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「デフレ心理が抜けないので、物価見通しを映す国債金利も上がりにくい。低金利は世界的傾向でもある。だがそれ以上に、日銀が大量に国債を買っていることが大きい、という見方が多い」というのは皮相的な認識。
世界を相手に事業を展開し利益を上げてきたグローバル企業が、稼いだお金を国内で使わないことや資金の受け手から資金の出し手になってしまったことが、政府による国債の大量発行と日銀による国債の大量購入という現実を創出している。(大量に国債を発行しつつ金利を低く抑え込むためには、日銀が国債を吸い上げることで、金融機関に国債不足(日本円の使い道が限られていること)を意識させなければならない)
日本円が経済活動に投資されずにため込まれているからこそ、大量の国債を発行する赤字財政が続いているのである。
もしも、政府が赤字財政を継続しなければ、日本経済はほんとうに奈落の底に向かっていたはず。膨大な国債発行が、日本経済をかろうじて支えていたのである。(それでもデフレであった)
「国債発行残高に占める日銀の保有比率は昨年末に25%程度に達し、今年末には35%を超えそう」というが、英国は、イングランド銀行が英国国債の40%ほどを保有している。
「米連邦準備理事会(FRB)が長期国債の利回りを2.5%以下に抑えた1940年代から50年代初めの米国」という金融政策が、預金を忌避させ、金融機関の国際展開や個人・組織の株式投資を大いに促進した。
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[中外時評] 財政への不安除去急げ 危うい日銀頼みの誘惑
論説副委員長 実哲也
借金が年々増えて年収の16倍に。けれども、どうぞどうぞとゼロ%に近い金利でおカネを貸してもらえる。
現実の生活ではありえないが日本はそんな特権を享受し続けている。財政は先進国で最悪なのに国債の金利は低いまま。それをだれも不思議と思わない。
いろんな背景があろう。デフレ心理が抜けないので、物価見通しを映す国債金利も上がりにくい。低金利は世界的傾向でもある。だがそれ以上に、日銀が大量に国債を買っていることが大きい、という見方が多い。
「財政? あまり関係ない。見ているのは日銀の動きだけ」。外資系金融機関のある債券ストラテジストはさらりという。
国債発行残高に占める日銀の保有比率は昨年末に25%程度に達し、今年末には35%を超えそうだ。「日銀は国債市場の池の中の鯨。それに振り回され、市場機能が失われつつある」「日銀がやっているのは財政の穴埋め」。債券市場関係者の日銀に対する目は険しくなっている。
日銀は「先物市場などを見ても流動性は失われていない」と反論。国債の大量購入は2%という物価目標を達成するためで財政とは無関係と強調する。
だが、財政状況が非常に悪い国で、国債の大量購入を伴う金融緩和を実施すれば、金融政策と財政下支えの境目が見分けにくくなるのは避けられない。
「いまの日本は米連邦準備理事会(FRB)が長期国債の利回りを2.5%以下に抑えた1940年代から50年代初めの米国と共通点がある」。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストはこう指摘する。
当時の米国政府は、戦費調達などに伴う大量の国債発行によって金利が急上昇するのを恐れた。非常時ということで、中央銀行であるFRBが財政を下支えする役割を担わされた。
政府と日銀の間にそんな暗黙の了解があるわけではないが、中央銀行が国債相場に「麻酔」をかけることで、事実上財政、金融、経済の安定へ猶予期間を与えている点は似ていると高田氏。「麻酔が効いている間に、早めに経済・産業の構造改革や財政の体質改善などの手術を終えることが不可欠」と指摘する。
問題はそうした時間認識が政治の側にあるかどうかだ。
政府は新成長戦略のほか財政健全化計画を今夏にまとめる。ただ「小泉政権の時のように本気で歳出を抑える推進役は皆無。政治に切迫感がない」(経済官庁幹部)との声も聞こえる。民間活力を引き出す規制改革などの環境整備も滞っている。
日銀の異次元緩和が財政規律の緩みにつながっている面も否めない。官邸周辺からは一時、公的債務残高の国内総生産(GDP)に対する比率を財政再建の目標として重視すべきだの考えが浮上した。経済の改善に伴い、この比率が低下に向かい始めている点に注目したものだ。
だがこれは、日銀の国債金利押し下げで利払い費が圧縮された特異現象だ。利払い費などを除く基礎的な財政収支が大幅の赤字なのに、この比率が下がることは通常ならありえない。金融緩和で金利を抑え、景気を良くすれば財政健全化も進むという甘い認識が見え隠れする。
日本は経常黒字国で資産も大きい。なので財政の心配は薄いとの声も政治の一部にはある。
これに対し、黒田東彦日銀総裁は財政を再建しないと国債の信認は低下すると警告するが、その声はどこまで届いたか。
国債を「爆買い」する日銀の異次元緩和はもともと一種のカケだ。その成否は出口までいかないとわからない。成功の大前提は財政の信頼回復である。
財政に不安を残したまま、国債購入をやめれば金利の急騰を招きかねない。かといって無理に買い支えを続ければ、円という通貨の価値はいずれ大きく毀損される。どちらにしても金融や経済の混乱は避けられない。
「国債相場の底が抜ければ、それこそスターリンの望むところだぞ」。50年末。インフレ率が高まるなかで国債の下支えはいつまでも続けられないとの意向を示したFRBに対し、トルーマン大統領はこう恫喝(どうかつ)したという。中央銀行への依存は中毒になりやすい。
政府は2年前、物価目標を決めた日銀との共同声明で、成長力の強化策を進め、持続可能な財政構造を確立すると公約した。その約束を早急に果たすべきだ。政府と日銀が埋めるべきパズルがうまく合わなければ、経済は不安定化する。
[日経新聞3月15日朝刊P.12]
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