることは当然でしょう。
日経平均がどこまで上がるのかは、日銀があとどれくらいの期間、どれくらいの量のおカネを刷るかにかかっています。日経平均が2万円を超えてもビックリしません。実際のところ、私は現在、アメリカ株は買っていませんが、日本株は買い続けていますよ。
日本株に関して、多くの人々は大型の優良株を買いたがりますが、私は小型株に注目しています。投資するに値するような小型株のインデックス・ファンド(指標に連動する投資信託)がないか物色しているところです。このように市場が活況を呈していると、インデックスを観察するだけでも儲けのチャンスが見つかるものなのです。
一方で、私がアメリカ株を買わない理由をお教えしましょう。ご存知のように現在、NYダウが次々と最高値を更新しています。株式市場だけを見ていれば、アメリカ経済は絶好調のように思えますよね。
確かに市場の調子はいいし、これからももっとよくなるでしょう。それというのもリーマンショックの後、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度)がものすごい量のおカネを刷ってきたからです。このような政策の恩恵を受けてきた人、つまり株式をたくさん持っている人やそれを売買する人はとてもハッピーになった。
■円安の副作用は必ずある
しかし、アメリカの失業率はまだまだ高い。それどころか、マネーを刷っているということと国の借金がそれほど多くないということの他は、アメリカ経済でいいことなんて何一つないんですよ。3兆ドルをプレゼントしてもらえば、誰だってハッピーになります。FRBがそれだけのおカネを刷って、ばらまいているから、おカネが回ってくる人たちはハッピー。ただそれだけで、実体を伴っていない。だから私は今は、アメリカ株を買いません。
今年から来年にかけて、FRBは金融引き締めに取りかかると言われています。つまり、これまで刷っていたおカネを刷らなくなる。そして金利を上げる。ただし、市場に参加している人たちはそれくらいでは、なかなかひるまないでしょう。強気相場を終わらせるには、3~4回は金利を上げなければならない。金融緩和で一度広げた大風呂敷をたたむのは、それなりに時間がかかるものなのです。
それでも、各国が足並みをそろえて低金利政策を取っている時代は、そう長くは続かない。あと2~3年で金利は上がり始めるはずです。5~10年後にはどうなっているかは想像もつきません。一つ確実に言えることは、本来、家を買えるはずもなかった低収入の人が低金利のおかげで何軒も不動産を買うなんてことは、金輪際なくなるということ。実際、アメリカではリーマンショック後も、そういうことが起きているんですよ。でも、人為的に演出された低金利はそろそろ終わりが迫っている。
円安・ドル高については、短期的に見れば基本的に日本経済にとって良い環境だといえます。でも長期的な視点に立てば、通貨の価値を下げることで発展した国は、いまだかつて存在しません。
円はこの3年間で、ドルに対して40%以上価値が下がりました。これは驚くべきことです。世界史の教科書をひっくり返してみても、たった3年の間に主要国の通貨が40%以上も価値を下げたなんて事例は見つかりませんからね。だから、このような円安が続くことになれば、最終的には日本経済が破壊されることになるでしょう。
為替の問題はとても難しい。適正なレートなど、実際は存在しないからです。レートは政府がどれくらいのおカネを刷るのか、政府がどのくらいの借金を抱えているのか、世界の人々がどれくらい円という通貨の価値を認めているのかということにかかっていますが、それはとても不安定なものなのです。
私は最近の円安局面でも、円を空売りして儲けようとは思いませんでした。市場の大勢が円はもっと弱くなると考えていたからです。市場の誰もが円について弱気になっていたら、いずれ円の価値は反発して上がってくる。それが市場の摂理というものです。
私はそれよりも日本株を買うことを選んだ。それも円安によって悪影響を受けているような内需企業です。行き過ぎた円安が是正されれば、その会社の業績は上がるし、ドルベースで考えたときの為替益も生まれる。二重の意味でチャンスがあったわけです。
■長期的にはどうなるか
目先のところでは、世界経済の勢いを削ぐような大きな問題は見当たりません。ギリシャ問題に大騒ぎしている人たちもいますが、私に言わせれば、こんなもの些細な茶番劇ですよ。確かに、ギリシャがデフォルトせずに生き延びてくれたほうが市場は安定するでしょう。しかし、仮にギリシャが破綻してデフォルトになったとしても、株式市場の上昇傾向が止まることはありません。
ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、FRBや日銀と同じように、おカネを印刷し続けています。日本やアメリカの状況と同じように、それでハッピーになる人もいますが、経済の実態が全体的によくなるわけではありません。ヨーロッパの国々の借金は増え続けています。いまはまだ、誰も問題視していませんが、金融緩和の悪影響が現れ始める頃には、もう手遅れになるでしょう。このような状況は、もってあと1~2年です。欧州経済は非常に危うい。
一方で、新興国の中にはこれからかなり強い勢いで戻ってくる国がある。特に中国がそうでしょう。私はこれから1~2ヵ月の間に中国株を買う予定です。それから先月はロシア株を買い増しました。他の新興国の状況も悪くないはずです。
今の日本の経済情勢は株価も高いし、基本的にハッピーな状況だと私は考えています。しかしこれからずっと先のことを考えると憂鬱にならざるをえません。
第一に少子高齢化と人口減少問題。言うまでもないですが、これは経済成長に大きなマイナスです。今は日本企業の業績がいいし、投資家たちはミクロな視点で株を買っています。しかし、いったん人口減少のようなマクロレベルでの大きな懸念材料に注目が集まると、投資家たちは日本を見捨てることになる。このような問題を解決するには赤ちゃんをもっとつくるか、移民を受け入れなければならず、一筋縄ではいきませんからね。
国の借金も重大な問題です。日本の財政を救うには支出を減らさなければなりません。これは国民に痛みを強いる改革になるでしょう。
それから一流国として本当に生き残りたければ、日本はもっと外国に向けて国を開く必要がある。TPP(環太平洋パートナーシップ)も受け入れたほうがいい。外部の資本に市場を開放することは中長期的に見て、日本にプラスの影響をもたらすことは間違いありません。
もちろん私は日本人ではないですから、日本がどのような態度を取るべきか意見をする権利はありません。TPP以外にも市場を開放する方法はあるかもしれません。しかしTPPを受け入れなければ、日本経済の崩壊が早まることは間違いありません。日本人が外国人を好きになれないということはわかります。しかし外に向かって資本市場を開放しておかなければ、100年後には日本という国は滅亡している可能性すらあります。
これまで、あまりに多くの政治家や中央銀行総裁がおカネを刷りまくった挙げ句、国を破壊してきました。安倍総理と黒田総裁が、それほど愚かでないことを祈ります。おカネを刷る他にも、彼らが取り組むべき課題はたくさんあるのです。
ジム・ロジャーズ/'42年米国生まれ。'73年、ジョージ・ソロスとともにクォンタム・ファンド設立。シンガポールを拠点に投資を行う
「週刊現代」2015年3月21日号より
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