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中国のバブル崩壊リスクは、世界が懸念するところだ。写真は全人代の開催地でもある北京
Photo:SeanPavonePhoto-Fotolia.com
中国人自身も懸念する中国経済“急減速”の深刻
http://diamond.jp/articles/-/68410
2015年3月16日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド。オンライン
■世界にとってリスクとなる中国経済の急減速
足元で中国経済の減速が鮮明化している。2010年までは二桁の成長率を誇っていたものの、昨年は7.4%に低下し、今年は7%程度とさらに減速することが予想される。
7%の経済成長率は決して低くはないものの、足元の中国経済がモメンタム=勢いを失っていることは明らかだ。3月5日に開幕した中国人民代表会議で、経済担当の李克強首相は「中国経済の下振れ圧力は増している」と危機感を表明している。
中国経済の急減速の背景には、従来の輸出と投資に牽引された経済構造が行き詰まっていることがある。2008年のリーマンショック以降、世界経済は低迷状況が続いており、中国の輸出の伸び悩みが鮮明化している。
輸出が鈍化する一方、国内の個人消費は期待されたほど伸びておらず、足元の中国経済に強力な牽引役が見当たらない。それに加えて、2009年の円換算で70兆円を超える大規模な景気対策の後遺症で、中国経済全体に過剰な供給能力が残っている。
そうした経済状況の変化によって、全国的に不動産価格の下落が進んでおり、地方政府等が抱える過剰債務の問題も景気に暗い影を落とし始めている。
今後、過剰債務などをきっかけに中国経済がさらに大きく落ちこむようだと、世界経済の足を引っ張ることにもなりかねない。今や、中国は世界経済にとって無視できないリスク要因になっている。
■かなり深刻な中国経済の実態 成長率は3〜4%との見方も
「正直言って、7%台の成長を維持しているとは考えにくい」
最近、中国から帰国した商社の営業担当者の言葉だ。彼が中国で実際に営業活動をしてみると、現場で感じる景気は7%台の成長を実感することができなかったという。
経済専門家の間でも、それと同様の感覚を持つ向きは少なくない。元々、中国政府が発表する経済指標に関しては信頼性が低いとの指摘は多かった。そのため、経済状況を独自の視点から分析する専門家が多い。
特にGDPの成長率に関しては、主に中国国内の電力消費量や、鉄道輸送量などを参考にして中国経済の状況を判断する専門家が多い。昨年の電力消費量の増加率は、前年対比+3.8%台に低下している。
また、鉄道輸送量は前年対比でマイナスと見られる。それらの数字から浮かび上がる景況感はかなり落ち込んでいる。一部の専門家からは、「中国の成長率は公表数字の半分程度の3%から4%台だろう」との見方もある。
そうした急減速の背景には、中国経済の構造改革が進んでいないことがある。中国政府は、従来の輸出と投資に大きく依存する経済構造を、国内消費主導型の安定成長へとモデルチェンジすることを目指してきた。
ところが個人消費は期待されたほど伸びず、結果として、変動が大きい輸出や投資に依存する姿に大きな変化はない。しかも、ここへ来て、不動産価格の下落に伴い不動産部門の低迷が続いている。
不動産部門の低迷は、開発を行ってきた地方政府の財政状況を悪化させることにつながる。既に、一部の地方政府の財政破綻が懸念される状況に至っている。それによって、不良債権が大きく増加すると、中国の金融市場の波乱要因になる。そのインパクトは決して小さくはない。
■中国人も懸念「このままでは共産党政権の維持が難しくなる」
中国経済が抱える重要な問題の一つに、リーマンショック以降に実施した大規模な景気対策の後遺症がある。当時の胡錦濤政権は景気を浮揚するために、総額4兆元(約76兆円)の刺激策を実施した。その結果、中国経済は大きく盛り上がり、世界経済の失速を軽減する役割を果たした。
一方、大規模な景気対策によって広い分野にわたって投資が盛り上がったため、経済全体の供給能力が大きく上昇した。世界経済が堅調な展開を続ければ、その供給能力がスムーズに輸出につながるはずだった。
ところが、米国を除いて主要国の景気回復が遅れたこともあり輸出が伸び悩み、中国経済全体として過剰な供給能力に苦しむことになった。それは、足元で消費者物価指数が年率で0.8%、卸売物価指数は4%を超えるマイナスに陥っていることも見ても明らかだ。
もう一つ無視できない問題は、中国国内の経済格差だ。元々、中国では工業化が進む都市部と農村部の経済格差が指摘されてきた。共産党政権は格差是正を目指すと公言してきたものの、最近の状況を見ると、格差が顕著に縮小しているとは考えにくい。
むしろ、ウイグル自治区などでは格差が拡大しているとの指摘もある。中国は多くの民族を抱える複雑な国内事情がある。今まで、それぞれの民族が抱える不満等を、経済成長の果実を配分することで何とか抑えてきた。
しかし、経済成長が急減速すると、分配すべき経済的な果実が大きく増えない。それでは、地方の人たち、特に少数民族の人たちが中国共産党政権に追随するインセンティブは低下する。
中国の友人の一人は、「このまま経済の低迷が続くと、次第に共産党が政権を維持するのが難しくなる」と指摘していた。李首相も全人代で、1000万人の雇用を創出するためにも、経済成長を維持することの必要性を唱えている。
■海外への脱出が流行 “異変”を感じ取る中国の人々
中国の友人と話をすると、彼ら自身が中国政府をあまり信用していないことが分かる。「裕福な中国人の多くが一族郎党をカナダに亡命させた」、あるいは「米国籍を取るために、妊婦が米国に旅行して米国で出産するツアーが流行っている」などの声を聞くことが多い。
特に米国籍取得のためのツアーはかなり盛況のようで、それを見た米国の当局が一斉に取り締まりを実施したとのニュースも出ている。
そうした動きの背景には、中国の人々が、中国経済の異変とそれに続く社会全体のリスクの高まりを敏感に受け止めていることがあるのだろう。昔、中国人の留学生が、「中国の歴史は支配者である王朝の衰退と、それを倒して新しい王朝を作る流れだ」と言っていた。
中国は、その流れを4000年以上にわたって行ってきた。100年やそこらで、その歴史が変わることはないだろう。彼の意図するところは、「共産党政権がいつまでも続くとは考えていない。いつかまた新しい仕組みができる」と考えられる。
足元で中国経済の高成長は終焉を迎え、人々が手にすることができる“分け前”は減ることになる。それに加えて、1979年から実施した一人っ子政策によって、中国は今後、急速に人口構成が歪むことになる。
人口構成が大きく変化すると、15歳から64歳までの働き手=生産年齢人口の割合が低下する。働き手の減少は経済活動にとって決定的な要因になり得る。また、政策の影響で、新生児の中で男の子の比率が、女の子の割合を大きく凌駕していることも社会を不安定化させる可能性がある。
また、大きな経済的蓄積を持たない国民が、これからリタイアメントを迎えることも懸念材料になるだろう。そうしたファクターを総合的に勘案すると、長い目で見て、中国は今後、大きな社会の仕組みの変革がある可能性が高いと考える。
その場合には、現在の共産党一党独裁体制というレジームが大きくシフトすることになるかもしれない。
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