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北陸新幹線開通による経済効果は?
高年収企業が続々移転…「北陸新幹線は関係ない」ほど好景気だった!
http://dmm-news.com/article/929046/
DMMニュース 2015.03.19 06:50
新幹線開通により高い経済効果が期待されている北陸地方だが、以前から有効求人倍率の高さは全国トップクラス。2015年1月の有効求人倍率を見ても石川県は1.52倍で全国5位、富山県も1.44倍で同6位と高水準をキープしている。
また、福井県に至っては新幹線開通が2023年とまだまだ先で、現時点では恩恵をさほど受けていないにもかかわらず、有効求人倍率は1.55倍と東京都に次いで全国2位。「地方=仕事がない」という図式は、北陸に関してはまったく当てはまらないのだ。
この結果について、「福井県は古くから製造業が盛んで、全国平均を大きく上回っています。それを担っているのは中小企業で、眼鏡で有名な鯖江がそのいい例です」と話すのは同県県庁の職員。
福井では一部の大企業が産業を支えているケースは稀で、製造拠点の海外移転も少ない。しかも、家族主義的な中小企業は労働者を非正規雇用ではなく正社員として雇う傾向にある。これに若者の県外流出による人材不足などの状況が高い有効求人倍率の背景としてあるようだ。
「新幹線の工事には県内の建設会社も多数参加しており、こうした特定の業種では多少恩恵を受けていると思います。ただ、他の北陸2県に比べればずっと少ない。新幹線開通の経済効果は石川県が124億円、88億円との試算がありましたが、新幹線がまだ通っていない福井の経済効果は富山の半分もないでしょうね(苦笑)」
では、実際現地で働いている人はどう思っているのか?
福井県内の繊維メーカーで働く大村悟志さん(仮名・34歳)は、元飲食チェーンの社員。3年前、それまで住んでいた名古屋から実家のある福井県にUターン転職した。
「業績悪化に伴うボーナスの大幅カット、リストラに契約社員の雇い止めなどがあって、会社に残ることに不安を感じたんです。福井は田舎の割に求人は多かったですし、思い切って地元に戻ることにしたんです」
現在の年収は440万円で、前職の年収から20万円のアップ。いくら求人が多いとはいえ、一般的に転職者の6割は年収が下がるというから、地方への転職で年収増はかなり好待遇といえる。
「年収が増えたのは前職の収入が単に低かったこともありますが、地方にしては貰えているほうだと感じています。ただ、それでも今の年収は県の平均よりもちょっと少ないくらい。だからといって不満はないですけどね」
その理由に夫婦共働きと妻の収入の高さを挙げる。
「妻は病院で正社員の医療事務として働いています。ウチの母親もそうでしたが福井は共働きが当たり前で、しかも女性も正社員が多いんです。妻の年収300万円と合わせた今の世帯年収は740万円。8歳と6歳の子供がいるので出費は多いですけど、外食や旅行の回数は前職より増えました。月の小遣いも1万8000円から3万5000円にアップしたので、転職してよかったと思っています」
ただし、北陸新幹線による恩恵は「正直、まったく感じていない」と話す。
「世の中全体の景気が回復しているからそれに合わせて福井も良くなっているとは思うけど、新幹線の影響ではない気がします。ウチの県はこれから工事が本格化するわけですし、好影響を及ぼすのは今後じゃないですかね」
2023年開業予定の金沢〜敦賀間に加え、京都〜敦賀間も工事は決まっているものの開業時期は未定。福井県が本当の意味で新幹線の恩恵を受けるのはもう少し先のことになりそうだ。
■富山・石川では企業が続々移転! その理由は?
一方、今回新幹線が開通した富山、石川の両県はどうだろうか?
石川県内の電子部品メーカーで働く中沢幸平さん(仮名・40歳)は、「この2年間でボーナスが30万円も増え、年収が490万円になりました!」と笑顔で語る。
仕事の受注も5年前に比べると、受注量も約50%アップ。年度末の決算も上方修正されたとか。
「新規の取引先が一気に増えましたね。地元の企業もあるけど、他県から富山や石川に進出した企業からの受注が結構あって、業績は過去2年間で倍増しました」
会社は来年度も30%以上の増収を見込んでおり、4月からはこれまで据え置きだった全社員の月給が1%増。夏のボーナスも前年からさらなる上積みが確実という。
「社長は『北陸新幹線開通のご祝儀』って言ってたけど、それは冗談としてもリーマン・ショック以降、月給が下がることはあっても上がることはなかったので本当にうれしいですよ! 妻は妊娠中で仕事を辞めてしまったので、家計的にも助かります(笑)」
中沢さんの会社もそうだったように北陸経済に恩恵をもたらしたのは、首都圏から進出した企業の増加によるところが大きい。
富山県には総面積194ヘクタールの富山八尾中核工業団地、石川県には同98.6ヘクタールの金沢テクノパークがあり、それぞれ多くの企業が進出。雇用創出にも貢献している。
金沢テクノパーク(金沢市ホームページより)
同県に進出した精密機器メーカーに山原一彦さん(仮名・30歳)が転職したのは2年前。水産加工会社の営業から転職し、年収は380万円→530万円と40%近い増収に成功した。
「上場クラスの企業が次々と進出してきて、大手の企業、高収入の企業に転職できる可能性が増えたと思います。もちろん、そうした会社に転職するのは簡単じゃないですけど、地元採用の高収入の求人は多くなったと感じています」
ただし、こうした企業も北陸新幹線開通を見越して進出したわけではない。北陸は国内でも地震が比較的少ない地域で、流通面でも東京や大阪、名古屋といった大都市圏からもさほど遠くない。つまり、そうした災害リスクを軽減するために移転したわけだ。
「今の会社が進出した理由は、まさにそれです。取引先も何社かは同様の理由で一部機能を移転させたと聞きました」
新幹線開通による直接の経済効果については、沿線の長野県に工場を置く半導体や精密機器メーカーとの取引量が増加。「これも北陸新幹線のおかげ」と話す。
「長野からの観光客が増えたように企業間でも他の会社も含めて、北陸・長野で取引するようになったケースは多いですね」
災害リスクの低さに加え、北陸新幹線によって出来た首都圏〜信州〜北陸の動線が新たなビジネスチャンスを生み出している。もはや北陸はこれまでのように地方という枠組みではないのかもしれない。
(取材・文・写真/高島昌俊)
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