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「安倍首相/消費税増税10%まで」(EJ第3995号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/415726123.html
2015年03月17日 Electronic Journal
安倍首相は、2014年11月18日夜に、2015年10月
に予定していた消費税率10%引き上げを2017年4月まで1
年半延期すると発表し、21日に解散したのです。なぜ、解散を
断行したのでしょうか。
成立した消費増税法には景気弾力条項が付いているので、解散
まですることはないという声もありましたが、安倍首相はあえて
解散にこだわったのです。それは、最後の最後まで「増税断行」
の根回しを執拗にやっていた財務省に対する宣戦布告であると考
えられます。財務省に対して「俺はお前たちのいう通りにはなら
ないぞ」という強いメッセージを送ったのです。
今までの政権で、本気で財務省と戦った政権はなく、安倍政権
はどこまで戦えるかは疑問ですが、とにかく財務省に対して強い
抵抗を示している点は評価できます。今のところ財務省は14年
末の総選挙で大勝利したことと、高い内閣支持率で、正面切って
安倍政権に抵抗できないでいるのです。
2014年12月22日、経済財政諮問会議の席上、安倍首相
は、2020年までに基礎的財政収支を黒字化する目標に関連し
て、次の発言をしています。
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国内総生産(GDP)を大きくすれば、累積債務の比率を小さ
くできる。(財政健全化は)もう少し複合的に見ていくことも必
要かな、と思う。 ──安倍首相
2015年2月15日付、日本経済新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
この安倍首相の曖昧な発言の真意は何でしょうか。
ごく簡単にいうと、現在政府が目指している基礎的財政収支の
黒字化の達成だけでなく、アベノミクスの成長戦略の推進によっ
て名目GDPを拡大し、GDPに占める債務残高の割合を縮小化
させることも財政再建の目安とすべきではないか──こういう主
張なのです。
要するに、GDPに占める債務残高の割合が縮小していれば、
あえて基礎的財政収支にこだわることはないという意味にもとれ
る表現です。なぜ、この発言が出たかについては、自民党内の勢
力関係を知る必要があります。
背景としては、二階俊博総務会長率いる「国土強靭化計画推進
グループ」の存在があります。安倍首相はこのグループから激し
く突き上げされているものと思われます。
なぜなら、基礎的財政収支の黒字化の目標を達成するためには
社会保障や公共事業を思い切って削減することが不可欠であり、
そうなると国土強靭化計画の推進は困難になります。そんなこと
は受け入れられないと国土強靭化計画推進グループは首相を突き
上げたものと思われるのです。自民党内では、二階総務会長の力
は強くなっており、首相としても無視できない存在です。
3月13日に開催された衆議院財務金融委員会において、首相
は財政再建について、民主党の古川元久議員の質問に答えて、次
の注目発言をしています。
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10%までは消費税を引き上げていくが、それ以上の消費税の
引き上げで税収を増やすことは考えていない。(どうやって税収
を確保するのかという質問に対して)政府で行っていた部門を民
間に任せることで歳出の削減を図れるだろうし、産業として様々
な活力を生みだしていく。それがさらなる税収を生んでいく可能
性もある。 ──安倍首相
2015年3月14日付、日本経済新聞
―――――――――――――――――――――――――――――
これは重大な発言です。一番驚愕したのは財務省であったと思
います。消費税は2017年4月の10%引き上げは確定してい
ますが、財務省は財政再建のためと称して、その後も引き続き、
15%〜20%、20%〜30%へと次々と引き上げる計画を立
てているのです。
そしてその情報は、おそらく財務省の広報戦略の一環であると
思いますが、巷にも流れているのです。さらなる消費税率引き上
げをメディアが流すことによって、日本の財政再建が容易ならざ
るものであり、ある程度の消費税率の引き上げは仕方がないかと
国民に納得させる戦略です。これはほとんど成功しています。
それを安倍首相が否定したのです。「安倍政権が続く限り、消
費税率は10%にとどめ、税収確保は別の手段で行う」と明言。
財務省としては絶対に看過できないはずです。このように安倍首
相は財務省と戦っているのです。この点は従来の政権にはないこ
とであり、評価できると思います。
これに対して財務省はさまざまな反撃を行いつつあります。そ
れは、これまで巨額の広報予算で手なずけてきたマスメディアを
使って反論する方法です。
安倍首相の主張する財政再建の目標を基礎的財政収支だけでな
く複数化するということに関しては、2月15日の日本経済新聞
において、法政大学の小黒一正准教授は「リスクが大きい」と反
論しています。
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首相の提案にはかなりのリスクがある。景気がよくなって成長
率が高まれば、ふつうはお金の需要が増えて金利が上がる。それ
は財政を圧迫する要因になる。国債の利払い費が増え、債務残高
が膨らむからだ。 ──小黒一正法政大学准教授
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増税推進派の定番の反論です。それにあくまで新進気鋭の大学
教授の反論というかたちをとっていますが、この小黒一正氏は、
元財務官僚出身のマクロ経済学者です。日本経済新聞の「経済教
室」などで、財政再建論を展開している学者です。
財務省はこういう経済学者を数多く有しており、新聞やテレビ
などを使って巧妙な増税キャンペーンを展開するのです。
── [検証!アベノミクス/77]
≪画像および関連情報≫
●財政再建に必要な消費税は何%?/小黒一正法政大学准教授
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どれくらい消費税率をアップすれば政府債務(対GDP)の
膨張をストップできるのか。いくつかの試算がある。現在、
国の借金は1000兆円を突破し、2015年3月末には、
1100兆円超に膨らむとみられている。そして約110兆
円の社会保障給付費(年金・医療・介護)は毎年約2・6兆
円ずつ増え続けている。米アトランタ連銀のアントン・ブラ
ウン氏らの研究によると、社会保障費を抑制せず、財政安定
化のために2017年度に一気に消費税率を引き上げる場合
最終税率は33%になるという。同じような研究で、米カリ
フォルニア大学ロサンゼルス校のゲイリー・ハンセン教授ら
は35%と推計している。また、小黒氏と慶応義塾大学の小
林慶一郎教授は、2050年ごろの消費税率を約31%と推
計している。現在、政府と日銀は、インフレ率2%の実現を
目指している。それによって増税を避けるという論調もある
が、ブラウン氏らはインフレ率2%を達成した状態での試算
も行っている。他方、消費税率を5%ずつ5年おきに段階的
に引き上げていく場合、年金の所得代替率を30%にまで削
減し、高齢者の窓口負担を2割にするなど厳しい社会保障改
革を実行したとしても、ピーク時の消費税率は32%に達す
るという。 http://bit.ly/1MESTlY
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